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オレは絶対に許さない。神の軍勢vsオレの軍勢。


 ──終焉(テンペスト)軍事拠点・第八惑星。


 かつて8番(神代永斗)がスカーレット王国に侵攻したように、オレも仲間を引き連れて白昼堂々、8番が支配する惑星に乗り込んだ。


「よう。やっぱり来たか。美唯子ちゃんがそんなに恋しいか? ん? あの時のお前の姿、見ていたぜ、無様だったなぁ?」

 

 兵士も従者も存在しない8番だけのために建造された居城。

 玉座の間、玉座に太々しく座る神代永斗。

 蔑みの目、乾いた笑い、横柄な態度。

 その全てを軽く受け流す。相手をするのも馬鹿らしい。


「安い挑発だな。自分の首を絞めるだけだ」


「ほーん? 仲間がいるから余裕ってわけかよ。

 なら、俺様も見せてやる、神の仲間。死後覚醒の凄さをな!

 覇神乃軍勢(グリストルド)絶神邪領域(セルストリム)神世凶臨(メルドギルド)!!」


 8番が呪文を紡ぐと床に暗黒の魔法陣が刻まれる。

 神を呼び出すための儀式魔法だ。昔と何も変わっていない。

 自分の力ではなく他人任せの能力のくせに態度だけは一人前。

 

「どうだ? 俺様の神とお前のツレ、どっちが強いか比べるかよ。団体戦だ、楽しいだろ? まずは武神・阿修羅。殺ってこい」


 魔法陣から筋骨隆々の神が飛び出してくる。

 腕が複数本あり迫力があるが見掛け倒しだろう。


「……ドラゴン。任せる。五分で終わるか」


「鞠躬尽瘁。一分だ、それ以上は必要ない」


 新人類のドラゴン()はそれだけ言うと歩みを進める。

 ドラゴンと阿修羅の戦闘が始まる。

 先に仕掛けたのは阿修羅。空を引き裂くような剛腕を振るう。

 だが拳の先にドラゴンはもういない。

 それでは()()()()


「ホォ、アタッ!」

 

 水月、肢中、鳥兎。 

 人体の急所を下から上へと順に突き、体位が崩れたところへ必殺の烈暁脚、跳び回し蹴りを叩き込む。

 それで終わり。阿修羅が立ち上がる事は二度となかった。


「なんだ……そいつは……化け物かよ……」


 阿修羅を瞬殺したドラゴンを8番は唖然とした表情で見つめている。


「失礼な事を言うな。ドラゴンはただの人間だ。

 普通の人間よりも少しだけ努力はしているけどな」


「少し? あれは生き地獄ですよ師匠」

「まぁ、並の人間なら3日で死ぬような練習量だよね」


 仁義と剣信がツッコミを入れてくる。

 緊張感が足りない。男子高校生のノリが抜けていない。

 

「クソが、阿修羅より速いのは、韋駄天! 潰してこい」


 8番が新たなる神を召喚する。力の差を見せつけても退かない。

 時間の浪費、愚かな行為に憤りを覚える。

 そもそも神代永斗は何故8番なのだろうか。

 戦闘能力でいえば熱量を操作できる11番より格下に思える。

 神を召喚するという陳腐な技で他のエニグマに太刀打ちできるとは考えにくい。だとしたら知略や謀略でのし上がったタイプなのかも知れない。


「師匠! 俺だ、俺を信じてくれ! 俺達の努力の成果を!」


 仁義の声がオレの意識を思考の渦から解き放つ。

 戦闘中に余計な詮索をしていた。

 指揮官として集中しなければならない。

 仁義が戦うことに異論はない。新たなる能力も二人で開発した。一般の神程度の相手なら負けることはないだろう。


「……仁義」


「はい?」


「負けるなよ」


「任せてください師匠!」

 

 目を輝かせて仁義が飛び出していく。

 新技を試したくなり心が躍っているのだろう。


「喧嘩上等! 夜叉仁義! 神だろうとぶっ潰す! いくぜ! 俺の新能力! 死刑執行(ファイナル)執行猶予(カウントダウン)!!」

 

 仁義が新技を発動する。

 先に規定数、攻撃を加えた者が勝ちという単純な能力。

 相手との戦闘能力の差で打ち込むパンチの数が変わる。

 お互いの額に10と数字が浮かび上がっている。つまりは先に10発殴ることが出来れば仁義の勝利、逆は負け。敗者の命は尽きる。


「シャァッ! オラ、かかってこいやコラ!」


 韋駄天が挑発に乗り飛び出していく。

 風を切るようなスピードだが大した事はない。

 仁義は韋駄天より速く動き回り、アウトボクシングに徹して的確に拳を当てていく。そして試合開始から20秒。


「9、10! 終わりだ!」


「──グッォォ」


 韋駄天は崩れ落ち絶命した。


「うっ、そだろ……クソがァ! ……こうなったら──」


 神代永斗は髪をかきむしり、地団駄を踏んでいる。


「仁義、よくやった。強くなったな」

「師匠……はい! 今後もご指導ご鞭撻お願いします!」


「終わらせてやる……巨大騎神(タイタス)、出てこい!」


 神代永斗の怒声が響く。

 魔法陣からドス黒い閃光が放たれ、大地が揺れる。

 最初に出てきたのは腕だった。そして次は頭部、胴体、足。

 熱を放ち暴走する魔法陣の中から出てくる異形。巨大な怪物。巨体が天上を突き破り8番の居城が崩壊する。

 

 召喚されたのは全長100メートルはあるであろう天を衝くような大巨人。城の崩落に巻き込まれないよう避難したオレ達を遥か上空から巨人が悠然と見下ろしている。


「はえ〜。でっか! ここは私達の出番ですね!」

「ああ、神様、俺達に任せてくれ!」


 天川大吾、田栗ヨセルのコンビがオレに眩しい笑顔を向ける。

 能力は決闘者(カードマスター)。カードの力を現実世界に影響させる能力なのだが、自ら巨人退治を志願したということは何か策があるのだと思い、任せることにした。


 ヨセルが能力を発動するとカードが宙を舞い、決闘開始の宣言が告げられる。


「私のターン! ドロー! 契約魔法、偽装機神復活の儀式を発動!

