1番が絶対なその理由。全てを超えた先の者。
美唯子の予言を聞いてから、オレも氷駕も黙り込んでいた。
11番は既に死んでいる。
だとしたら先程まで行動を共にしていた男は誰なのか。
考えても答えが出るような問題ではなかった。
「11番がもう死んでるって? じゃあさっきまで一緒にいた奴は一体誰なんだよ」
重い沈黙を破ってオレが口を開くと、氷駕は腕を組んで考えているような素振りを見せる。
「……本物の11番を殺して成り代わった誰かだろうな。1番の言葉だから事実は事実なのだろうが、それ以上はなんとも言えない」
「誰かって誰なんだよ。そんな嘘みたいな話は信じられない……。
そもそも氷駕は1番がスゴイとか絶対とかいうけど、本当に鵜呑みにしても大丈夫なのか? オレも今まで漠然としか考えたことなかったけど、1番に直接会ったこともないし、逆に利用されたりとかはしてないよな?」
当然といえば当然の疑問だった。
1番の言葉は絶対だからとただ信じていたら、真偽を見定めることもできない言葉に囚われて身動きできなくなるからだ。
「……わかった。1番について曲がった考えを持たれても困るし、お前達もそろそろ知るべき時だろう。
1番がどういった存在なのか、なぜ絶対なのかを説明しよう」
オレも美唯子も氷駕を真っ直ぐに見つめる。
今までただなんとなく、スゴイ人物なのだろう程度にしか考えていなかった1番という存在の実態を知ろうと真剣に耳を傾ける。
「まず1番は過去未来、全ての次元、時空、生命の視点、思考、事象概念、結果と因果、無限に存在する宇宙の全てとその先を常に同時に視て把握し、完璧に理解している」
「もうその時点で意味わかんなーい!」
開始早々に美唯子が諦めの声を上げた。
「つまり全ての答えを最初から知っているってことか?
人の判断とか行動とか、何をするとどうなるとか、全ての因果関係を宇宙規模で全て? いくらなんでも滅茶苦茶すぎるだろ」
オレの問いかけに氷駕は薄い笑みを見せる。
その表情は当たり前すぎて答えるまでもないと言っているようであった。
「マジかよ……。じゃあ強さは? レオナルドやオレ達なんかよりは絶対に強いんだよな? 聞くまでもないか、1番だからな……」
「当然だ。まず大前提として、この宇宙に存在する全ての生命、並行世界や別次元、多元宇宙に存在するあらゆるエネルギーを結集したとしても1番には敵わない。
そもそも最初から勝てないと決まっている。何が起こったとしても絶対に死なないし消えることもないし、負けるということ自体があり得ない」
氷駕の表情に曇りは一切なく、口調も淡々としている。
冗談の類ではなく、ありのままの真実だけを述べていると疑いの余地もなく無条件に確信できるほどだった。
「もし戦闘をするとなれば、まぁ、するまでもないのだが、仮にそうだな……存在が無の者、無限に己を強化できる者、自身以外の他の存在を許さない者、宇宙や世界の概念を思いのままに改変できる者がいたとしよう、そんなものは全て無かったことにされ、完全に消し去られる。
何もかも通用しないし、拮抗することも超越もできない。
1番とは常に全てを超えた先にいるのだからな」
「無かったこと? なんだよそれは神様かよ」
オレは頭を抱えていた。
1番とは理解することを放棄したくなるような出鱈目な存在だった。
そんな者の存在が罷り通るならば、1番の言葉が真実だと言われたら信じる他にない。
「まさにそれだ。1番は人間にとっての神に等しい存在。程度はまるで違うがな。
究極なんて言葉は宇宙ができる前から超えている」
「なんだか気が遠くなるな。頭が痛くなってきた」
「今話した事はまだ序の口だ。1番の強さの本質は別にある。
むしろそちらのほうが重要な部分であり、俺達の原点であり、絶対に勝てない理由だ」
「はいはーい! 質問しまーす! ねぇね、お兄ちゃん! もしもね? もし私がペル様と二人でずっと一緒に居たいって、そんなにも凄い1番にお願いしたらどんなことになるの?」
美唯子が手を挙げながら元気いっぱいの声で質問をする。
「1番は基本的に自ら行動を起こすことはないが、仮にお前の願いを聞き入れたとしたら、お前とオレと1番以外の存在が全て消えた世界で永遠に生き続けることになるだろうな。
考えようによって天国にも地獄にもなり得るが、お前の場合は聞くまでもないか」
「そっかぁ、それは天国かなぁ。でも他にお友達がいなくなるのは寂しいからやめとく〜」
「お前は1番を軽視しすぎだ、もっと敬え、友達じゃないんだぞ」
「えー!? 私的にはもうお友達だけどな〜?」
「まぁいい。……これで少しは理解できただろう。そもそも1番には嘘をつく理由も他者を騙す必要もない。1番の言葉は全て真実であり、事実なのだからな。俺達が1番を信じる理由がわかったな」
オレも美唯子もゆっくりと頷く。
信じる以外に選択肢はなかった。
「──待てよ。だとしたらオレ達がどう足掻いても地球は消えるんじゃないか?」
「ああ、そうだ。だがやってみる価値はあるだろう? 俺だって無理だとは理解しているが、最後まで諦めるつもりはない」
「……そうだな。やるだけやるしかないよな」
「まずはこれからどうするかだ。11番に6番、問題が山積みだ」
「とりあえずオレはソレと会って話してみるつもりだ。11番とも接触して正体を探ってみるよ」
オレが言うと氷駕は壁に掛けてある時計の方へ目を向ける。
時刻は午前三時を回っていた。
「よし、それではまず休んで、夜が明けたら行動開始だ」
「わかった。氷駕はどうする?」
「お前が6番に会いにいくのなら、俺も同行しよう。
俺にはどうしても決着をつけなければならない奴がいる」
氷駕の決意を表すような凍てつく冷気がオレの前を吹き抜けていった。
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