男の決断。負けっぱなしで死ねるかよ。
同調能力を解除したオレは天を見上げて思案する。
時間にして15分程。精神に負担はかかったが、得られた情報の価値は極めて高いといえた。
8番を探しに行ったはずの17番カズキがレオナルドに捕らえられている。
そして女勇者の刹那も同様に少女の記憶の中に現れた。
彼女の場合、捕らえられたというよりは、協力関係にあるようで、オレはにわかには信じがたい事実に困惑している。
加えて目の前にいる輝夜という名の少女もオレの頭を悩ませる要因であった。
レオナルドの言葉通りなら宇宙最強の能力者。そんなことはどうでもいい。
記憶の中で見た少女と、実際に対面している輝夜は、雰囲気も態度もまるで別人のように思える。
記憶の中で見た限り、本来の輝夜は意思が強く、自らの道を己の力で切り開ける強い女性だという印象を受けた。
今の輝夜はそれとは真逆の、いかにも少女然とした印象が強い。
恐らくはレオナルドの都合のいいように記憶を改竄されているか、全くの別人格に作り変えられている。
そうでもなければ、自身を倒せるような存在を敵対する相手に送りつけることはあり得ない。
「輝夜さん。君を仲間のもとに送り返す。君達がいる惑星の場所がわかるかな」
「えっと……確か第三惑星と言っていた気がします……」
オドオドとした態度で答える輝夜。
やはりこの子は別人だ。
オレは確信し、決断する。
「ナビさん。第三惑星に行ってくる。氷駕のことを頼む」
レオナルドが作り出した軍事拠点の人工惑星。
そこに単身乗り込むことを宣言したオレにナビが反発する。
「そんな、無茶です! せめて1日、1日でいいから休んでください。今のアナタは力を使い果たしてただの人間に近い状態なのですよ! そうして立っているだけでも辛いのではないですか? そんな状態で新人類が根城にしている惑星に乗り込んだら間違いなく殺されてしまいます……」
悲痛な叫びが闇夜に響く。
主人を失ってしまうかもしれない。
ナビの心を絶望感が支配する。
オレとしても、無謀な案だと、死ぬかもしれないとは理解していた。
しかしそれ以上にオレの心を駆り立てるものがあった。
「そんなことはわかってる。でもオレの師匠が、大切な仲間が敵の手の中にあるんだよ! 17番、カズキさんも捕まっているんだ。今すぐにでも助けにいくよ。協定もクソも関係ない。戦争になってもオレは行くから」
オレの決意は固かった
第三惑星に向けて転移するために空間を引き裂くオレをナビは止めることができない。
昔馴染みのカズキが捕まっていると聞いた途端、彼女の魂は凍りついた。
正常な判断が下せない。
死に向かって突き進もうとしている主人を諌めることが出来ない。
「待てッ! よく言ったなオレ。俺もいくぜ」
声の主は氷駕だった。
血まみれの身体で、立っているだけでも奇跡のような状態だというのに力強く叫んでいた。
「オレもお前も、死ぬかも知れないけど、いいのか」
「今でも半分死んでるような状態だ。それにな、あの侍野郎をぶち殺さないと気が済まねえ。負けっぱなしで死ねるかよ」
氷駕が微笑み、オレも笑う。
互いが互いをバカだと認識したとき、自然と笑みが溢れていた。
「ホントにバカ……。どうか死なないで……」
死地に向かって飛び去っていった主人の無事を祈ることしか、従者には出来なかった。
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