004.魔法学院に転入しました
こうして、数日後。
「と言う事で、転入生のレオナ・レコード君だ。まあ仲良くしてやってくれ。」
木材と石材で作られた、聖ガルガンチュア学院の教室。教師が生徒に対してそう言った後、私は指定された席に座った。
隣には案の定、エリカ・トランサーがいた。
「フフッ、偶然にも隣の席だねぇ。よろしく。」
ニヤニヤしながらそう言われた。いや、「面倒を見ておいてくれ」と学院長に言われていたのだから、転入以前から決まっていた事じゃないか。そもそも今になるまでどれだけ振り回された事か……
だがこの表情を見る限り、やはり私で何か企んでいるのだろう。そう思いながら、私はため息をついた。
数日間に渡る手続きを終え、正式にこの聖ガルガンチュア学院の生徒となった私。制服(というか衣服自体)を着るのも、ほぼ機械である私にとって新鮮なものだ。
が、それでもエリカ・トランサーにまた面倒な事をされる気がして止まない。というか、この日になるまで体のあちこちを何度も調べられる羽目になった上、どさくさに変な機能を付けようとしていたりしたので絶対有りえる。
だがまあ、あれこれ考えても仕方がない。ここの生徒になると決めたのは自分だ。トラブルだろうが、エリカ・トランサーが何を考えていようが対処してやろう。
そう考えていたら、授業が開始した。初めは、魔法や機械に関する講義が行われる。途中から入った私には良く分からない部分はあったが、知識そのものは学院長に渡された資料で身につけている。
まず魔法と言うのは、人や自然物が持ち合わせるエネルギーの呼称。要は素質に近いもの。個人にそれぞれ属性があり、炎や水、雷や土など、種類は多彩。たまに2つ以上の属性を持つ人間もいるらしい。
誰がどの属性を持っているか、と言うのは装置1つで分かる事。意外と便利である。
講義が終われば、次は実技。つまり魔法を使う練習である。……だが今回はその前に、私自身がどれくらいの実力かを計ることになっている。
やり方も簡単。杖を使って、的に魔法の弾を当てるだけ。
……だけ、ではあるが、私にその魔法が使えるのか全く分からない。
エリカ・トランサーは大丈夫だと言っていたが、まず彼女に振り回されていたせいで実践した覚えが1度も無い。単刀直入に言おう物凄く不安だ。
「(しかし戸惑っていても仕方がない。この場合、なるようになれだな……)」
実技のために校庭へ移動し、早速的が用意される。
「それではお願いします。」
教師がそう言いいながら、杖を私に渡す。どうしよう、そこはかとなく公開処刑感が凄い。
気を紛らわすつもりで、生徒たちの方を見る。
生徒も、当然人間。私の元居た世界で滅んだはずの人間が沢山いる。
私を見る目も様々。素っ気ない表情をしている剣士の少女、無気力な雰囲気だが、こちらを期待の目(?)で見ている少女、厳しい目でこちらを見る、メガネの男子生徒、何故か嫌悪している目で見る偉そうなお嬢様、あと、グッドサインをするエリカ・トランサー。
「(資料では確か、まずはこうして――)」
不安ではあったが、いざやってみようとしたその時だった。
突如、地響きが起こったのだ。
何だ何だと周囲が騒がしくなる。そしてその地響きは、段々大きくなる。
「何だ、センサーの調子が……」
地響きが大きくなると同時に、私に内包されているセンサーの調子もおかしくなる。
この反応は機械だ。サイズの大きい機械の物体が近づいてくるときの反応だ。
余談だが、この世界の機械には、『魔石』と言うものが使われている。
『魔石』と言うのは、この世の自然界に在る魔力の結晶。杖をはじめとした魔法に使うためのデバイスにもこれが使われる。
エリカ・トランサーが言うには、ガルディギカにおける機械技術において特に――
ロボットを作るのに重要になって来る。