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罪滅ぼし。月滅ぼし。


 状況確認。

 美唯子はやはり何も話さずオレを見つめている。

 キッドは机の上に座り、つまらなそうに自身の爪を眺めていた。


 まずはどうするべきか。 

 やはり今までの疑問を解消するところから始めるべきだろう。

 美唯子がオレを利用したのは事実だとして、それが本人の意思なのか、他者からの強要によるものなのかでまた話が違ってくる。


 前者の場合、やはり適切な距離を取るべきだろう。

 後者の場合は……まずは先に聞いてみる。


「美唯子、もうこの際だ、全て話してくれ。

 何があったのか、何が目的だったのか、曖昧はダメだ。

 これからの信頼関係にも繋がるから、そのつもりでな」


「……あの日、私はレオナルドの使い、いえ、レオナルド()()に遭遇しました。この世界でペル様と私が結ばれるのは運命で決まっている。

 しかしそれでは都合が悪い。結ばれては困る理由がある。

 ペル様の心を出来るだけ強く踏み躙って10番街を離れなさい。

 さもなければ星ごと爆破する。そう言われました」


 美唯子は脅迫されていた。その犯人はレオナルド・オムニ・エンド。能力で精神を操り、関係を持ったところで全てを覆し、オレのもとを去る。


 確かに効いた。完膚なきまでに心を叩きのめされた。


 だがこれで今までの一連の流れに全て納得がいく。

 全ては美唯子とオレを引き離すための策略。

 美唯子自身にオレとの別れを告げさせ、それでも足りないのか、ご丁寧に美唯子が死んだようにルナティクルを使って偽証した。


 唯を美唯子だと思わせることで存在を抹消しようとしたのだ。

 だが鉄仮面が美唯子を救出し、オレのもとに連れ戻した。

 これは完全に計算外の事態だろう。


 叩くなら今しかない。レオナルドとの関係を終わらせる。

 オレの全ての力を使っても、奴の全てを否定してやる。

 

 しかしわからないのは、レオナルドは素零によって殺された。

 1番が作ったルールで死者は絶対に蘇らない。

 だとしたら神の居城で美唯子に指示を出したのは誰だ。


「美唯子、キミに指示を出したレオナルドはオレが知っているレオナルドじゃないんだよな? 復讐しよう、オレ達で。

 オレとミコを引き裂いた奴に今度こそ引導を渡してやろう」


 それだけで全てを悟ったのだろう。

 美唯子はコクリと頷き、レオナルドの正体を明かすために口を開く。

 

()()レオナルドは月光院輝夜(ゲッコウインヒカリ)です。

 力を望み、レオナルドから全てを受け取り、そしてとうとう人外(レオナルド)になってしまった可哀想な私の親友」


 月光院輝夜は人類のため、レオナルドを倒すために力を望み、倒すべき(レオナルド)になってしまった。

 なんて残酷な結末なのだろうか。

 救えるものなら救ってやりたい。


 精神的に支配されているだけなら鉄仮面との同調(シンクロ)で支配主を追い出した実績がある。

 問題なのは肉体的にも精神的にも完全にレオナルドになっている場合。それだと対処のしようがない。


 考えていても仕方ない。今はとにかく行動するべきだ。

 相手が月光院輝夜だというのなら、居場所はわかっている。

 月に作られた月面都市、そこに間違いなくいるはずだ。


 後は戦力。オレと美唯子とキッドにエニグマ。

 相手がレオナルドとなると使える戦力を全てを投入してもどうなるかはわからない。


 レオナルドは嘘か真か、全てのエニグマの力を使えると言っていた。だとしたら、レオナルド一人でもオレが持つ総戦力以上の力を発揮するだろう。


 他に助っ人を呼ぶとしたら一人心当たりがある。

 犯罪王傷男(スカーフェイス)。奴は月面都市を欲しがっていた。

 零の器候補だし、戦力的には申し分ないと思う。

 利害の一致という理由で協力関係になれたら心強い。


「キッド」


「……やっとヤル気になった? 復讐に皆殺し。いつでもいいよ。罪滅ぼしならぬ月滅ぼし。楽しみだね」


 さすがに暗殺者なだけあって話が早い。

 話の流れを聞いただけでオレの心情を理解したのだろう。


「ああ。ここでレオナルドを完全に終わらせる」


「いつにする? 僕は今からでも行けるけど」


「今すぐ、と言いたいところだが、やるべきことがある」


「念には念を。周到な計画は暗殺の基本。よくわかっているね」


 まずは3番、8番、14番を仲間に引き入れる。

 オレの真骨頂を遺憾なく発揮するために、絶対に必要な存在だ。


「──美唯子、1番の言葉は絶対なんだよな?」

「はい。ペル様は私の運命の人……」


 必ずレオナルド本人の口から聞き出してやる。

 オレと美唯子を引き離した理由、レオナルドの存在理由。

 今まで裏で暗躍していた全ての事実を白状させて、オレが勝つ。今度はオレが完膚なきまでに叩きのめす。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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