最強戦力を探せ。消された地球。
「それで、1番は他になんと言っていた」
「えっと……ペル様は私の運命の人って。……キャー!」
美唯子が本気で照れている。
氷駕はムカついていた。
「頬を赤らめるな、鬱陶しい」
美唯子と1番の関係を知り、地球が暗黒物質の攻撃により消滅するという未来が確定していることが判明した。
本来、暗黒物質はエニグマよりも格下の存在なのだが、格下であれど、地球を消すという一点にのみ集中された場合、ごく短い期間でその目論見を達成できるだけの実力は持っている。
地球を防衛しつつ、暗黒物質と戦うことになれば、不利な状況になることは必至。
だというのに戦力が足りていない現状に氷駕は危機感を抱いていた。
「チッ。惑星が一つ消されるとなると、見捨てるわけにもいかんか。サラ、10番街はどうする」
「とりあえずは私がなんとか頑張ります。皆様は地球を死守してください。オレさんの故郷ですから、私としても他人事ではないので」
「そうか、すまんな。しかしまだ問題はある」
「どうかしたんですかー?」
美唯子が気の抜けた返事をする。
「地球を消滅させるレベルの敵との戦闘となると、俺達三人では手が回らん。少なくともあと二、三人は助っ人がいる」
「じゃあ私、お友達に連絡しますねー」
携帯を取り出しながら美唯子が言った。
美唯子の言動には一々、緊張感がなかった。
「美唯子様。ここは特殊な空間内ですから、並の通信手段は利用できませんが」
サラがそう言うと美唯子は得意げな顔をする。
「ああ、大丈夫でーす。使ってるのは地球のモデルですけど、レオナルドに改造してもらったので全宇宙と交信可能だし、容量も宇宙規模。ペル様撮り放題〜!!」
「こいつ、レオナルドとも親しいのか。バカは恐れを知らんとはよく言ったもんだぜ」
氷駕は美唯子のコミュ力に呆れていた。
1番と友人だという時点で既に人脈力がぶっ壊れている。
もしかすると本当に美唯子が宇宙で最強の存在なのかもしれないと氷駕は考えていた。
「一応、10番街の住民にも天使、悪魔、魔王、邪神、吸血鬼等、揃ってはおりますが、戦力として連れて行きますか?」
「そんなものはまるで役に立たん。最低条件が無敵かつ銀河崩壊級の攻撃力。そうでもなければやる前にやられる。足手纏いだ」
サラの提案を氷駕が即却下する。
悲しいかな事実である。
人類同士レベルの争いであれば、天使や悪魔、魔王級の戦力は戦局を覆すだけの力はあるかもしれない。
しかしエニグマ、暗黒物質の争いともなれば、神と崇め奉られているような存在でさえ空気のようになってしまうだろう。
「そもそもコイツが起きれば話が早いのだ、コイツが。この場で最大の戦力が呑気に寝てやがる。呆れるぜ」
寝ているオレの額を氷駕が叩きながら言う。
「「「やめて!」」」
女性陣が一斉に叫んだ。
「ペル様の綺麗なお顔に傷でもついたらどう責任とります?」
「彼はこの星の神です。従者として今の行為は見過ごせません」
「タタイたらダメ。怒るよ」
次々に罵倒の言葉を浴びせられ氷駕は袋叩きにされた。
「俺はもう帰っていいか?」
氷駕は心から帰りたかった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ウーン……輝夜は厳しいかぁ。作戦中だもんなぁ。あっ! 銃華はいけるって! やたぁ〜! 一人確保!」
携帯をいじりながら美唯子が呟く。
地球を救うための戦力を探しているようだ。
「そいつは強いのか。どうもお前とお前の友人は信用ならない」
先程の恨みを晴らすように氷駕が皮肉を言う。
「え〜……。クラスメイトの渕拔 銃華。新人類だから不死身だし、戦力測定女子の部で三位を記録したんだよ!」
「戦力測定だと?」
「うんうん。本人の素質と能力のバランスで強さを計算して、
男子は三位が信長くんとかそういう風に順位付けしたの」
國裂信長。
完全無敵のエニグマさえ斬り裂き、不死身の肉体を持つ男。
敵としてみると恐ろしいが、仲間となれば頼もしいだろう。
そんな男と同格の女性がいるのか真偽は定かではないが、事実であれば申し分ないほどの戦力になりうる。
「信長……あの侍か。つまり今から来る女は信長と同格レベルに強いというのか。待て、それよりもアイツが三位だと!? まだ上がいるのか」
「多分ね〜。ウチのクラスってエリートの集まりみたいだったし、すごい人だらけだよ」
「そうか。まぁ、お前はその中に含まれていないだろうがな」
「18番。こちらとしても一人、連絡を取りました。7番が気が向いたらくるとのことです」
サラも助っ人を頼んだようだった。
7番とは過去に一度オレが顔を合わせていた女性。
暗黒物質を半日で打倒できると豪語していただけに、こちらも戦力として申し分ないだろう。
「7番だと!? 本当なら百人力だな。よし、戦力問題は解決した。すぐに地球に向かうぞ」
「美唯子様のお友達が10番街に到着したら私が地球までお送りするので皆様は先に向かってください」
サラがまとめると氷駕が転移のために空間を引き裂く。
「ペル様いってきますね。メアち、ペル様にお別れのチューしてもいい?」
「ダメ」
メアは即答した。
「え〜。じゃあメアちもしていいからさ〜」
「わかった」
メアは即答した。
「いい加減にしやがれ! ピクニックにいくわけではないんだ、気を引き締めろ!」
この日、何度目かわからない氷駕の怒鳴り声が響く。
「サラ、地球の座標は」
「太陽系のXX1720地点です」
「わかった。行ってくる」
三人が地球へ向かうため超空間へと飛び込んだ。
「ム、太陽系。これは一体どういうことだ」
暗黒の運河内で氷駕が呟く。
何か異変に気づいたようで当惑の色を見せている。
「どうかしました? 忘れ物ですか?」
美唯子がくだらないことを言うが氷駕は気にも止めていない。
「聞いて驚くなよ。今この宇宙に地球は存在していない」
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