美唯子を問い詰める。運命の真相。
10番に呼び出され星の中枢に赴く。
玉座の間に辿り着くと同胞達が勢揃いしていた。
重い空気だ。少なくとも熱烈歓迎ムードではない。
「呼び出された理由はわかっている。
オレの最近の行動を見て不審に思ったんだろ?」
「そうだね。キミは何もかもを一人で抱え込みすぎだ。
キミの仲間は非常に優秀だよ。
キミの些細な異変を瞬時に察知し、勇気付けたよね?
もっと仲間を信用しなよ。ほら、全てを話して?」
その気になれば完全同調で心を覗けるのに敢えてしない。
それはオレを心から信頼しているという証。
10番には敵わない。
「月光院輝夜がレオナルドに力を注がれる過程をオレは全て見ていた。つまり、最初から動いていれば止められる可能性があった。
今回の騒動は全てオレに責任がある。
輝夜が死ぬような事があれば、オレの命を与えようと考えた」
レオナルドになってしまった輝夜を救うには一度人格を殺してオレの生命力と引き換えに生まれ変わらせるしかないと思った。
要するに勝っても負けてもオレは死ぬ運命にあると考えたから話さなかった。だがとうとう白状してしまった。
「ありがとう。キミの勇気ある告白を同胞として誇りに思う。
この場にいる全員がキミに死んでほしくないと考えている。
だから我々も全力を尽くした。キミの不安を全て解消してあげよう」
10番の合図で玉座に美唯子が現れる。
不安を解消するとは一体何を始めるのだろうか。
「美唯子くん? 何か言うべき事があるよね?」
「今回の騒ぎは最初からペル様を殺すための陰謀。
力を継いではいますがヒカリはレオナルドではない。
ですが月面都市にレオナルドは存在している。
ペル様の運命の人は私ではなく別の誰か。
これで満足ですか? 化け物共……」
整列していたエニグマ達の中から一つの影が飛び出した。
「ああ? テメェ、何言ってんだよ!?
意味わかんねーよ、もっとわかりやすく説明しろよ、アアッ?」
美唯子の首を両手で締め上げているのは12番だ。
二人は友人関係であった。化け物呼ばわりされて腹が立ったのだろうか。
「……く、グッ……極致模倣、貴女に人を責める権利はないでしょ……散々他人を欺いておいて……手を離せ……薄汚い化け物が」
「やめろ、死んでしまうだろ」
「オイ! これでアンタが利用されたのが確定したな! 悔しくないのかよ、腹が立たないのかよ、スッパリと殺してやろうぜ」
激昂する水をなんとか宥めて美唯子に向き直る。
「大丈夫か、落ち着いて話せばいいから」
「……やはりアナタはアマちゃんですね。
私が本当に運命の人になりたかった……ペル様……」
「美唯子、オレは怒っていない。正直に話してくれ」
「私は最初からルナティクルに操られていたようです。
暗示をかけられて、思うままに利用されて、そして駒のように捨てられた。全てはレオナルドの書いたシナリオ通り」
喉を強く締められたせいで掠れた声を絞り出すようにして話す美唯子。痛ましくて見ていられないし、嘘をついているようには思えない。
だとしたら美唯子に罪はないし許してやりたい。
そう考えるのはやはり、アマちゃんなのだろうか。
「運命の人が美唯子ではないというのは?」
「ハッキリとはわかりません。私は1番の声なんて聞けませんし。
レオナルドが言っていたのは本来ペル様と結ばれるはずの人物を殺せば運命が収束し、変動を起こし、別の対象に入れ替わると。
結果的にキミが運命の人になるのだよと言われました」
1番の声が聞こえる予言の能力自体が仕組まれていた。
美唯子はレオナルドとルナティクルの指示を受けていただけ。
もしくは常に遠隔から操られていたという事だろう。
「よく話してくれたな。やはり悪いのはレオナルドだ。
美唯子、全てを許すよ。キミは悪くない。
オレの仲間になってくれるよな?」
「今まで通り、ペル様と呼んで甘えてもいいですか?
私が運命の人でなくても、アナタを好きでいていいですか」
オレが視線を向けると10番は無言で頷いた。
同胞の了承もあるし、許してやるべきだろう。
利用されていたという事も含めて、オレと境遇が似ている。
これ以上は憎む気にもなれない。
「でも一応、確認だけはしておくべきだよね。9番」
「はーい! 精神波長もオール平常!
今は間違いなく誰にも利用されていませーん!」
アリシアに指示されたノノが美唯子の額に手を当てて、異常がないかを確認する。
やはり現時点は問題なく、ありのままの美唯子という解釈で問題なさそうだ。
「大変だったな。いつ頃から操られていたかわかるか?」
「ペル様のビデオを見て一目惚れしてから、ヒカリが脱走するくらいの間だと思います。私の本当の能力は未来予知、結構当たりますよ」
「オイ!」
問題児が美唯子を睨みつけている。
水が友達だと思っていた美唯子はルナティクルということになるのだろうか。色々とややこしい話だ。
「さっきはごめんなさい。
レオナルドからエニグマは敵だと教育された名残です」
「……アタイも悪かったよ。首絞めてごめんな」
水と美唯子も和解したようだし、やはり平和的に解決するのが一番だと思う。
「あっ! ということはですよ?
2番さんはスピラノンノと結ばれても全く問題ないってことですよねー??」
やたらにでかい声を聞いただけでわかる。
愛生だ。同胞が一堂に会する場で叫んでも恥ずかしくないのだろうか。少なくともオレは恥ずかしい。
「あ、ペル様。予言です。予言が来ました!」
オレの腕を引きながら美唯子が言う。
彼女本来の能力を見るのは始めてだ。
どんな予言が飛び出すのかワクワク感がある。
「……やはり、レオナルドとは戦ってはいけません。
戦闘した場合、確実にペル様は死んでしまいます」
オレが見た光景の裏付けが取れた。
レオナルドと戦うとオレは必ず死んでしまうらしい。
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