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自信を持ってヒモになればいい。唯専属レオプロデューサー誕生。


「なんば言いよっと?」


「だから、零の器候補とは戦わないと言った」


「はぇ〜?」


 月面での戦闘を終えて思った感想を素直に述べる。

 愛生は理解できないのか口を開けてポカンとしている。


「なんか思っていたのと違った。戦う理由がない。

 傷男もテルも話せば分かり合える気がした。

 だからオレは零の器候補を争わせようとしている()()()を叩くことにした。これなら理解できるか?」


「なるほど! それは逆転の発想! 素晴らしい!

 それなら唯さんとも争う必要がなくなりますね!」


 勝手に零の器というワケのわからない存在に仕立て上げられて、お互いの命を取り合えと言われても納得できるわけがない。

 

「だからしばらくは様子見だ。

 器候補を全員仲間にするか、犯人を探すかプランを練る。

 愛生は何か意見があるか?」


「ん〜。特にはないです。

 でもせっかくの特別休暇ですし、唯さんとノンビリしたらいかがですか? ほら、仲良くするとか、デートするとか!」


 理由はわからないが愛生は目を輝かせている。

 確かに気が休まる暇もない毎日だったし、たまには本格的に休んでみるのもいいかも知れないとは思う。


 二ヶ月後、10番街で開かれる大会に向けてのトレーニングもしたいところではあるが、どうするべきか。

 

「休むか鍛えるか……。

 バイトとかもした方がいいよな。

 何もしないのはさすがに罪悪感がある」


 唯の家に寝泊まりし、食費も生活費も全て出してもらっている。宇宙一の配信者で経済的には余裕があるといっても、朝から晩まで家でゴロゴロしていたら人としてダメになってしまう気がする。


「え? もう現段階で2番(レオ)さんは完全に主夫ですよね?

 唯さんの身辺警護とか? 身の回りのお世話もしてますし。

 超高額なバイクまで貢いでもらってますし、自信を持ってヒモになればいいじゃないですか! 誰も文句はいいませんよ!」


 愛生は笑顔でハッキリと言い切った。

 さすがに「よしわかった!」とは言えない。

 第一、恋愛関係でもないのにヒモも何もないだろう。


「でも男としての沽券に関わるというか、唯に悪いし」


「あーもう! まだるっこしいですね!

 わかりました、唯さんを呼んできますから! 

 2番さんは変なところにこだわりすぎですよ! プンプン!」


 愛生は怒った様子で部屋を出て行った。

 彼女はオレと唯の関係性に異常なまでの関心を持っている気がする。


 先程のヒモ発言もそうだし、やたら生配信に出ろと強要してくる。別にアシスタントとして配信を手伝うのは問題ないのだが、メインのコンテンツに素人がガッツリと関わるのは固定ファンが毛嫌いする傾向にあると思う。


 愛生ともそれなりに長い付き合いになってはきたが、未だに何を考えているのかわからない部分もある。

 三人で生活している以上、彼女との距離感も詰めるべきなのだろうか。


「レオ、呼んだ?」


 ソファに腰掛けて思考を巡らせていると、寝室から唯がやってくる。

 考えてみれば唯との関係性も不思議なものだ。

 カードショップで出会い、そのまま家に上がり込み、気がつけば信頼関係を築くまでになっている。


「オレさ、バイトしようと思うんだけど」


「必要ありません」


 唯は即答した。

 いつもと同じ眠そうな表情なので真意は読み取れない。


「いや、世間体とかあるし」

「私のお金で生活するのが嫌?」

「嫌ではないと言ったら変だけど、唯こそ嫌だろ。友達の生活を支えるとか普通はしないと思うけどな」

「じゃあ、友達でなければいい? 私は()()()()()()()()


 唯の発言は端的で淀みがない。

 自分の中の強い信念に突き動かされているようだ。

 これではコチラが駄々を捏ねているように感じてしまう。


「友達じゃないって……。ペットとか?」


 現状を踏まえて自嘲気味に言ってみる。


「……ばか」


 唯の妙に冷たい声が心に突き刺さるようだった。


「このバカちんが!」

「──イテッ!」


 突然背後から現れた愛生にハリセンで頭を叩かれた。

 一体どこから現れて、いつから見ていたのだろうか。


「なんだよ、紙でもそれなりに痛いぞ!」


「あんた、大概にせんね!

 今の唯さんの発言の意味がわからんと?

 完全にプロポ……いえ、自分で気がつくべきですね。

 あぁ、やっぱりもどかしカップルイイ! サイコーだぜ!

 というわけで私はまたしてもドロン! でゅふふ……」

 

 愛生は言葉通り煙のようにドロンと消えた。

 お前は忍者か! とツッコミを入れようかとも思ったが、彼女はエニグマだ、などと一人冷静に分析している。


「……わかった。じゃあとりあえずは私がレオを雇うから。

 マネージャーとプロデューサー、どっちがいい?」


 どちらがどう違うのかもわからない。

 だが合理的だ。宇宙一人気のある配信者スピラノンノとしての顔を持つ唯はアイドルのような仕事もしている。


 今日もこの後、雑誌の取材等、仕事があると言っていた。

 マネージャーが何をするかもわからないが、唯に雇われる形となるなら真っ当に働いている事にもなるし、ボディーガードもできるし、一石二鳥だ。


「やります! 是非雇ってください!」


 雇用主には敬語を使うのが礼儀だろう。


「うん。いいよ。ちゃんと私を守ってね? レオP(プロデューサー)


 オレの両手を握りながら、唯は優しい微笑みを見せた。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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