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死を超えた男。パラドクス。


「氷駕すまない、エニグマと全面戦争をすることになった。

 全てオレの責任だ、お前は逃げてくれ」


「全面戦争だと? 何があったのか説明しろ、理解できん」


 オレは今までの経緯を氷駕に説明した。

 氷駕は途中いくつか質問をするだけで、他には特に反応を示さない。

 異常な事態に慣れてしまったせいか、簡単に事実を受け入れたようだ。


「なるほどな、素零を殺すためにとうとう重い腰を上げたのか。

 正直なところ、今の段階で判断を下すことはできない。

 考えもなしに同胞を裏切ることはできないし、かと言ってお前達を見捨てるつもりもない。

 どちらにしても、まずは相手側の言い分を聞いてからだな」


「ああ、その通りだな。オレもそう思う。

 アレスティラ、この戦いの首謀者は誰なんだ?」


『素零が不可能殺しだと突き止めたのも、多くの同胞を葬ったと調べ上げたのも4番です。

 しかし不自然な点もあります、彼女は優秀ですが、自ら率先して戦いを起こすような人物ではないと認識していましたから』


「4番にはオレも一度会ったことがある。

 確かに柔和で朗らかな女性だったように思う」


「そうだな、不要な戦闘行為は好まない温厚な人柄だった。

 ……まさか11番のように既に殺されていて、誰かが成り変わっているわけではないだろうな」


「だったらさー、直接4番に会いに行く?

 その方が早いよね? 素零(オレ)の力なら直通で行けるよ!」


「確かにその方が確実だな。

 しかし素零はこの場に残るべきだ。

 奴等の狙いはお前なのだからな。

 俺と5番(アレスティラ)10番(オレ)で行こう」


「は〜い! じゃあ戦争の首謀者前まで飛ばしまーす!」


 素零が放った闇に包まれ、オレ達は4番のもとへと転移した。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 素零によって転移させられた先は暗黒の運河であった。

 全員の視線の先に背の高い緑髪の女性が立っている。

 オレが先頭に立ち4番であろう人物のもとへとゆっくり歩み寄る。


「お久しぶりですね、10番(オレ)6番(ソレ)についてはこのような結果になってしまい残念です」


『アナタは率先して戦いを起こすような人ではなかった。

 むしろ素零の行為を赦そうとしたでしょう。

 今回の一件はどうしても納得がいかないのです』


「人は変わるものですよ、アレスティラ」


 アレスティラが聞くと4番は朗らかに答える。

 のらりくらりと交わされるのも癪だと思ったオレは本題から入ることにした。


「お前、3番だろ」


「何を仰っているのですか? 乱心している10番にアレスティラからも何か言ってあげてください」


『ワタシはオレを信じています。彼がそう言うのなら、アナタは間違いなく3番なのでしょう。正体を現しなさい』


「聡明な貴女までもが、なんと嘆かわしいことでしょう」


 表情には出していないが、4番が動揺しているのは明らかだ。

 このまま押せば、いずれボロを出すだろうとオレは思った。


「4番、オレもアンタを疑いたくない、身の潔白を証明してくれ。全てを解決する質問があるんだ、聞いてもいいかな?」


「いいでしょう。我が身を疑われる事自体あってはならないのですが、それでアナタの気が住むというのなら質問なさい」


「では聞こう。オレとアンタが初めて会った時、オレは誰を連れていて、アンタは誰と一緒だった?」


「そんな事ですか、私はハッキリと覚えていますよ。

 アナタは女勇者を連れていて、私は一人でした。そうですね?」


 恐れていた事が現実となってしまった。

 目の前の女性は4番の皮を被った3番なのだとオレは確信する。


「……はぁ最悪だ。素零の予感は本当だったんだな。

 正解を言おう、3番(エド)。オレは一人で7番と一緒にいる4番と会ったんだ。お前、本物の4番を殺したのか」


「──……くっ、クヒ、ウヒィ! バレたか!

 あれから少しは成長したではないかねオレ君よ!

 そう! 私はエド・ワン・ドリー! だがエドは死んだ!

 今の名はパラドクス! 死を超越した創造の頂点である!」


 品のない笑顔で4番であり、エド()()()パラドクスが笑う。

 氷駕もアレスティラも瞬時に身構え、パラドクスの出方を伺っているようだった。


「エニグマを騙して戦争を起こし、素零を殺すつもりだな。

 そんなバカな事は今すぐにやめるんだ」


「やーだね! 素零相手なら相応の死人もでるだろう?

 みんな潰しあって消えちゃえよ! フヒ! ヒヒィ!

 レオナルドも死んで世界は今、いい具合なんだぁ!

 エニグマまで消えたら万々歳! 誰も私を止められない!

 ついに私の時代がやってくるのだよ!」


「ゴミ野朗が、今この場で消えてしまえ……」


 これ以上、3番を生かしておく必要も理由もなかった。

 オレは零の螺旋を発動するために腕に光を収束させていく。


「おっとそれはやめた方がいいな?

 今キミが4番を殺したら、エニグマの結束はさらに固くなる。

 キミは4番殺しの汚名を背負い、素零と共に1番の命を狙う叛逆者になってしまうんだよぉん!?」


「知ったことか! お前は消えろ、パラドクス!」


 オレは何の気兼ねもなく零の螺旋を放出した。

 光の螺旋がパラドクスの胸を貫き肉体の消滅が始まる。

 

「フヒィッ!? まさか本当に撃つとはね……。

 軟弱そのものだった青年はどこへやら。

 だがこれでもう戦争は止まらない!!

 4番(ワタシ)の死が世界を滅ぼす!!

 君達も世界も終わりだよ、私は死なないんだけどねぇ!!

 フヒ、ヒヒィッヒッヒャア!!」


 肉体が消滅しかけているのにも関わらずパラドクスは叫び続ける。

 狂ったかのように笑うパラドクスに零の螺旋を更に数発撃ち込んで肉体も存在そのものも完全に消滅させた。


「氷駕、アレスティラ、すまない。アイツを消さなければ気がすまかなった。戦争は避けられない」


「何を言うか、よくやったぞ、10番(オレ)

 お前がやらなければ俺がこの手で殺していた。

 あのどうしようもないクズ野朗をな!」


『その通りです。オレ、アナタは正しい選択をしました。

 出来ることをやりましょう。アナタは一人ではないのですから』

 

 遠くから複数の足音が聞こえてくる。 

 暗黒の運河には他の生命は侵入できない。

 やってくるのはエニグマで間違いないだろう。

 オレは次の一手をどうするべきか考えていた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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