地球消滅カウントダウン。私を地球へ連れてって。
今回からダークマター地球侵略編となります。
第三惑星の戦いから早三日。
オレが神を務める10番街の世界情勢は混迷を極めていた。
元々は先代の神であるアリシアが宇宙の難民や追放者、ありとあらゆる種族、人種、生物・生命の楽園を作ろうとして生まれたのが10番街である。
当然、交わる種が多ければ多いほど、様々な思考や思想、文化や思惑などが入り混じり、問題が生じやすくなる。
新生10番街が惑星として機能しだしたばかりだというのに、世界の各地で争いが勃発。領地問題や宗教戦争、果ては魔女狩りや侵略活動まで行われている始末。
本来、争いを収め、世界が世界として円滑に機能するために尽力する存在が神であるはずなのだが、その神であるオレはと言うと、呑気にグッスリと睡眠していた。
◇ ◇ ◇ ◇
──10番街・星の中枢。
神であるオレのためにサラが用意した特殊空間。
如何なる手段を持ってしても侵入不可能。
あらゆる干渉も攻撃行為も受け付けない神の居城。
そこに氷駕は呼び出されていた。
「お待ちしておりました18番。雰囲気が少し変わりましたか?」
落ち着いた声音でサラが尋ねる。
信長との戦闘で負傷し隻腕となった氷駕は左半身をマントで隠し右目には眼帯を付けていた。
「お前、俺を便利屋か何かと勘違いしてないか。気安く呼びやがって」
「私が知る限り貴方が一番良識がありますし、仲間思いなので利用しやす……。もとい頼り甲斐があると思いまして」
「訂正しても無駄だ。利用しやすいだと? ふざけやがれ」
サラは世界の情勢について詳しく説明した。
オレが帰還後、眠ったまま目を覚さないことも包み隠さず話すと氷駕は激怒した。
「寝てるだと!? その尻拭いを何故俺がしなければならんのだ」
「同調能力は体力の消耗が激しいですし、それに加えて無茶な行動ばかりするので、お疲れなのだと思います」
オレの従者であるサラが淡々と語る。
仕方ないことなので諦めてください。とでも言わんばかりの態度が氷駕を余計に苛立たせる。
「ふざけるな! 俺だって似たような条件だが起きているぞ。大体、従者であるお前がいつまでも甘やかすから、あいつが神としての自覚を持てんのだ。案内しろ、俺が叩き起こしてやる」
神殿内に乱暴な足音が響く。
氷駕がぶち壊すような勢いで扉を開け、寝室へと入ると、ベッドで健やかに寝ているオレ。
そして寝ているオレを眺めながらブツブツと何かを呟いている美唯子の姿があった。
「貴様、何をしている!」
「わーッ!? ビックリしたぁ!!」
氷駕に怒鳴られた美唯子が飛び上がった。
美唯子は余程驚いたのか胸に手を当て呼吸を整えている。
「お前、女のクセに人の寝込みを襲うとは、頭がおかしいのか」
「誤解だよぉ! メアちと話してただけだってば!」
美唯子が弁明すると、それを証明するかのようにオレの身体の中からメアが姿を現した。
「ほんとだよ。それに何かしようとしても私がトメルから」
「……10番街が荒れている。そこで寝ている腑抜けの代わりに世直しにいくぞ。ついて来い」
怒鳴りつけたことを謝ることもなく、二人を連れ出そうとする氷駕。
「ちょちょ、ちょーっと待って!」
氷駕に引かれていた手を振り払い、美唯子が叫んだ。
「なんだ、泣き言は聞かんぞ」
「あのさ、エニグマが使う転移術の真っ黒な海みたいなのって、ほんとにどこへでも自由にいけるの?」
「暗黒の運河のことか。確かにこの世に存在さえしていれば宇宙の果てだろうと自由自在に移動できる。それがどうした」
「私を地球へ連れてって! なーんて、ダメ?」
舌を出しながら美唯子がイタズラっぽく微笑む。
内心で氷駕はムカついているのだろうが、先程叫んだ負い目を感じているのか感情を表に出さない。
「里帰りなら後にしろ。今は目の前の10番街だ」
「ハナシをきいてあげて。大事な事だから」
氷駕の目を見つめてメアが言う。
メアの表情があまりに真剣だったので、氷駕は折れた。
「……聞いてやる。さっさと話せ」
「あのね、ペル様にも言おうとして信長くんに邪魔されちゃったんだけど、地球が暗黒物質の攻撃を受けて消滅しちゃうの!」
「なんだと?」
「メアちはあり得ないって言うんだけど、私の予言って当たるからさ。それになんだか胸騒ぎがするし」
「お父様は私達に希望を託した。だから攻撃なんてしないよ」
美唯子とメアの意見がぶつかる。
氷駕は考える。
どちらの意見を尊重するか。
当然ながら後者であった。
オレからメアと暗黒物質の関係について聞いていたし、そもそも予言なんてものを氷駕はハナから信用していなかった。
「メアが言うことが正しいだろう。予言なんて嘘くさい話を誰が信じるものか。夢なら寝て見るんだな」
「うーん。普通の人はそう言うよね。
……しょうがない。あのね、私に予言を伝えてくれる人、1番って言うらしくて、エニグマが数字で呼び合ってるのに似てない? 1番って文字通り一番強い人なんだよね?」
美唯子が1番と口にした途端、氷駕の顔色が変わった。
「1番だと!? デタラメを抜かすな。いや、しかし、もし本当だとしたらかなり不味いな」
険しい表情で氷駕が沈黙する。
事態の重大性を悟ったのか、美唯子は震えた声で尋ねる。
「えっ、どうしたの。何かヤバいの?」
「もし本当に1番の言葉だとしたら、お前の予言は100%的中する。1番は究極で至高の存在。お前らには理解できんだろうな」
「そんなにすごいんだ……」
「ああ。もし仮に1番と対峙したら、レオナルドですら息する間も無く消し去られるだろうな」
美唯子にとってもイメージしやすい例が出たことで、ようやく1番という存在のすごさを理解できたようだった。
「うわぁ……怖いなぁ。じゃあ私、1番と結構仲良しなんだけど、それってすごいこと?」
「仲良しだと? ふざけやがって。だがもし1番がお前に味方するなら、お前は間違いなく宇宙最強の存在だ」
依然として険しい表情のまま氷駕が呟く。
それを聞いて美唯子はメアの手を取りピョンピョンと跳ねた。
「メアち! すごくない!? 私、宇宙最強だって!」
「オー!」
正確に言うと美唯子ではなく1番が最強なのである。
だがそんなことは気にもせず二人の少女はしばらく楽しそうに跳ねていた。
それを見た氷駕は大きく嘆息した。
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