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10番は生きている。私の何よりも大切な人。


 零の器とか世界の平和とか正直どうでもいい。

 そういえばオレは何で頑張ってるんだっけ。

 最初は地球に帰りたいとか、そんな感情だった気がする。


 それがいつしか自分の星ができて、守るものができて。

 恨まれて、襲われて、大切な美唯子(ひと)を奪われて。

 その全てがオレの責任。オレが選んだ道の答え。


 だとしたらオレはまだ頑張らないといけない。


「あ! おはようございまーす!」


 オレの顔を覗き込みながら愛生が言う。

 笑顔を絶やさない、美唯子のように明るい女の子だ。


「……どれくらい寝てたかな」


「一時間と少し? です。可愛いらしい寝顔でしたよ〜」


 本来なら寝顔などあまり人に見られたくない。

 だがそれを受け入れてしまう程オレは疲れているらしい。


「状況はどうなった」


「はい! 7番さんが14番(風雅)さんを連れて帰還。

 零終さんと4番さんは11番を倒して帰還しました。

 現在交戦しているのは3番と10番になります」


 14番は確か風使いのエニグマで、素零によって殺害されたのを新しく復元された。今までに面識はない。

 そして地球でしばらく行動を共にしていた11番は()()()の死を迎えたらしい。


 残るは素零とアレスティラが戦っている10番(アリシア)

 刹那とクラリスが交戦中の3番(エド)


 刹那は故郷を消した3番に自らの手で復讐したいはずだ。

 となると先に10番のもとに向かい、素零達と合流してから刹那の救援に向かうのがいいだろう。


「美唯子とサラはどうなった。治療は終わったのか」


「美唯子さんはまだ出て来ていません。

 サラさんは2番さんのお隣にいますよ〜」


 愛生が指差した先に、いつの間にか29番(サラ)が立っていた。

 オレが視線を向けると気まずそうに顔を逸らす。

 

 操られていたとはいえ、短い間でもパートナーだった。

 今の本物のサラはオレのことをどう思っているのだろうか。


「サラ……」


2番(オレ)さん! 素晴らしい出世ですね。さすが私の……。

 私、これからも貴方のおそばに居てもいいですか?

 従者として、あ、でも今は愛生さんが従者……ですよね……」


 愛生の顔を見て俯くサラ。

 サラはオレの元従者だった、大切な家族()()()

 だったは不用か。今でも大切に思っているのだから。


「従者ではなく、これからはサラとしてオレのそばにいてくれないかな」


 零奈のためにも、紫苑のためにも、そしてサラ自身のためにも、全員の幸せのためにオレが努力する。それで全て上手くいく。


「え……いいのですか? ……よろしくお願いします」


 口元に笑みを浮かべ、サラは頬をほんのり赤く染める。


「助けが遅くなってすまなかった。サラ、オレが憎くないか? 

 記憶はどうなっている。紫苑の事は覚えているのか」


「いえ、憎いなんてそんな、好き……大好きです!

 覚えていますよ、人形の記憶も頭の中に存在しますから。

 だから、一瞬でも貴方と親しい仲になれて嬉しかった。

 貴方は私の何よりも大切な人、ずっとそばにいたい……です」


 サラがオレの事を嫌ってはいないようで安堵する。

 言いたい事は言った。だがまだ伝えるべき事がある。

 誰にも聞かれたくない大事な話。世界の重要な秘密。

 オレはサラの手を再度握り、同調(シンクロ)能力を発動する。


『サラ、聞こえるか。オレもキミを大切に思っている。

 キミと過ごした時間は幸せだった。これからもよろしく頼む』


2番(オレ)さん……はい、こちらこそ。──だいすき……』


『それと、誰にも聞かれたくない話がある。いいかな?』


『はい。何でもおっしゃってください!』


『初代の10番は生きている。世間的にはオレが殺したように()()()()()。だが実際には死んでいない。星の中枢の奥地でサラを待っている。話がしたいらしい。行ってやってくれ』


『え!? 始祖の10番様がどうして?』


『オレとサラの事を本気で応援し、守ってくれていたらしい。

 詳しい事はわからないが、あの人は悪人じゃないように思う。

 ドラゴンと仁義というオレの仲間を護衛に付ける。

 監視があるようだが、上手く出し抜くことができるか?』


『……わかりました。お任せください』


 星の中枢で初代10番と対峙した時、心の中で葛藤があった。

 10番を殺せと言う声と、世界から消してはいけないという意思。今思えばオレはあの時誰かに試されていたのかもしれない。


 サラとの同調を解除する。


「それじゃあサラ、よろしく頼む」


「はい。行ってまいります! でもその前に、えい!

 一応、彼女でしたし、これくらいは許してくださいね?」


 小柄なサラは背伸びをしながら抱きついてくる。

 柔らかく落ち着く感触。クスクスと笑う可愛らしい笑顔。

 サラが戻ってきてくれた事を実感する。


「あわっ! なんと大胆な! 最近の子は進んでますね〜」

 

 慌てふためいている愛生を尻目に、サラはしばらく無言でオレに抱きついていた。


「愛生、そういえば9番(ノノ)はどうなった」


 サラが先代10番が待つ星の中枢へと向かった後、愛生に尋ねる。


「はい! 9番さんも鉄仮面さんが救出して現在治療中です。

 2番さんが寝てる間に連れて来てくれました。

 帰り際、兄弟によろしく、とおっしゃっていましたよ」


「そうか。鉄仮面には世話になりっぱなしだ。

 いつか恩返ししないとな」


 9番はオレの正体を知っている様子だった。

 零の器と何か関係がある事だろう。話を聞く必要がある。

 だがその前に最後の詰めが残っている。


「愛生、今から10番と3番にもとに向かう。最後の仕上げだ」


「はい! お共いたします! 私は2番さんに尽くすために存在しているので! どこへでもついて行きますよ!」


 現在交戦中の仲間を救えば、今回の事件は完全なる幕引きを迎えるだろう。

 10番街に連れて来た8番や14番の証言も気になる。

 

 まずは死後覚醒を果たし、オレの同調(シンクロ)能力の上位互換、完全同調(オルシンクロ)を使える10番(アリシア)からだ。素零とアレスティラが苦戦していることを考えるに生半可な覚悟では返り討ちにあうだろう。


 10番(アリシア)には道を示され、10番街を託された恩義がある。

 可能ならば敵対せずに仲間にしたいという思いもある。

 どう転ぶかは神のみぞ知る。つまりオレ次第だ。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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