宇宙最強の剣を作る。勇者と鬼神。
「それにしてもあんた、どうやってここまで来たのよ」
レアがギリナスに問いかける。
遠く離れた異星の地、10番街から突如として現れた獣人に対する当然の疑問だろう。
「そいつは……」
「──オレが呼んだのさ。
8番の召喚術の要領で、暗黒の運河経由で10番街から直接呼び出した。他に何か質問はあるかな? お嬢さん」
代わりに答えたオレを見たレアは肩を竦める。
その答えでギリナスに対する興味を失ったのか、破損した剣を眺めて小さく嘆息している。
「それで、神様よ、次の依頼は?」
「陽神美唯子を探せ。特徴は以前に伝えたな?
美唯子は特殊な能力を使う。恐らく世界改変レベルの強烈な暗示か催眠。用心しろ、普通の女ではない」
ギリナスは小さく頷くと闇の中に消えた。
「剣、壊れた」
言いながら剣の柄部分を投げ捨てるレア。
最強の勇者といえど、手にしていたのは鋼製の剣。
当然、剣の硬度以上のモノを斬り裂くことは出来ない。
「……ゴリラは木の枝を持っているだけでも強いが、確かにこの先の戦いに向けて強力な武器は必要不可欠だな」
「誰がゴリラよ。蹴られたいの?」
「比喩だ。それだけキミが強いということだよ。
よし、オレが宇宙最強の剣をプレゼントしてやろう」
「宇宙……最強? 何でも斬れる魔法の剣なんて存在しないのよ」
言いながらレアは眉を顰める。
確かに常識の範疇でならそうであろう。
だがオレは神だ。そんなものは度外視できる。
「いいや、出来る。今、思い出したんだ。
黒刀を作り、刹那に手渡したのもオレらしい。
宇宙に散らばる真理の坐、此処に集いて造を為せ」
暗黒物質。
宇宙を構成する因子。
全てに存在し全てを司るモノ。
それを一点に濃圧縮し型を作る。
生まれるは無数の虹彩を放つ至高の剣。
「受け取れ、勇者よ。なんてな」
「…………ナニよ、コレ──」
剣を手にした瞬間、レアは目を見開く。
異質さ、異様さ、強さ、美しさ、全てが混在する神秘の剣に圧倒されているようだった。
「……凄い力を感じる。こんな剣は見たことがない。
これ……振ったらどうなるの?」
「──使えばわかる。宇宙最強は伊達ではない。
上手い具合に敵さんも現れたようだしな」
刀を肩に担ぎ、こちらを見据える大柄な男が一人。
「ッハ! 随分と派手に暴れているようだな、侵入者さんよ。ここで死ねや!」
新人類、鬼神、第六天魔王、國裂信長。
相手にとって不足はない。
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