運命の選択。最後の審判。
極致模倣の案内でオレは10番が潜伏している居城へとやってきていた。その場所は10番街、星の中枢のさらに奥。
完全なる盲点。今までオレのすぐそばで敵が息を潜めて隠れていたのだ。
「色々と裏で暗躍していたらしいな。今の心境を聞かせてくれ」
オレが声をかけると10番は凛とした態度で悠然と迎える。
「落ち着け。オレは世界の平和を願っているんだ。
オレも鉄仮面もお前の味方だ」
「なら何故サラとオレの運命を弄んだ」
「それが正しい答えだからだ。
お前達が愛を育み、真実を知ったとき、本物のサラを引き渡すつもりだったんだ。オレはサラを保護していたんだよ」
10番から威厳を感じる。
神様がいるとしたら、きっとこんな人だろうと漠然と思う。
「人形を使って感情を操っておいてよく言うよ」
「悪かった、謝るよ。だが思い出して欲しい。
サラと紫苑を育てていた時、心に安らぎを感じなかったか? 全てを捨てても家族を守りたいと思わなかったか?
今ならまだ間に合う。流されるな、正しい選択をしろ」
10番は直接心を揺さぶってくるように話す。
オレは迷っていた。だがそんなことはお構いなしに自然と口が開いていた。
「悪いがもう決めたことだ。戦おう」
「お前は操られている。正気ではない。
オレは一切抵抗しない。既に世界に影響が出始めている。
キミの心がサラから離れたせいで世界から素零が消えた。
このままでは何もかもおしまいだ。正しい決断をしろ」
素零が消えたと聞いたとき、何故だか無性に悲しくなった。
オレの右腕に閃光が収束していく。
「──零の螺旋」
「バカやろうが……。世界が泣いているぞ。
オレはお前を心から祝福していた。お前なら……。もういい」
オレは10番を消してはいけない。
なんとかして守らなければならない。
正しい選択をするべきだ。オレは間違っている。
「最後の言葉は?」
「……愚かなる神の前途に幸多からんことを願う」
10番がオレに微笑む。大丈夫だ。何も問題ない。
10番に向けてオレは零の螺旋を撃ち放った。
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