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戦闘力測定不可能。エニグマvs第六天魔王。


「なんだ、レオナルドがどこにいる。話と違うぞ」


 氷駕は怒っている。

 突然現れたナビに強引に連れて来られた10番街は、鼻歌でも歌いたくなるほどに平和で穏やかであった。


「おかしいですね、オレさんもいませんし、一体何が……」


 困惑の表情でナビが言う。


「待て、レオナルドではないが、客が来たようだな」

 

 上空から飛来したのは複数の戦闘用攻撃ヘリコプター。

 大きな鉄の塊が、二人が立っている地点目掛けて下降する。

 勢いよく回るプロペラが騒音を撒き散らし、風を受けた大地に波紋が広がる。

 ヘリが着陸すると、中から軍服姿の男達、そしてボサボサ髪に着物、腰に刀を携えた場違いな感がある男が一人、降りてくる。

 軍服の兵隊が整列すると、隊長格らしいヒゲの男が前に出る。

 

「この星は調停者の許可なく作られた新星であるな、責任者は誰か」


 ナビが前に出ようとするのを氷駕が制する。

 その顔は殺意に満ちていた。


「おい猿、星に許可がいるのは初耳だぞ。俺は今、機嫌が悪いんだ。喜べ、一瞬で粉微塵にしてやる」


 氷駕は調停者の使いを粉微塵にすることにした。

 拳に凍気を集める氷駕を見たヒゲの男が話し合いは不可能だと判断したのか、部下達に視線を送り、声を張る。


「仕方がない。戦闘を開始する。伍長、前に出よ」


 隊長に言われて小柄な男が前に出る。

 伍長は氷駕の身体をマジマジと見つめ、下卑た笑いを見せる。


「驚け! 俺は基礎能力(ステータス)を確認できる!」


 自信満々に男が言うが、氷駕は冷めていた。


「それで?」


「はぁ?」


「その基礎能力というのがわかるから何だと聞いているのだ、猿」


「何って……弱点とか、属性とかが丸分かりになるんだぞ! 対策を立てられたら敗北は必死! どうだ、恐ろしいか!」


「それは猿同士での話だろうが。猿が恐竜の戦闘力を把握できたとして、それでどうする、どうやって勝つ、言ってみろよ」


「えぇーい、うるさい! ごちゃごちゃ言わずにくらいやがれ!!」


 能力を発動し、伍長が氷駕の基礎能力(ステータス)情報を読み取る。


──────────────────────────

名前:18番(氷駕)

状態:不死・無敵

種族:エニグマ

属性:氷


攻撃力:8不可思議77兆9900億

防御力:6那由他53兆6500億

素早さ:7極77兆2000億


攻撃範囲:惑星規模級(計測不可能)

