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再戦パラドクス。発現アルルカン。

 

 目の前にはパラドクスがいる。

 オレと素零と4()()の三人はパラドクスによって無の空へと招き入れられていた。

 素零と4番は敵意剥き出しの目で前方の空間を睨みつけている。


「パラドクス、お遊びは終わりだ。観念しろ」


「素晴らしい。よくぞ正解を導きましたね。褒めてあげます!」


 オレが言うとパラドクスはあっさりと答える。


「ね〜、早く殺してやろうよ。絶対に手を出してはいけない存在にケンカを売るとどうなるか、わからせてやらなきゃ」


 零の螺旋を構えながら素零が言う。

 パラドクスを殺したくて仕方がないといった様子だ。


「一つ、聞いてもいいですかね。どこでわかりましたか?

 今後エニグマを効率的に処理したいので参考までに」


「4番は本物って言葉だ。だから自分を3番だと思い込んでいた4番を正しい状態に同調(シンクロ)能力で戻してやった」


 閉鎖空間で出来ることは限られていた。なにせループするまで30分程しか猶予がないのだ。多くをできる状況ではない。

 オレと素零はできることからすることにした。

 過去の行動を振り返り、暗黒の運河で4番を救出。

 4番が正気に戻ると事件の全貌が明らかとなった。

 パラドクスは()()()()()()()

 密室への監禁も、認識誤認の異様な状況も、パラドクスの能力によるものだと思い込まされていただけ。

 パラドクスはただの囮であった。


「私が愚かでした。ですが悪夢はこれで終わりです。

 この間違いだらけの世界を滅します。

 ──【真なる浄化は無よりて出づる】」


 4番が能力を発現すると、偽りの世界が崩れていく。

 闇が祓われ、無は有へ、0は1に。偽りは真実へと転ずる。

 澄み切った青空、新鮮な空気、都会の街並み。

 パラドクスが根城にしていた無の空間は消え去り、現実の世界にオレ達は無事帰還した。

 

「これがエニグマの力か。なるほど確かに脅威だが、我々人類の力が十二分に通用することがわかった。私の命など安いものだ」


 オレ達の前方にはカジュアルな服装、臙脂色のジャケットを羽織った初老の男性が立っていた。

 恐らくはパラドクスの正体であろう。


「偉そうだなー。──とりあえず死ねよ、ゲス野朗……」


 素零が放った閃光がパラドクスの両脚を消滅させる。

 続けざまに両腕を消し去り、男は地面に倒れ込む。

 手足が消えた男は芋虫のように地面を這っている。


「目的はなんだよ、そしてお前はだれだ。ん?」


 素零はパラドクスを侮蔑の目で見つめていた。

 同情も哀れみも感じない冷たい声音で詰問する。

 だというのにパラドクスは落ち着き払った態度で答える。


「私が苦しむ様を見れば君は喜ぶだろうね。

 君には典型的なサディズムの兆候が見られるから。

 だから私は何をされても屈しない。悔しいだろう?

 いつまでも幼稚性の抜けないクソガキが……恥を知れ」


 パラドクスの言葉を聞いた素零の眉間に皺が寄る。

 内心でひどく憤慨しているのであろう。


「待て素零、殺すな」


 オレが静止すると素零は苛立ちの表情をさらに強めた。

 

「なにさ、仕返ししてやるって言って結局は止めるんだ?

 キミっていつもそうだよね。優柔不断で軟弱でさ。

 そんなんじゃ何も救えないよ。いい加減に覚悟を決めなよ」


「違う、そうじゃない。他にもまだ犯人がいるんだ。

 時間をループさせたのは4番じゃないらしい。

 それに4番やオレ達に幻覚を見せていたのは誰だ?

 その犯人を聞き出すまではパラドクスに死なれたら困る」


「それならコイツに聞くまでもないよ。自分で探すから。

 反応のないオモチャなんて楽しくもなんともない。

 ──クタバレ」


 素零は零の螺旋を放った。

 胸を貫かれたパラドクスの肉体が粒子となって天へと昇っていく。


「……名もなき青年よ、我々は進化した生物だ。

 それこそエニグマを凌駕するほどにな。

 今回の一件で身を持って理解しただろう。

 我々は60億全ての力を結集し、世の理を取り戻す。

 今回はほんの小手調べだ。次からは容赦しないだろうね。

 悪いことは言わない、コチラ側へと戻って来なさい。

 私からの最後の問題だ、この戦いに最後に勝つものはだ〜れだ?」


 閃光一閃。

 パラドクスの頭部に二発目の零の螺旋が直撃する。


「うるさいよ。ば〜か!」

 

 パラドクスの肉体は完全に消滅した。


「うるさいよ。ば〜か!」


 直後、素零の声がコダマする。

 素零が呆けた顔で()()を見ている。


「なんだ、コレは! ムカつくな、消えろ!」


 素零は素零に向けて零の螺旋を撃ち放った。

 攻撃を受けた素零は奇声を上げながら側転し、回避する。


「キェハハハ! なんの躊躇いもなく自分を殺そうとするとはね。

 やっぱりキミタチはイイぞー! 最高の存在だ!

 ハジメマシテ、私はアルルカン。

 見た目通り、しがないただの道化師である」


 素零だったものがいつの間にか派手な色彩の衣装を見に纏った道化師へと転じていた。

 嘆きと嗤いが浮かんだ不気味な仮面をつけた道化師は一礼した後、オレを見つめる。


「パラドクスの正体を知りたいかい?

 キミタチをループさせていたのは私だけれども。

 おっと今のは嘘かもね!

 今回の謎は簡単すぎたなぁ。

 次のはもっと趣向を凝らした芸でキミタチをイタブロウ。

 11番は二度死んだ! 世界の民は進化した!

 オレは素零に侵された! エニグマなんて消えちまえ!」


 アルルカンを名乗った道化は不気味な歌を口ずさみながら、オレの足元にカードを投げつげると、闇に紛れて消えていった。

 オレは足元の地面に突き刺さっていたカードを拾い上げる。

 

「……臨床心理士、アルベルト・ベルグマン」


「ねぇね、その紙がパラドクスの答えだったの? 何者?」


 素零の問いかけに答えるのにオレは時間を要した。


「パラドクスの正体は、ただの人間だ」

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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