10番街復興計画。行動開始。
オレは今後の方針を決めるための話し合いをするために、放置していた曄とミカのケンカを仲裁することにした。
神と妖狐は元気にケンカを続けていた。
「曄、いい加減にケンカはやめろよ。どうしてそんなに神様につっかかるんだよ」
「妾は神が嫌いじゃ。本当に神が実在するなら、いつか一発お見舞いしてやろうと考えていた。妾の世界が消された時、どうして救ってくれなかったのか問いただした上でな」
不貞腐れた顔で曄が言う。
「ハッ! なんだい八つ当たりか。私は確かに神だが、アタシだって故郷を消されてるんだ、エニグマ、だったか? アタシだって、できる事なら奴等を倒したかったさ、だが現実はこうだ、奴等は神でも止められない」
「……そうじゃな。妾が悪かった。謝る、許せ」
お互いにまだ言い足りない様子だったが、形式的にでも謝られたからにはミカとしても折れるしかなかった。
「とりあえずはこれで良しとしよう。それで、ナビさん、これからどうしたらいいかな」
「オレくん、待ってくれ。その前に、聞かねばならない事があるだろう。曄……さんとナビは不可能殺しと接触したんだ、つまり、奴の姿を目撃したことになる」
「それは確かにそうだな。どんな奴だったか覚えてますか?」
オレがナビに聞くが、ナビは黙ったままだった。
ナビが黙り込む様子を見て、代わりに曄が口を開く。
「口を噤むのも無理はない。奴は光じゃ、それも黒塗りのな」
「えぇ、今の曄さんの表現が一番近いですね。存在は認知できたのに、視認はできませんでした。ノイズを放つ光のようなもの。一人称はオレ。どこか幼い印象を受ける言動。そして性格は残忍で純粋。彼なのか彼女なのか、私が見た限りの心象はこんなところです」
抽象的なのか具体的なのかよくわからない発言だったが、そもそも不可能殺しという存在自体が漠然としているので、そういうものだと納得するしかない。
「あのタイミングで現れたのを考えるに、不可能殺しとレオナルドは繋がっている、のかな?」
「いえ、レオナルドが不可能殺しが出現するのを知っていて利用した可能性もあります。彼等の真の目的が不明なままなので、推測の域を超えませんが」
「そういえば、レオナルドが予定調和だと言っていたな。だとしたら偶然ではなく、必然か。ムカつく野郎だ、そんな奴に勝てるのか。ナビ、俺達はこれからどうしたらいい」
「とりあえず、10番を救出に向かいましょう。そして10番街の住民をレオナルドの手から奪還する。そこまでが当面の目標になりますね」
ナビの発言にオレは仰天する。
てっきり10番は死んだものとして考えていたのが、どうやら考え違いをしていたようだった。
「ちょっと待ってくれ、10番は生きているのか!? 星ごと自爆したのに?」
「我々の特性をよく考えてください。死にたくても死ねません。例え銀河が消滅しようともです。あの場合は特例で、不可能殺しは情報通りなら、そんな我々でさえ殺せます。なので仲間を逃し、誰も殺されないようにするための苦肉の策でした。そして10番は言っていました、レオナルドに人質にされた全住民を救ってくれと」
「10番はオレ達のことも、レオナルドのことも全てを知っていたのか」
「えぇ、基本的に10番より上の存在は、我々とは別次元だと考えてください。例えるなら人と神ほどに力の差があります。カズくんなら、直接触れ合ってきたからわかるでしょう。彼等の特異さが」
ナビに言われたカズキが翳りのある表情で口を開く。
「あぁ、そうだな。正直な話、あの場で5番に出くわした時、内心は震えていた。笑いたければ笑ってくれてもいい、だが嘘偽りのない感情だ。17番は5番には勝てない。それだけは絶対だ」
震える声で話すカズキを見て、オレは昔を思い出していた。
「その気持ちはわかるよ、オレも初めて3番のエドに会ったとき、怖くて仕方なかった。だから、痛いほどによくわかる」
3番と聞いた途端に全員が一斉に黙り込む。星を破壊する男は誰の心にも心的外傷として存在し続けていた。
最近になって姿を見なくなったのが唯一の救いではあるが、叶うならこのまま一生、出会いたくないと全員が考えている。
「10番さえ無事なら10番街も復興できます。彼はオレくんに会うのを楽しみにしていました。試練もまだ途中の段階でしたし、何をおいてもまずは10番を探すべきだと思います」
「なら、やるべき事は決まったな。10番を救出に……」
「ちょっと待ってくれ、アタシにも言いたいことがある」
オレの言葉をミカが遮る。その表情があまりに真剣だったので、誰も口出し出来ない。ミカの次の言葉を静かに待つ。
「8番に会いに行ったノノと刹那がまだ戻っていない。ノノはアタシにすぐに戻ると言っていた。それが丸二日、何の音沙汰もない。そっちにも気をかけるべきじゃないか? オレはどう思う」
問われてオレは考える。
ノノが一緒なら問題ないと考えていたが、最近はエニグマがそばにいようと絶対に安心とは言えないような状況が続いていた。
考えるほどに刹那とノノの安否が気になってくる。
「それは確かに心配だ。何かあったのかも知れない。じゃあ別れてそれぞれ行動しようか。時間が惜しい状況なのは間違いないしな」
「アタシはノノを助けに行く。力を取り戻したいが、今は緊急事態のようだし、文句ばかり言ってられない」
「ならば妾もついて行ってやろう。先程の詫び代わりにな。ありがたく思え」
曄が言うとミカは分かりやすく舌打ちをした。
それを見た曄が鼻で笑う。
「私は立場上、10番を放ってはおけませんから、10番の救出に向かいます。オレさんも付いてきてください。レオナルドに接触する可能性が高いので、この中で一番強いオレさんがいてくれれば安心できますから」
「わかったよ。それでいい」
「ナビ、俺はどうしたらいい」
「カズくんはミカさんと曄さんの護衛をお願い。戦力として私達のうちの誰かは絶対についていた方がいいと思うから」
ナビに言われてカズキは大人しく従う。
戦闘力的には真逆の二人だが、立場的にはナビが圧倒的に上らしい。
「エニグマの護衛か、お断りしたいが、頼もしいといえば頼もしいの。妾としては異論はない。……神の意見はどうじゃ」
「何もない。心配なのは、狐が足手纏いにならないかどうかだ」
「何を言うか! 妾はお主の万倍は強いわ!」
「ケンカはやめろって。よし、じゃあ行動開始だ」