 生命点(エナジーポイント)を100まで減らし、山札(デッキ)から任意の枚数カードを捨札(スラップ)に送ることにより、捨てられた枚数×2000ポイントの攻撃打点(アタックポイント)を持つ偽りの機械神を復活させる!

 現れよ! 偽装機神王・機械仕掛(ラディカル)(メカニカル)最終兵器(ウエポン)!」


 カードから飛び出してきたのは巨人にも負けず劣らずの巨大な鉄の塊。鋼鉄の巨人兵。

 全身から蒸気を吹き出し、巨大ロボットが唸りを上げる。


「「攻撃段階(バトルステップ)! 機神王の攻撃!!」」


 巨大ロボットが腕を真っ直ぐに振り上げる。

 相変わらず無茶苦茶な能力だ。


「クソが! なんだこれは……巨大騎神(タイタス)やれ、ぶち殺せ!」


「無駄だ! このカードが攻撃を宣言した場合、相手は戦闘計算段階(ダメージステップ)終了までいかなる妨害効果も発動できない。

 さらに俺は追撃魔法、機械化活性術を発動、攻撃打点を倍にする」


 元から大きかったロボットの巨体がさらに膨れ上がっていく。

 世界が沈んでしまうのではないだろうか。


「大吾さん、さすが! 攻撃打点13万6千! 痺れる〜!」


 とにかく何かがすごいらしい。


「いくぞ、ヨセル」

「はい、大吾さん」


 大吾とヨセルが目を合わせる。トドメを刺すのだろう。


「「機械神乃裁機(デウスエクスエンド)!!」」


 巨人は超巨大ロボットの一撃により、プチっと潰された。


「テメェ! インチキおふざけ能力も大概にしやがれ!!

 こうなったら俺様自身が……零の螺旋【捌式】ィ!」


 ヤケになったのか8番が零の螺旋を乱射する。


「──零の螺旋」


 零の螺旋を零の螺旋で相殺し、神代永斗と距離を詰める。


「あ、アぁ、ア……」


 恐怖に震える8番の顔面を打ち砕く。

 再生する度に拳を打ち込む。

 腕をへし折り、腹部を貫き、雷撃弾を零距離で撃ち放つ。

 

「あが、やめ、やめ……しぬ、死んじまう、か、から」


「美唯子を返せ……」


「ヒ、ヒぃ! ゆ、許してください……」


 血と肉と汚物にまみれた顔で8番が懇願する。

 オレは8番を無視して拳を──


「師匠! 落ち着きましょう。らしくないです」

「神様……今の顔を彼女に見せられるのか?」

「怒りに駆られるな。復讐の先に幸福は訪れない」


「……すまなかった。止めてくれて、ありがとう」


「くそ、クソが、ふざけやがって……援軍がいる……」


 神代永斗が通信機を取り出し誰かに連絡を取ろうとしている。 

 ようやく負けを認めたと思ったら、最後の最後まで見苦しい。

 通信機を取り上げることも出来るが黙って見ていることにした。


「11番! 卑怯者達から襲撃を受けた。救援に来てくれ!」


『あー無理無理。軍事拠点が全て同時に襲われているみたいだ。

 こっちも壊滅寸前だから、そっちはそっちで頑張ってよ』


 無情にも通信はプツリと途絶えた。

 今回の作戦は敵拠点の同時襲撃。反抗する間も与えずに敵を一網打尽にする。他の仲間達も上手く立ち回ってくれているようだ。


「嘘だろ、オイ! まさかそんな……いやだぁ、殺されるよ、助け、助けてくれ、誰かぁぁ……」

 

 8番は何を思ったのか突然に泣き出した。

 とうとう完全に諦めたのか、手にした通信機まで投げ捨てる。


「満足したか? ちなみに降伏は無意味だ。

 暴れたいならもっと暴れろよ。何度でも叩き潰してやる」


「お前、鬼かよ。そんな事言わずに許してくれよぉ……」


「何を言っているんだ。そっちが先に喧嘩売ったんだよな?

 お前達は全てを奪った。オレは絶対に許さない」


「わかった、美唯子の居場所を言う! 取引しよう! な?」

 

 この期に及んで取引を持ちかけてくる神代永斗。

 愚者はどこまでいっても愚者のままだ。


「お前さ、考え方が根本的に間違っているんだよ。

 今この状況で自分が取引を持ちかける立場にあると思うか?

 お前にできるのはオレを怒らせたことを死ぬまで後悔するだけだ。12番()、このクズ野郎を10番街まで連行しろ」


「了解しましたですますよ! ──おら、こいや。

 お前はこの世界で一番怒らせたらいけない相手をキレさせたんだぜ? 自業自得だよなぁ! 間抜けだなぁ!? バーカ!!

 さ、楽しい楽しい尋問タイムが待ってるぜ?」


「ヒ、イャだ……やめ、ヤメテクレエエエエェェェェ──!!」

 

 8番(神代永斗)は終わった。

 残りの連中も一人残らず報いを受けさせる。

 勝負はまだ始まったばかりだ。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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