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究極生命体リイドラア。これ以上はない幸せな結末。

異世界地球探索編


「……っなん、だ……コイツは……」


 かすれた声で呟くと鉄仮面は大地に倒れた。


「ムワァハァハァハァハァ!

 エニグマ共が、今こそ積年の恨みを晴らす時!

 殺せ! リイドラア!!」


「ウォ、オオオオオオオオォッ!!」


 何が起きたのか判断がつかない。

 閃光が炸裂したとでも言うべきか。

 左肩が吹き飛び、腹部に痛烈な痛みが走った。

 右腕は捻じ曲がり、全身のいたるところから出血している。


 人間も動物も、全ての生命が死んでいく。

 その圧倒的な力の前には抵抗など無意味だった。

 

「……つまらん。

 復讐も果たしてみればこれだけのことか。

 もういい、終わらせてしまえ、リイドラア」


 群青色の光が世界を包んでいく。

 視界が狭まり、意識が遠のく。

 光が消え、世界が黒へと染まる。

 そしてあまりにもあっけなく、地球は消滅した。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ──鳥のさえずりが聞こえる。


 オレは生きているのか。

 覚醒途中の意識に喝を入れ、急いで体を起こす。

 周囲をゆっくりと見渡す。

 どこかの室内、家の中。

 カーテンから漏れる光が眩しい。

 日めくりのカレンダーを見ると、今日が4月4日であることを示していた。


 タイムリープしたのか、それとも死後の世界か。

 ズキンと頭に衝撃一つ。

 世界が滅んだということは唯も……死ん、だ?

 

「……唯っ!?」

「どうしたの? レオ」


 チョイチョイと袖を引かれた。

 隣を見ると一緒のベッドで寝ていたらしい唯が寝ぼけ眼を擦っている。


「何がどうなっている……。唯、覚えているか?」


「……うん。

 確か3番に故郷の惑星を破壊されたってお爺さんが、エニグマに復讐するために究極の生命体を創り出したとか言ってたよね」


 段々と記憶が蘇ってくる。

 そうだ、間違いない。

 ドクターミラカウサと名乗ったジジイが連れてきた異星人戦士、エニグマキラー、究極生命体リイドラア。

 奴は鉄仮面が放った(ツイ)の螺旋を()()()

 その後オレ達はなす術もなく全てを破壊されたハズだ。


「でも、生きてるよな?」

「ね! それに一緒に暮らしてるみたいだし、私達は夫婦?」


 そうだとしたら嬉しいかも知れない。

 待てよ、ここが地球で平和そのもので、唯と二人で幸せに暮らしていけるなら、完全にハッピーエンドだよな。


「そうだ、オレには仕事があるんだ!

 遅刻したらマズい、朝飯を食べて着替えて……」

 

 慌ててベッドから出ようとすると、唯に腕を引かれる。


「レオは働く必要ないよ、お金ならあるし」


 唯はニンマリと微笑み、ポーチから預金通帳を取り出す。

 今までの人生で見たことがないほどに数字が並んでいる。

 そのカンスト通帳が何冊もある。

 これなら地球ごと買えるかも知れない。

 

「と、いうことは?」

「ずっと二人で一緒にいよう?」

「唯はそれでいいのか? オレと二人、ふ、夫婦として……?」

「レオは嫌? 私としてはこれ以上ないくらい幸せな結末だけど」


 嫌なわけがない。何の文句もない。

 本当に完璧なハッピーエンドだ。

 やったぜ! と言いたいところだが、こんな出来すぎた話があるわけがない。


「一応、外の世界も確認してみよう。何もかも完璧なんて有り得ない」

「……そうだね。人類が絶滅してるとか、全く別の次元の違う惑星に飛ばされているとか、アニメでもよくあるから」


 唯と二人で家を出る。

 春の日差しが世界を優しく照らしている。

 閑静な住宅街、振り返って我が家を見る。

 庭付きの一戸建て。

 庭にはプールもあるし、もふもふの大型犬までいる。

 人生の勝ち組が住むような家だ。


「すごいな、夢みたいだ」

「そうでもないかも……」


 唯の視線の先にいるのは陽神美唯子だった。

 美唯子は割烹着を着て、箒を手に道路を掃除している。

 

「あっ! おはようございまぁす! 今日もいいお天気ですねぇ!」


 オレ達に気がついた美唯子は朝っぱらから甘ったるい声で語りかけてくる。


「なぁ、本当に()()()()()()()?」


「んー? でもどうしようもなくないですかー?

 少なくとも私的には幸せな結末だと思いますけどぉ?」


 1番と繋がっている美唯子なら、この状況をなんとかできるかも知れないが、本人が幸せを享受しているのか、行動を起こすつもりはないらしい。


「──ミコ、行ってくるよ。貧乏暇なしだからな」

「あ、ハーイ! 美味しい晩ご飯を用意しておきますから!」


 向かいの家の玄関を開けてスーツ姿の鉄仮面が現れた。

 いや、おかしいだろ。仮面をつけて社会生活してるのかよ。


「鉄仮面、本気か? 何もおかしいとは思わないのかよ」


「本気? あぁ、本気だよ。金がなきゃ生活できないだろ。

 あいにくウチは家計が苦しいんでね。完全に社会の歯車さ。

 お前はいい嫁さんを貰ったな。だが男は働いてナンボだぞ。

 でもまぁ、オレは美唯子と暮らせて幸せだ。文句はないよ」


 鉄仮面は皮肉を残し、車で会社へと通勤していった。

 

「美唯子、1番はなんだって?」


「あ〜。それがさっきから応答がなくてぇ……。

 ここはもしかして1番がいない世界線?

 とりあえずは時が経つのを待つしかないですかねぇ。

 それでは、私は家事があるので失礼しまーす!」


 美唯子は自宅の中へと入っていった。

 本当に特に何もないらしい。


「唯、どうしようか」

「とりあえず、お出かけしてみる?」

「外出しても平気か?」

「10番街にいたときも仕事で外には出ていたし、レオがいてくれるのなら私は大丈夫」


 本来の正しい地球かどうかもわからない世界を探索する。

 不安はあるが、内心は期待している。

 未知の世界に挑戦するワクワクと高揚感に胸が包まれている。


 今のこの地球はオレ達にとって、まるで異世界だ。

 この先に何が待ち受けているのか楽しみで仕方がない。


「よし、じゃあまずは都心に向かおうか?」

「うん、行こう」


 ガレージに置いてあるバイクに跨りエンジンに火を入れる。

 やる事は決まっている。

 この世界の謎を解き明かし、リイドラアにリベンジだ。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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