オレとソレ。オレと素零。
──オレと氷駕は6番に会うために店を出た途端、闇に飲み込まれた。
闇の世界の主は逃げ隠れすることをやめにしたらしい。
オレは闇の真ん中に立っている。
氷駕の姿はどこにも見えない。
一条の光も差さない漆黒の世界。
目につくものは闇、黒、暗黒。
それ以外には何もない。
「懐かしいな、初めてソレに会ったときもこの感じだった」
闇の中でオレが呟く。
一寸先も見えない暗闇の中、二人を招き入れた者が現れるのをオレは静かに待っていた。
「ヤッホー! 久しぶりだねー! 素零に会いたかった?」
闇の中に明朗な声が響き渡る。
深淵の先から現れたのは見紛う方なき6番であった。
「お前はオレが知っているソレではないな。お前は誰だ」
「あ! やっぱりわかる? オレは素零。もう一人の6番だよ」
「もう一人? どういうことだ」
「オレ達は元々二人で一人。人間でいう姉弟みたいなものかな」
「ならお前に用はない。ソレに会わせてくれ」
「んー。無理だね。僕の方は今、素零の中にいるから」
言葉通りならソレではなく素零が不可能殺しということになる。
仲間を殺し回っていたのがソレではないのだと判明し、オレは安堵の表情を浮かべる。
「お前の中とはどういうことだ。ソレに会うにはどうすればいい」
「素零が僕を救出したとき、2番を殺したのは素零だって白状したら取り乱しちゃってさ、言うことを聞かないし、仕方ないから無理矢理一つになることにしたんだ。
キミに顔向けできないと思ってるみたいだから、会うのは厳しいかな」
ソレは2番を殺した犯人を熱心に探していた。
その犯人が自身の半身だと知ったとき、計り知れないほどの衝撃を受けたのであろう。
「何故エニグマを殺し回る必要がある。ソレは2番を大切に思っていたんだぞ。教えてくれ、お前は誰かに利用されているだけなんだろ?」
「アハ! 何言ってんのさ! 素零は全部キミのためにやってるんだよ? 逆に感謝してくれなくちゃだよ!」
素零は悪意を微塵も感じない満面の笑みを浮かべる。
オレは言葉の意味が理解できないでいた。
「待ってくれ、よく分からない。オレのため? ソレは知っているが、素零とは面識がないはずだろ」
「えっと、一応、最初に会ったのはキミが初めて不可能が死ぬのを目撃したときだね。
実はあの時、素零は僕を救出するためにエワンドリにいたんだよ。それを5番に見つかって戦闘になった。15番からキミを助けてあげたのを覚えてない?」
オレは過去の記憶を辿る。
15番が死んだとき、時間が一瞬停止していたこと、何者かの気配を刹那が察知していたことを思い出す。
「そうか、あの時あの場にいたのは素零だったのか……」
「そうそ、キミが知らないだけで素零はずっとそばにいたんだよね。エワンドリが破壊されたタイミングで僕を救出して一つになったんだよ。他に質問はある?」
「ならば10番はどうなる。殺す理由なんてなかっただろ」
オレの言葉に素零は笑顔から一転、神妙な顔を見せる。
「あー、あれね。実は素零じゃないんだよね。
あの時は話に行っただけさ。あくまでも平和的にね。
ほら、キミにベタベタしてた変な天使がいただろう? あれに僕が妬いちゃって大変だったんだよ。だから宥めるためにヘンチクリンな大会を終わらせるように直談判に行ったんだ。
そしたら10番、自爆しちゃってさ、素零はそのまま退散したんだよ。
誓ってもいいけど、10番を殺したのは素零じゃないよ」
「待て、じゃあ10番を塔に連れて行き、殺した犯人は不可能殺しではない? だとしたら素零を隠れ蓑にして好き勝手に仲間を殺している奴が別にいるということだな……」
「御名答! そうみたいなんだよね。
ちなみに犯人はレオナルドでもないよ。
10番はレオナルドに負けるほどヤワじゃないから」
「そうなると、他に怪しいのは誰だ。エニグマを殺せる奴は限られてくるし……新人類? いや、あの時点では知性もないはずだ」
「素零の意見も聞いてくれる?
昨日、18番に11番のことを聞かれて素零も調べたんだけど、彼、死んでるみたいだね。まずはソコを疑うべきじゃない?」
「ああ、1番から聞いたことだから死んだのは間違いないだろう。オレはお前が11番を殺したものだとばかり考えていた」
「ざーんねん! 11番を殺したのも素零じゃありませーん! 素零の中にいる僕がキミに嘘はつくなっていうから、素零はキミには真実しか話さないよ」
「じゃあ11番を殺して成り代わっているのは誰なんだ……」
「気になるよね? じゃあ確かめに行ってみよう! ほら、手を握って? 暗黒物質が存在する場所なら、どこへでも自由自在に移動できるんだ。隔離された地球にも、偽物の11番がいる場所でも、どこにでも一瞬でね」
素零が小さな手をそっと差し出す。
「……素零ではなく、オレはソレを信じるんだからな。まだ素零を完全に信用したわけじゃない」
オレは素零の手を包み込むようにして握り込んだ。
「んふふ……大きな手。素零の中の僕が喜んでる。キミに再会できて嬉しいってさ。さぁ、飛ぶよ!」
オレと素零は11番の正体を探るべく闇の世界から離脱した。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




