恋した女は強いのよ。無敵装甲クソカテエvs召喚獣ギリナス。
「オーオーオーオー! 敵地でイチャついてまぁ!」
「異常に強い侵入者だと聞いたけど、子供と男性一人だけだね。拍子抜けだな……」
「丁度いい! 俺ちんの無敵装甲を試すチャンスですな!」
オレ達の前に現れたのは三人組の新人類。
大柄な男は國裂剣信。日本で有数の剣の使い手。
残りの男二人は記憶にないが、全身から溢れる程の闘気を見るに相当な手練れであるのは間違いないだろう。
「イギッ!? ぎびゃあああああああ!??」
などと考えていると廊下に絶叫が響き渡る。
レアが三人組のうち一人を瞬殺したのだ。
神速の早業で男を切り捨てたレアは剣信に剣を向ける。
「まずは一人。次はあんたが死んでみる?」
「やれやれ、威勢のいい子供だな。負けるのはキミだよ」
「ふーん? 笑わせんな。──終の螺旋【零愛】」
「……っ!? この技は……ぐ……あ──」
我が目を疑う光景だった。
レアが終の螺旋を放ち、剣信に抵抗すらさせず世界から完全に消し去ったのだ。
「レア、終の螺旋を……どうして」
「別に? あんたのを見て覚えただけよ。
私、決めたから。私があんたを本物の神にしてあげる」
終の螺旋は見て覚えられるような技ではない。
1番が生み出した究極の攻撃手段なのだから。
宇宙中を探しても扱える者はほんの一握りしかいない。それを簡単に習得するというのはレアが天才という言葉では表せない程の戦闘センスを持っているということだ。
「もうキミはオレより強いのかもな」
「恋した女は強いのよ。それに最強は私とあんただから」
「黙って聞いていれば笑わせてくれますな!
最強とは俺ちんの無敵装甲を指す言葉であります!」
残り一人となった新人類が高笑いしている。
終の螺旋を見ても逃げ出さないからには、無敵装甲というモノにかなりの自信があるのだろう。
「それでは行きますぞ、行きますかな!
出ろぉぉぉ! 究極鉄守装甲機神!!!」
声を張りながら男が指をパチンと鳴らす。
すると地響きと共に大地を割って巨大なロボットが出現した。男の身体はロボットの胸部から照射された光に包まれ、コクピットの内部へと吸い込まれていく。
『どうだ! 見たまえ! これが力だ! パワァッ!』
ロボの頭部にあるスピーカーから男の声が響く。
「鬱陶しい……」
レアが呟きロボに斬りかかる。
勇者の剣はロボの装甲部分に触れた途端に砕け散った。
確かにクソ硬えと言いたくなるような装甲だ。
「──終の螺旋【零式】」
「──終の螺旋【零愛】」
『ヌフ! 小賢しいですぞ! KKフィールド展開んぬ!』
終の螺旋による多重攻撃もワケの分からない防壁に軌道を逸らされてしまう。確かに防御面に関しては完璧だ。
「ふーん。今までの中ではマシな方ね。どうする?」
「任せろ。オレに考えがある」
いくら堅い装甲に守られていても中身はただの人間モドキ。だとしたら幾らでも対処の方法はある。
エニグマを相手にする程の絶望感はない。
『どうですかな? 降参ですかな? ぬふ、ヌファ!』
「降参? しないさ。オレにも取って置きがあるんだ」
『ほぅ? 面白いですな! 愉快すぎてハラワタ捻れてぽんぽんペインですぞ! 何をしようと我がクソカテエは無敵! ほれ、倒してみろ! ホレィ!!』
ロボットはクソカテエだがパイロットはクソウゼエだな。
「よし分かった。オレの切り札、召喚獣!
──出よ! ギリナス! なんてな……」
男を真似て指を鳴らす。
すると数秒後には天から獣の咆哮が轟く。
「──血塗られた手に握る物ウゥゥ!!」
ギリナスが放った呪詛の光閃が廊下を駆ける。
禍々しい光の渦がロボットの中へと吸い込まれていき。
『ヌッ!? なんですかなコレは! ──グフォア!』
強固な装甲を擦り抜け、パイロットの心臓を直接、抉りとった。
「どうだ! 見たかよ! これが俺様の実力よ!!」
新人類の心臓を手にしたギリナスは満面の笑みを浮かべる。今まで碌に活躍出来なかった鬱憤を晴らせてご満悦の様子だ。
「よくやった。本当は強いんだな、ギリナス」
「これでようやくカマセから昇格ね、犬っころ!」
「タリメーだ! 俺はなぁ、強いんだよ!!
神や代行者が相手でなければ俺は強い! 強いんだぁ!!」
「ああ。今回はお前がいなければ勝てなかっただろう。
これからもよろしく頼むぞ」
「私はあんたには全く期待していないけどね」
「お、おう! 任せとけ!」
オレとレアが微笑みかけるとギリナスも子供のように笑った。
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