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豪炎現金少女・逆上紅蓮。冷血暗殺者・霧液雪将。


 ──都心部、中央高速道路。


 掲示板で得た情報を頼りに、都心部にあるショッピングモールへと向かっている。

 

 地球には地球の規律(ルール)がある。

 光速移動できる宇宙式の高性能バイクではあるが、100キロ以上の速度で走行することは許されない。


 暗黒の運河を封じた事による弊害だ。

 本来なら目的地まで瞬間的に転移することができるのだが、唯が見ていないからといって約束を破るような事は絶対にしたくなかった。暗黒の運河の使用は自粛することにした。


 風と一体となり、流れていく景色を無心で眺める。

 まるで自分が世界の一部にでもなっているかのような感覚。

 車では味わえない快感。単車(バイク)ならではの素晴らしき利点。


「──紅蓮炎弾(ネオファイアブラスト)!」

「──氷雪世界(フロストエンド)……」


 前方から炎の塊が飛んでくる。


 一瞬にして世界が凍りつき、周囲の車がスリップし衝突、後続車も次々と横転、衝突を繰り返し、爆発が巻き起こる。


 考えるまでもない、何者かに攻撃を受けている。


 幸いにもオレの単車はいかなる地形にも影響されない。

 余裕を持って炎を避け、ブレーキをかける。


「へぇ、今のコンビネーションを避けられんだな! 熱いぜ!」

「……声がうるさい。暑苦しい……」


 高校生くらいに見える男女の二人組が道路の真ん中に立ち塞がり、こちらを見据えている。


 今の力は17番(火月)18番(氷駕)の能力に酷似している。

 どういった経緯で力を継承したかは不明だが、もし同胞の力を使役しているというのなら仲間にする必要がある。


「最初からオレが目的なんだよな?

 罪もない人間を巻き込むような真似はやめろ」


「正義のための犠牲は必要。アタシはそう捉えてる。

 逆上紅蓮(サカガミグレン)。いい名前だろ?」


霧液雪将(ムエキユキマサ)。宇宙の殺し屋。

 普段はスノー・リキッドで通っている。キッドでいいよ」


 燃えるような紅蓮の闘気と、対照的なキッドの冷気。

 エニグマの力を行使しているがエニグマではない。

 戦うより前に探りを入れる必要がある。


「お前達は殺し屋で、誰かに雇われてオレを殺しに来たんだな。

 炎と氷の力に見覚えがある。どこで手に入れた?」


「殺し屋はこっちのサムイ男だけ、アタシはフリーの傭兵。

 炎の力について話す義理はない。だが宇宙最強の炎だ」


 紅蓮は隣にいるキッドを親指で指しながら冷めた目つき見据えている。最初から組んでいるわけでなく、利害が一致し、一時的に協力関係にあるようだ。


 金銭目的で動いているならば懐柔する余地はある。

 必要以上に口を開かないキッドは別として、紅蓮は扱いやすそうだし、交渉を試みる。


「紅蓮、単刀直入に聞こう。オレの命はいくらだ?」


「なんだ命乞いか? いいさ、冥土の土産に教えてあげる。

 アンタは生死不問で50万。恨むなよ、金のためだ」

  

 オレの命が50万。随分と安く見られたものだ。

 やはり紅蓮は金で動いているようだ。

 

「ならオレが雇う。仲間になってくれないか」


「……いくら出す?」


「1000万円でいいか? それ以上は出せないけどな」


「どうかよろしくお願いします、月丘レオさん。

 ご命令があればなんなりとお申し付けください」


 オレの目の前まで歩み寄り、紅蓮がペコリと頭を下げる。

 そのまま手を突き出してきたので、メットインスペースから現金を取り出して手渡すと、ニンマリとした顔で札を数え始める。


 唯から金を受け取っていてよかった。

 最初から使うつもりはなかったし、全額そのまま返そうと思っていたが、使い道ができたから使い切った。必要経費みたいなものだし、多分許してくれるだろう。


「確かに1千万円頂戴しました。

 報酬分は働くのでご安心ください、ご主人様(マイマスター)


 札束を数え終わると紅蓮はポケットに金を詰めていく。

 ポケットの中は異空間にでもなっているのか、札束はあっという間に収納された。現金だなぁ、とは紅蓮に使うべき言葉だろう。


「……安い女だ。なんて醜く、賤しいことか。

 悪いが僕は金で心は売らないよ。死んでもらうから」


 戦闘態勢をとったキッドを見据えて紅蓮が呟く。


「早速仕事。とりあえず、あの野郎をぶち殺しましょうか?」


 紅蓮の実力を測りたいので頷くと、そのまま勢いよく飛び出していった。


「ヨッシャア! 久々の大金だぜぇ! 本気でいくかんな!

 ──必中・閃き・魂・努力・幸運!!!

 アタシの炎が逆巻き猛る(さかまきたける)! 全てを溶かせと昂り荒ぶ(たかぶりすさぶ)

 穿て! 熱殺! 豪炎(ヘル)滅殺(ディザスト)灼炎腕(ブレイズエンド)ォォッ!!」


 紅蓮の腕から凄まじい炎の波動が飛び出した。

 強烈な熱波が周囲を侵し、鉄骨や横転している車が熱に耐え切れず融解していく。


 大気が捻じ曲がっている。それほどの温度の暴力だ。

 当たればひとたまりもないどころか、そばに居るだけで並の生命体なら燃え尽きてしまうだろう。

  

 ──長い。力の放出が終わる気配がない。

 

 燃費がいいのか力の加減がわかっていなのか知らないが、強制的に炎を遮断しなければ地球が消滅してしまう。


「──終の螺旋【唯我】」

 

 延々と力の放出を続けている紅蓮の手元から炎の波動を消滅させる。恐るべき威力だ、超高層ビルがいくつも消し飛んでいる。

 

 さすがにこれはまずいだろう。

 自衛隊が動き出すレベルの災害だ。

 

「紅蓮、やりすぎだ」

「少々張り切りすぎましたな。逃げます?」

「いや、オレが時を戻す」


 5番(アレスティラ)が不在で良かった。

 封印していた宇宙の時を支配する力を行使する。


  << 時空反転    << 時空反転(リバース)    << 時空反転


「……安い女だ。なんて醜く、賤しいことか。

 悪いが僕は金で心は売らないよ。死んでもらうから」


 戦闘態勢をとったキッドを見据えて紅蓮が呟く。


「早速仕事。とりあえず、あの野郎をぶち殺しましょうか?」


「いや、いい。──終の螺旋【唯我】」


 キッドの顔面スレスレを光の螺旋が過ぎ去っていく。

 当てるつもりはない。威嚇射撃だ。


「──ッ! そのチカラは……!!」


 キッドは瞬時に身を翻して跳び上がり、横転したトラックの上に立つ。


「雇い主から終の螺旋を使う者とは絶対に戦うなと、そう言われている。悪いがここは退却させてもらうよ。また会おうね。バイバイ」


 肉体を無数の雪結晶に変換し、風に乗ってキッドは姿を消した。


「お見事。そんなに強いならアタシいらなくない?

 お金は返さないけどね」


「いや、キミの力が必要なんだ。絶対に。

 しばらくは同行してもらうよ。いいかな?」


「それは勿論いいけどさ、金額分は働くつもりだし?」


「よし、それでいい。バイクで移動する。後ろに乗ってくれ」


 本来の目的を果たすため、再度ショッピングモールへと向かう。

 とりあえず紅蓮は仲間にしたが、キッドの消息も気になるところだ。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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