弱点:ありません

備考:貴方の人生は終わりました

──────────────────────────


「ういいぃっ!? 最大値が9999なんですけどー! バフを考慮しても1万が限度なんですけどー!?」


 伍長は発狂した。


「これでもまだ力を解放していない。俺達の強さを数値化するなど不可能だ」


「そんなのないよぉ、あり得ないよー」


「落ち着け、伍長! 何かの間違いだ。隣にいる女でやり直せ」


「……はっ! 申し訳ありません。あまりに異常な数値に我を忘れていました。直ちに測定いたします!」


 伍長は気を取り直してナビの基礎能力(ステータス)を測定する。


「それで、どうなのだ。今度は上手くいったのか」

「すっ、全ての数値が8000万を超えています……化け物です」

「もういい、話にならん。戦闘を開始せよ! ……ん?」


 ヒゲ男の顔が強張る。

 つい今まで話していた伍長を含め、全ての部下達が凍りついていた。


「お前の部下なら凍らせたぞ。今からお前も殺す。降伏は聞かん、生きたければセイゼイ抵抗するんだな」


「ひっ、ひっ、そんな……助けて、誰か助けてくれー!」


 ヒゲ男も発狂した。


「騒ぐなやオッさん。大の大人がみっともないっツーの」


 手を上げて走り回るヒゲを着物を着た男が諌める。


「おっ、お前は第六天魔王! もう戦えるのか? 早くこいつを殺してくれ、でないと俺が殺されてしまう! 助けてくれー!」


「だから、騒ぐなっツーの!」


 着物の男が刀に手を掛け、一刀のもとにヒゲ男を両断した。

 そのまま刀に付いた血を払い、氷駕を見つめる。


「で? お前がエニグマって奴? 案外普通じゃん」


「……貴様、ただの猿ではないな。14番の力を行使した新手の人類か」


 男が刀に手を掛けてから抜刀するまでの速度が異常であった。

 エニグマである氷駕の目を持ってしても追いきれず、気がつけばヒゲ男が斬られていた。


「よく知ってんじゃん。レオナルドが新人類とか呼んでたな。

 んで、俺はコードネーム第六天魔王の信長だ、よろしく」


「知性を持ったか、厄介だな。だが猿は猿だ」


「あっそ、ほんじゃま、その猿に殺されろよ。かかってこい」


 氷駕は動けない。

 男の飄々とした態度とは裏腹に、付け入る隙がまるでない。

 動けば斬られる。そんな予感がしていた。


「どうした? お前がイキれる相手は猿だけか? 人間様が怖いのかよ、かかってこいっツーの!!」


 信長が鞘から刀を抜き、威嚇しながら鞘を放り投げる。 

 気迫と共に、射抜くような眼光で刀を構える姿はまさに侍。

 構えた刀の切先から、殺意が滲み出ている。

 人間如きに馬鹿にされている。そう感じた氷駕が舌打ちする。


「猿が、調子に乗るなよ」


 氷駕の身体が瞬時に消え、信長の後方に出現する。

 肉体を冷気に変えての短距離転移。

 常人には気配さえ捉えられない瞬間転移に、信長は即座に反応してみせた。身体を捻り、足を跳ね上げる。変則的な回し蹴りが氷駕に迫る。

 信長の足が空を斬る。

 跳躍する姿すら見せない速度で、氷駕が軽やかに跳んでいた。


「ハッ! やるじゃん」

 

 信長の身体が、陽炎のように揺らぐ。

 一息の間もなく、信長は氷駕との距離を詰めていた。


「速い!? いや、速度ではない、別のカラクリだな」


 視覚的にも、知覚的にも捉えられない。

 少なくとも人間の動きではなかった。

 気がつけば、信長は氷駕の間合いに存在していた。

 氷駕の懐で信長が身をたわめる。


「なん、だ、コイツは……」

 

 不死身のエニグマである氷駕が死を予感した。

 冷気で霧を生み出し、信長の視界を覆い、後方へと距離を取るため全力で地を蹴った。


「ハッハ! 遅いっツーの!」

 

 回避行動を取ることも、跳躍することも読んでいたとばかりに信長が跳び、刀を振る。光の速度で斬撃が走った。

 迫り来る斬撃を前に、氷駕は右腕に凍気を集中、鋭利な氷剣(ブレード)を生成し、斬撃を斬り払う。

 刀と剣がぶつかり、鬩ぎ合う。

 信長の繰り出す剣線は的確で早く、かつ重い。

 氷駕は怒涛の猛攻を耐えることしか出来ない。


「ハハハァ! どおした、どしたぁ! 防戦一方で俺の首がキレるのかよオ!」


「クソが、強いじゃねえか、猿の分際で……」


 手数が多く、次第に攻撃を捌ききれなくなる。

 信長の痛烈な蹴りが顔面に炸裂し、氷駕の体勢が崩れる。


「ハッ! もらったぜ!」

「──しまっ!」


 袈裟斬りの刃で、氷駕の左腕が勢いのまま切り落とされた。

 この世に存在しないはずの無敵のエニグマである氷駕の肉体は切り裂かれ、切り落とされた腕が再生しない。

 痛みと絶望に氷駕が大地に膝を付く。


「グ、おのれ、猿が……」


「なんだよ、エニグマ、普通に殺せんじゃん。

 よぉ氷の。お前は今まで自分が不死身だから強いって勘違いして生きてきたの、わかる? 不死能力に頼り切って実力を磨かないから猿に足下すくわれるんだぜっ、てな!」


 信長が馬手差しを抜き、氷駕の右眼球に突き刺した。

 荒い吐息を漏らす氷駕の首筋に、信長が刀の切先を当てがう。

 

「レオナルドは好かんが、この力は気に入ったぜ。ハッハ! 天下統一でも狙うかよ! 武士の情けだ、解釈してやるよ!」

    

 雷光一閃!

 氷駕に向けて振り下ろされた刃を閃光の迅雷が弾き飛ばした。


「氷駕! 大丈夫かよ、おい!」


「オレか……すまない。猿に、負けた。同属帯の、名折れだな、俺は……」


「もういい、もう喋るな。ナビさん、氷駕の手当てを頼む」


「はっ、はい!」


 ナビが氷駕を抱えて転移していく。

 オレは信長を鋭い目つきで睥睨する。


「ヒュウ! カッコいいじゃんかよ! 真打ち登場かよ」


 飛ばされた刀を拾い、信長もオレを見据える。


「お前は絶対に許さない。覚悟しろよ」


「覚悟すんのはテメーだっツーの! お前もスグに斬り捨てる」

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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