女勇者が強すぎてなんかもう色々全てが解決しそう。
さすがに勇者の行動力。
代行者を退け、オレ達を10番街へと送り届けた後、オレとレアは一息ついていた。
オレ自身の離叛、黒幕の策謀、前途多難だ。
沈思黙考。世界のため、神としてどう動くかを考える。
「あんたさ〜、色々深く考えすぎ」
レアは呆れたように呟きながら、オレの隣に腰掛けた。
初対面の時からサバサバしているとは感じていたが、神に対してここまでズケズケとモノを言えるとは、面の皮で防弾チョッキが作れるかも知れない。
「ほら、それよ! 眉間に皺寄せて小難しく考えるな!
どうせまた難しい言葉を並べて悦に入ってるんでしょ!
今から私の指示通りに動くのよ、一瞬で事件は解決!
あんたは私を信じればいいの! い〜い?」
少女に従うだけで事件が解決するならば苦労はない。
だが少女勇者があまりに自信満々に断言するので、子供の遊びに付き合ってみるのも悪くはないかとも考え始めている。
オレが無言で首肯するとレアはニンマリと微笑んだ。
「あは! それでいいのよ!
だったら早速、暗黒の運河? だっけ。出して」
まるで便利なネコ型ロボットにでも頼むような口振だ。
オレは言われるがままに空間を引き裂き、時空、次元を超越できる異空間への扉を開く。
「……話を聞いた感じ、陽神美唯子が怪しいわね。
それじゃ、新人類の拠点にレッツゴー!」
底抜けに明るいレアの声音が、どこまでも世界に響いていく。
◇ ◇ ◇ ◇
第三惑星、新人類、軍事拠点。
レアは大地を踏み締めると同時に猛烈な勢いで駆け出し、巨大な鉄の門扉を蹴り飛ばして安易と侵入を果たす。
「なっ──ん、だぁ!? 侵入者か!?
面白ぇ、喧嘩上等! 夜叉仁義!
お前ら、ここがドコだか……」
「うっさい! キモイんだよ! クタバレ!」
レアは容赦なく仁義の股間を蹴り上げ、右頬にストレートパンチを炸裂させる。
「──グヘァ? テメッ、はぶすっ!」
「ざーこ❤︎ 喧嘩上等? あはは! あんたは下等ね!」
既視感だ。
哀れ、抵抗する間もなく大地に倒れた仁義に唾を吐きかけてレアは軍事施設の中に突き進んでいく。
げに恐ろしきは少女勇者の行動力と胆力。
「待ちなよ! ここから先には行かせない。
何を隠そう、僕は頭の中の出来事を現実に引き起こせる事ができるのさ、さぁ、行け! 僕の兵士達!」
軍服を着た男性が能力を展開すると、男の背後から魑魅魍魎、大小様々な魔物の群れが出現する。
「──ふーん? それで?」
剣閃一閃。
言い終える頃には既にレアは魔物の群れを一掃していた。
「そ、そんな……こんな小さな女の子が、化け物か!?」
「能力を説明する奴は雑魚。対策されるでしょ?」
狼狽する暇も与えない。
一瞬の跳躍で距離を詰めたレアは男性を両断する。
「ハッハァ〜ん? 殺したと思った?
僕は自分が不死身だと思っているから死なないのよ!」
捌かれた魚のようになった男が床の上に倒れたまま口をパクパクと動かし、半目を向けてくる。
滑稽というべきか、珍妙というべきか。
「……うわ、キモいんですけど……ほら、あんたの技」
「あ? あぁ。──終の螺旋【零式】」
「んふぇ? 暖かくて気持ちィー!!
てか僕、不死身なんですけどぉぉぉ?」
不死だろうと関係なしに消し去れる光の螺旋に包まれた男性は肉片一つ残さずに完全消滅した。
あっという間に新人類二人を討伐。
それでも少女は満足しないのか歩みを止めない。
「容赦ないな。少しは憐れみとか、慈しみをだな……」
「敵を哀れんでどうするのよ。時間の無駄。
陽神美唯子って、聞いただけでもとんでもない女ね。
私が殺してあげるから」
「どうしてそこまでしてくれる。義理はないだろ」
「……言ったでしょ。私はあんたが気に入ったって。
変な女よね。あんたの力になりたいってずっと考えてる。重く感じたら、いつでも切ってくれていいから」
言いながら自嘲気味に微笑むレアの笑顔が、ただ眩しかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。