陽神美唯子。
運命とは。
終の螺旋が少女を貫く。
「あー、これが例の必殺技ですか。
ふー、痛い痛い。いや、気持ち、イイ?
なるほど、概念を打ち破るのは概念ですが、コレは……真逆? 真理とは程遠い、まるで……アァ、蕩ける……」
重い溜め息をついた直後に恍惚の顔を見せる少女。
避けもせず、対応しようという素ぶりすら見せなかった。
少女の体が薄れていく。
世界から消えようとしている。
「なによ、あっけないのね。
それよりもアンタ! この剣、まるで普通じゃない!
凄い力は感じたのに精々斬れ味のいい業物レベルよ!」
先程手渡した剣を見つめて憤慨するレア。
オレも同じタイミングで嘆息する。
「それはキミが上手く使いこなせていないからだ。
本来の力を発揮すればきっと驚く事になる。
それよりも信長はどうした? 逃げてきたのか」
「はぁ? あんな雑魚、一撃で斬り捨てたわよ。
何か文句ある?」
「……すごいな。オレは結構苦戦したんだけどな。
やはりキミは凄いよ。素直に尊敬できる」
「当然よ! でも私に勝ったあんたも強いから。忘れないで」
「あはは……仲良しですね。
完全な不死になる前に一度死ねてよかった。
まぁ、覚えたし。ということで……ミコー、後はよろしくー」
少女が力なく笑うと、教室の扉が勢いよく開かれた。
「はいはーい! キリちゃんお疲れ様でした!
そしてペル様お久しぶりです! 貴方の美唯子ですよー!!」
──殺せ、消せ、世界が、この女を──
「くっ……陽神、美唯……子」
朗らかな笑顔を見せる陽神美唯子。
頭が、痛い。
「あらら、なんだか元気がありませんねぇ?
大丈夫ですかぁ? なんならぁ、私が介抱してあげましょうか!! さぁ、おいでー??」
そう言って両手を広げる美唯子。
ふざけているのか、本気なのかもわからない。
得体の知れない女。オレはこの女が怖い。
「──うざったい、消えろ……」
レアが怒気を孕んだ声を漏らして神速で美唯子に斬りかかる。
「ああ! アレスティラさんもご一緒でしたか!!
お久しぶりですぅ! やっぱり運命ですねぇ!」
美唯子はレアの剣を軽くイナし、華奢な腕を掴んで壁に叩きつけた。
「……なによ、この、女。私が負ける、なんて──」
反則級の技能を複数持ち合わせているレアを簡単に封じ込めてしまった。
やはり陽神美唯子は普通ではない。
「レアがアレスティラ……だと」
「はい〜。レアを逆さまにするとアレになりますよね?
面白いでしょう? 私達は必ず巡り合う運命なんです。
だからペル様のそばには、いつも私かアレスティラがいるんですよ〜! モテモテですねぇ、このこのぉ!」
レアがアレスティラ。気性から外見から何もかもが違うというのに何故だか納得してしまう。
「ちなみにぃ? 月丘唯って覚えてますかぁ?
覚えてませんよねぇ? 実はあれ、私なんですよ〜」
わからない。覚えていない。月丘唯とは誰なんだ。
「んふっ! なんだか楽しくなってきました!
ついでに色々と答え合わせをしましょうかぁ?」
オレが困惑しているのを楽しんでいるのか、美唯子は嬉々として話を続ける。
「今なら何でも答えてあげますよー?
制限無しのなんでもです! さぁ、どうぞ!」
「……この世界は並行世界なのか?
小さな違和感をいくつも覚えている。
一体この世界は何がどうなっている」
かねてからの疑問をぶつけると、美唯子は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「あー! そう考えますぅ? でも残念!
この世界は始発から終点まで一本道なんですよぉ!
並行世界や、その他の可能性が発現する毎に、都度、1番さんが消してしまうので!」
美唯子は嘘をついていない。
嘘をつく理由がない。
このまま話を続ければ様々な真相をハッキリとさせることができるだろう。
この機を逃す手はない。
正念場だ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。