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003.低身長な学院長

少しした後、今度はテーブルのある部屋に運ばれた。どういう部屋かは分からないが、尋問室と言うわけでも無さそうだ。


「さっきから運ばれっぱなしだが、私をどうしたいんだ?椅子に座ったままなのも段々しんどくなってきたから、流石に縄くらい解いてほしいんだが。」

「もうちょっと待って。後でちゃんと解くから。」


 言動から察するに、紹介したい人物でもいるのだろう。そう思っていたら、「入るぞ」という声と共に部屋の扉が開いた。

 だが、視界には誰もいない。……いや、こういう時は下の方を見れば――


「遅くなったな、エリカ・トランサー。」


 ……今度こそ視界に映ったのは、全体的にカラーリングが白い、身長が9歳児と同じくらいの女性。子供か?いや、それにしてはすごく風格がある。年齢は断定できないものの、さしづめ、ここの教員と言った所か。


「で、ソイツが例の機械人間か。」

「その通りです学院長。」


 思ったより偉い立場だった。

 エリカ・トランサーがその学院長とやらに、私がコミュニケーションを問題なく取れる事を教えると、彼女は挨拶をして来た。


 彼女の名は『チノ・カストラ』と言う。先程エリカ・トランサーが言ったように、この聖ガルガンチュア学院の学院長のようだ。身長は低くても、年齢は上というパターンは案外よくある。ただし流石に学院長というのは予想外だった。


「話のある程度は、エリカ・トランサーの方からすでに聞いた。何やら大変だったようだが、まずはよろしく、レオナ・レコード。」


 エリカ・トランサーに名付けられた私の名前を呼び、握手を求めて来た。……いや、その前に縄を解いてくれないと握手すらできないのだが。


「あっ、すまない、まず先に縄を解かなければならないな。」


 すぐに察したようで、カストラ学院長は自身が持つ大きく細い杖をこちらに向けた。そしたら、結構きつく縛ってあった縄があっさり解けた。


「面白いでしょ?それ、誰でも魔法で簡単に解ける、初心者用の拘束具なんだよ。」


 横からエリカ・トランサーがそう話した。成程、こういうのが魔法の一種なのか。そんな風に感心しながら、この後「よろしく」と言いながら快く握手をした。


 で、ようやく拘束を解いてくれたが、私自身これからどうするべきだろうか。異世界に飛ばされ、しかも自分が純粋なマキナドールではなく改造人間だったという事実を知った。だがこの状況だと、それを知ってどうする感が凄い。悩んでいる暇があるのなら何かしらをしたいところだが……。


「やることが無いのなら、1つ提案があるぞ。正確には頼みに近いが。」

「提案?」


 心を読んでいたかの如く、カストラ学院長がタイミングよく話を持ち出してきた。

 提案と言うのはどういう事か。一瞬そう思ったが、すぐに察した。


「簡単な事だ。レオナ・レコード、君にもこの聖ガルガンチュア学院の生徒になってもらいたいのだ。」


 やはりそう来た。実際、今私には行き場が無いし、かと言ってここを無理に出て行くメリットも理由も無い。それに、私自身を巡って厄介な事態になるのも困る。多分そう理由も含めての勧誘なのだろう。


「後々問題は出てくるかもしれんが、少なくとも手荒な真似をするつもりは無い。人権とかそう言った部分も任せてくれ。」

「……信じて良いのですね?」

「学院長の私が保証する。」


 何故かどや顔で断言された。……だが、実際これは悪い話でもない。もし元の世界に帰還するために動くとすれば、この学園で何かヒントや情報を得るのも良し。それに、データでしか知らない『人間』そのもの事を知る良い機会にもなる。


「分かりました。その話に乗りましょう。」

「オーケー、決まりだ。」


 もう一度、握手をする。そしてその時点で、私はこの提案を受け入れた事になる。後は手続き等をすれば、私は正式にこの学園の生徒、と言う事になる。


「おお!入学してくれるの!?やったー!!」


 と、そこまでは良いのだが、しばらくこの話を聞いていたエリカ・トランサーが異様に喜んでいた。

 ……あと、この場合『転入』が表現としては正しい気がするのだが。


 カストラ学院長曰く、彼女は相当の機械マニアらしい。そのため機械の事になると見境が無くなり暴走するとのこと。目を覚ました時の、あのセクハラ紛いな行動も十中八九そういう事だ。

 ――あ、機械の事で少し思い出した。


「そう言えばだエリカ・トランサー。私を回収していた時、仕込んであった武器を取り外したと言っていたな。返してくれないか?」

「え?ああ、無理だよ。ほとんど壊れてたし、材料もこの世界にはないものだったから。」


 きっぱりそう言われた。まああり得る話だ。実際、気を失う前に地球外生命体の攻撃を受けていたはずだからな。

 ……む?待て、それなら今私の体内には何が入っているんだ?右腕に仕込んだマシンガン銃を除けば、中身が空洞になっている感覚は無い。


「代わりと言っちゃなんだけど、魔石を使った機材を入れておいたよ。」


 そう言われた。魔石とは何だ?名前からして、この世界にある材料だろうか。


「まあまあ詳しいことはこっちで話すから!ね?」

「えっ、また?」


 考えている間に、またエリカ・トランサーに連れて行かれる羽目になった。学院長は、それを温かい目で見守っていた。そんな目で見ないで助けてくれ。


 そういうわけで、私『レオナ・レコード』は、この聖ガルガンチュア学院に通う事になる。

 正直、これ以降はエリカ・トランサーとは関わりたくないとも思うが……どう考えても絶対何度か関わるだろうなと思うのであった。

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