真相の真相。オレと美唯子とオレと唯。
「全て上手くいったな美唯子。よく頑張った」
「ペル様こそ迫真の演技でした。私は貴方を愛していますから」
「それで? 1番はなんだって」
「順調に進んでいます。何もかも計画通りです」
「世界は運命によって決まる。最後に勝つのはオレ達か」
「ええ。絶対に変わらないからこそ運命ですから」
「おいで、ミコ」
「ペル様……」
◇ ◇ ◇ ◇
目が覚めると午後2時を過ぎていた。
最近はなんやかんやで忙しすぎたこともあり慢性睡眠不足だ。
「レオおはよ〜」
「ああ、おはよう」
唯も夜遅くまで起きていているため、起床時間が被る。
寝起きでもやはり美少女は可愛いものだ。
愛生も多忙なため昼食はオレが作る。
唯に任せるとお菓子のフルコースを並べられてしまうので、オレがやるしかない。
トースターから香ばしい匂いが漂ってきた頃、紅茶の準備もできたので、二人して遅めの食事を始める。
「レオナルドと戦うとレオが死んじゃう? ならやめる?」
「いや、いつかはやらないといけない。今考えてる」
「私達が倒してレオは隠れてるとか?」
「いや、多分、戦闘に参加するだけでも死ぬ。それが運命らしい」
「むぅ。なぞなぞ? 難しいね。むー」
唯がぷぅと頬を膨らせる。
最近ではどんな話でも気軽に話せる仲になった。
愛生は夫婦のようだと毎日はしゃいでいるが、別に何も変わってはいない。少しだけオレが唯に歩み寄っただけのこと。
「……シャワー浴びてこようかな」
「一緒に入る?」
「無理だ、新調した心臓が破裂して死んじゃうよ」
冗談も言い合える仲になった。冗談だよな?
風呂に入って唯が買ってくれた服に着替える。
家賃も生活費も、その他全てが唯持ちで、悪いからと一部負担することも提案したが、お金は一切受け取ってくれない。
もはや完全にヒモになってしまった。
唯はソファに座ってテレビを見ながらお菓子を食べている。
その姿は小動物のようで愛らしい。
昼食を食べてすぐにお菓子を食べるのはいただけないが。
オレの姿を確認すると、ソファを手でぽんぽんと叩き、隣に座るように促してくる。
黙って従うと唯は嬉しそうに微笑んだ。
「寝室、一緒にする?」
「冗談とかじゃなくて?」
「指輪、くれた」
「あげたけど、嘘の結婚なんだよな?」
「私は本気だったのに……」
冗談を言うときのトーンではない。
心臓が高鳴り、恥ずかしさで眩暈がする。
「唯と一緒に寝……る? 毎日ずっと?」
「嫌? それとも他に好きな人がいる?」
「嫌じゃないし、唯以外の女性に会ってもない。毎日一緒だろ」
「じゃあ、そろそろ先に進もう?」
唯とは四六時中一緒にいる。他の人間が付け入る隙はない。
多分、オレ達の関係は誰がどう見ても恋人同士。
今まではただなんとなく好きあっているとは認識していたが、唯がその先まで望んでいたことは読みきれなかった。
唯が肩に頭を乗せてくる。
甘い匂いが鼻まで届く。
男として決断しなければならない。
こんな時、普段なら無遠慮に愛生が帰ってくるのだが、本当に来て欲しいときに限って空気を読む。
「唯さ、本気だよな? いや、疑ってるんじゃなくて、オレでいいのかなって確認も含めてなんだけど」
「……私にはレオしかいないもん。多分一生引きこもりだし、他の男性にも興味がないし、全てが終わったらレオとホントの結婚もしたいと思ってるよ」
唯の表情は真剣だ。
大きくて綺麗な瞳にはオレの姿しか映っていない。
サラの時も美唯子の時も作られた偽りの感情だったのだとしたら、今ときめいている胸の鼓動は本物だろうか。
「オレも唯が大切だからさ、す、進もうか、二人で……?」
「うん。だって私達、夫婦だから」
そっと軽く唇を交わして、悪戯っぽく唯が微笑む。
胸中に熱いものが込み上がってくる。
「ただいまー! 愛生さんですよー!!」
計ったかのようなタイミングで愛生が帰ってきた。
もしかして見られていた? 今に始まったことではないか。
「ふぅ……疲れました。えっと業務連絡が一つ。
陽神美唯子が城から消えました。やはり敵側でしたね」
着替えをしながら愛生はしれっと言い放った。
「は? 今なんかサラッとすごいことを……」
思わずソファから立ち上がる。
愛生は振り返りもせずに言葉を続ける。
「10番さんの考察によると、状況証拠的にも美唯子は鉄仮面と繋がっている可能性が高い。
現在は同関係者のスノーリキッドを取り調べ中。
雇われていただけなので情報を得られる期待値は薄い。
自体は混迷を極め、レオナルドに手が出しづらくなりました」
美唯子の発言によると月光院輝夜こそがレオナルドである言い、次の発言ではレオナルドではないと言っていた。
最初からオレ達を惑わすためだけの証言か。
それともまた別に何か意図があるのか。
やはりオレはアマちゃんだ。考えが甘かった。
疑いもせずに美唯子を野放しにしたオレが全て悪い。
いや、まだ終わってはいない。
神代永斗もレオナルドと繋がっていた。
調べれば何かわかるかもしれない。
「愛生、今から神の居城に戻るぞ。
8番に尋問する。唯もついて来てくれ」
「うん。一緒に行くよ」
「そうくるだろうと思って準備していました!
神代永斗を待たせています、今すぐに向かいましょう!」
最初から10番の完全同調で美唯子の心を探らせれば良かった。
9番の問題なし発言で油断していた。
そうなると9番も敵と内通している可能性が高い。
同胞の中にも裏切り者が紛れている。
そういえば9番は神代永斗と友好関係にあると言っていた。
レオナルドと繋がっている8番、そこに繋がりを持つ9番。
少し考えればわかることだ。
鉄仮面と美唯子の関係も少し考えれば気付けたかも知れない。
鉄仮面はオレかも知れないと一時期考えていたからだ。
だとしたら美唯子の運命の人がオレ=鉄仮面ということで説明がつく。
鉄仮面と美唯子、2番と唯。
なるほど運命か、面白い。
死に直面してネガティブになっていたが俄然やる気が出た。
どちらのオレが正義か決着をつけよう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。