オレが暗躍。二週目をぶち壊しますか。
とりあえず何から始めるべきだろうか。
もう既に取り返しのつかないレベルで世界は壊れている気がする。全てがオレの選択ミスなのだろうか?
──冗談じゃない!
何が起きるかわからない人生で選択肢を完璧に当て続けるなんて不可能だ。
だとしたら最初からやり直すしかない。
今までのオレは誰かに操られて人生を歩まされていた。
ならば敢えて全てをめちゃくちゃにしてやる。
そして自分にとって最良の答えにすればいい。
なんだか楽しくなってきた。
「なぁ、唯。1番になったのなら、なんでもできるのか?」
「うん。レオの願いならどんなことでも叶えてあげるよ」
「よし、じゃあ過去に行こう。4月4日だ。
オレは二週目をぶち壊す。徹底的にな!」
◇ ◇ ◇ ◇
4月4日。運命の日。
美唯子に見せられていた偽りの過去ではない。
1番となった唯の力で、あの時と寸分違わぬ時間軸に舞い戻ってきた。
「オレってなんのために生きてるんだろ」
一人っきりの自宅、情けない顔で過去のオレが嘆いている。
確かこの後にアレスティラが現れるんだっけ。
「大丈夫だよ……。もう少ししたら私と出会うからね」
「唯、静かに! オレに気づかれるから!」
唯の口を手で塞ぐ。
まずはアレスティラを懐柔するか。
エニグマだから暗黒の運河を通ってくるはず。
「ごめんなさい……。まずは何をするの?」
反省したのか、コソコソと唯が耳元で囁く。
心なしか、彼女も状況を楽しんでいるように感じる。
「暗黒の運河でアレスティラを待ち伏せする。
暗くて怖いけど、我慢できるか?」
「平気だよ。試しにアレスティラを消してみる?」
「いや……。ん? それだとどうなるんだ?
とりあえずは話してみてから考える」
空間を引き裂き、暗黒の運河に飛び込む。
唯に使用を禁じられていたため、懐かしい感覚に陥る。
『だれかぁッ! 助けてくれよ!!』
外の世界でオレが発狂している。
自宅で一人喚き散らしているなんて完全に異常者だ。
そろそろ5番がやってくる。
「……レオ! 来た! アレスティラ!」
闇をも照らす美しい金髪、紅色の瞳、端正な顔立ちのアレスティラ。彼女に会うのも久しぶりだ。
「よう。待っていたよ、アレスティラ」
「──えっ!? どうしてですか!? ええぇっ!?」
真紅の瞳を揺らしながらアレスティラは激しく狼狽している。
さて、どうしたものか。唯の言葉通りに消してみるのも一興。だができる限り同胞には手を出さない方がいいだろう。
「アレ、オレがわかるか? オレに会いに行くんだよな?
一体誰の命令だ?」
「……ワタシの意思ですけど? アナタを愛しているので」
恐らくは嘘だろう。
彼女は何者かの指示によって動いている。
だが付け入る隙はある。オレへの好意は間違いのない事実だろうから、そこをうまく攻めてやればいい。
「ならばオレに従ってくれ、いいな?
今のオレは2番で、キミを消すこともできる。
そんなことはしたくない。だからキミを手に入れる。
今日からキミは5番で、オレの物だ。
教えてくれ、3番と15番は今どこにいる?」
「──空の空間で待機しています。
あの、ワタシはアナタに従います。
ですがアナタはワタシを愛してくれますか?」
隣にいる唯の身体がピクリと動く。
見るまでもなく怒っている。
だがここは我慢してもらうしかない。
「ああ、当然だ。オレは世界の全てを変えてしまいたい。
キミの力が必要だ。オレには適当に言って契約はするな。
地球は隔離せずに……そうだな、オレが預かっておこうかな。1時間後にこの場所で再会しよう」
「承知しました。必ずやアナタのお役に立ってみせます」
アレスティラは恭しく礼をして、オレに会いに行った。
すぐにでも3番と15番に会いに行きたいが、まずは唯に弁明しなければならない。
「ふーん。アレスティラも愛しちゃうんだ?」
ほら来た。やはりご立腹だ。
「違う、わかっているだろ? オレが大切なのは唯だけだ」
「……知ってるよ。心を覗かなくてもレオのことは全てわかるから。地球は私が隠しておくね? それでいいんだよね?」
話さなくても心が通じる。やはり1番の力は本物だ。
次は6番に会いに行くべきか。
いや、今の段階ではソレなんだっけか。
とりあえずはやれることは全てやってやる。
暗躍するのって楽しいな。
これは癖になりそうだ。
今ならオレを利用していた連中の気持ちが少しはわかる。
しかし、このまま過去の筋書き通りに動いていたら意味がない。何か大きく状況を変える必要がある。
だとしたら、次に向かうべき場所は……。
最後まで読んでいただきありがとうございました。