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オレの秘密アレの秘密。愛され神様は今日も幸せに包まれる。

重要なことをしれっと言うニセスティラ。


 ()()()突然現れた。


「ご成婚おめでとうございまーす! 嫌味です、わかります?

 あっ! 警戒しなくても大丈夫です! もう何回も女狐(サラ)は抹殺しているので、今回は殺さないであげますから!」


 煌々と輝く紅蓮の瞳、世界を照らすような眩い金髪、美の極致といえるような端正な顔立ち、明るい笑顔の5番、アレスティラが星の中枢に降臨する。


「……どういうことだ」


「私、何度も何度も、貴方と結ばれるように頑張ったんですけど、必ず貴方は29番(サラ)と結ばれるんですよねぇ……。

 まるで運命は変えられないって()()()()()()みたいに。

 1番が貴方達の関係を好ましく思っているみたいでぇ。

 本当に殺してやりたいです。ゴミクズ1番……害悪がぁ」


 アレスティラはサラを見つめながら言葉を並べる。

 笑顔ではあるが目は笑っていない。


「やっぱり、正ヒロインには勝てない運命なんですかねぇ。

 貴方の目線から見た場合、どう考えても私が正ヒロインだと思うように細工までしたんですけどねー」


「待てよ。ペチャクチャ喋る前に白黒つけることがあるだろ。

 ()()()()()


 先程からオレは目の前の5番(アレスティラ)に違和感を覚えていた。

 というよりは違和感しかないが正しいだろう。


「え? 私はいつだって私ですけど?」


「違う。お前はアレスティラじゃない。

 この()()、覚えているぞ。

 確か10番街が消滅する寸前に現れたアレも様子がおかしかった。あの時のアレスティラもお前だろ……真っ赤な偽物め」


「えへ! わかりますかぁ? 

 覚醒が進んで知恵が回るようになったんですね!

 確かに私はアレスティラですがアレスティラではないです!」


 アレスティラの皮を被った()()がオレに優しく微笑みかける。


「お前からは死にたくなるほどの邪悪を感じる。

 パラドクスやアルルカンのような……」


逆説王(パラドクス)? あー! 美唯子のことですね?」


 手をパチンと合わせてアレが叫んだ。


「パラドクスが……美唯子? 冗談はやめろ」


「アレ? お気づきでない? ちょっと考えればわかるようにしてたんですけどねー? ついでなので、問題を一つ出しましょう。

 次のうち、オレさんの子供はだーれだ?」


 アレスティラは早口で捲し立てる。

 

「よく考えてくださいね。貴方の大切なお子さんのことなので。

 ①素零。②紫苑。③レオナルドの軍事基地にいた鉄仮面。

 さぁ、どれが答えでしょうか!」


「おい、待て。色々と突然すぎて頭が回らない。

 オレの子供? その中に答えがあるのか」


「え? ありますけど? 

 この世界ってぇ、色んな悪人が様々な思惑で動いているから、もう混沌の極みなんですよねぇ? ナンデモアリ? みたいな? 

 普通の思考では太刀打ちできませんよ? 絶対に!

 裏の裏の裏の裏の……無限地獄。楽しいですよねー!!」

 

 事実か嘘かの判断もつかない。

 言葉の洪水。情報のオーバーフロー。


「サラ、どう思う。何が何だかわからない……」


「私が今考えているのは、目の前にいる女が完全にイカれているということです。とても正気とは思えません」


 サラが心底不快そうに吐き捨てる。


「生意気な口、聞いてんじゃねーぞ、雑魚が!

 考える知恵もない低脳がよ、どーせ今まで碌に考えもせず、人に頼るだけ頼って生きてきたんだろーが? さっさと死ねよ。

 どうせ都合が悪くなったら人は支え合う物とかしか言わねーんだろ、物事の本質も見抜けない、生きる価値もない下等生物がぁ。

 運だけのクソ野郎、勝ち組気取って偉そうにしてんじゃねぇ。反吐が出るんだよ、生産性のない蛆虫野朗。今すぐに死ね。

 わかりましたか? 29番(サラ)


 態度を豹変させたアレスティラは言うだけ言ってニコリと微笑む。


「口汚い女……。こんな奴に今までオレさんが振り回されていたと考えると悲しくなります。今すぐにこの場で消してやりたい」


「おっと、やめときな! アンタが11番の力を使っても私には絶対に勝てないよ。当然、零の螺旋も効かないからね。

 どーする? 倒せるもんなら倒してみろよ、アァ?」


 アレスティラの言葉に嘘はないだろう。

 パラドクスの正体を知っているということは、裏でレオナルドや影の黒幕達と繋がっていたとしても不思議ではない。

 8番(神代永斗)に零の螺旋を与え、耐性をつけた能力があるのは間違いない。それとは別に特異な能力を隠し持っていたとしてもおかしくない。そうでもなければ、単身敵地に乗り込んでくるような無謀な真似はしない。ならば現時点では()()アレスティラに勝つことは不可能に近い。


「ヤバい、やりすぎたか……ヤツが来る。

 やっぱり29番(お前)は運だけはいいみたいだね。

 今日は大人しく退いてやる。ありがたく思いな!」


 アレスティラが舌打ちをして天を見上げる。

 星の中枢の上空に暗雲が立ち込めていた。

 不吉な気配を感じたのか、アレスティラは驚くほどすんなりと退散していく。

 その直後、空間を引き裂き、暗黒の運河から人影が出てくる。


「アレスティラ?」


「逃げられましたか。最悪ですね」


 アレスティラが消えた後にアレスティラが現れた。


「おい、アレ。今のアレスティラは偽物なんだよな?」


「……残念ながら、ワタシです。

 言っていた事も半分は事実でしょうか」


 アレスティラは疲れたような表情で溜息を吐いた。


5番(アレスティラ)……」


 サラがアレスティラを物憂げに見つめている。

 その視線に気がついたのか、アレスティラは穏やかな表情を作りサラと向き合う。


29番(サラ)。一応、悔しいは悔しいので言っておきます。

 運命は変えられる。今は貴女がそばにいるだけ。最終的にオレと結ばれた者が勝者です。それまでは、ワタシはまだ負けたつもりはありませんから」


「良かった。やはり貴女は知的でないと絵になりません。

 私は貴女を女性としても、同胞としても尊敬しています。

 でもオレさんを渡すつもりはありませんから」


 アレスティラはしばらく虚空を見つめ、視線をオレに向ける。


「──オレ?」


「え、ああ、どうした」


「ワタシもアナタを愛しています。また会いましょうね?」


「……ああ。待ってる」


 アレスティラは空間を引き裂き、暗黒の運河の中に消えた。

 オレは魂が抜かれたかのように黙り込む。


「オレさん!」


「あっ! ごめん!」


 呆けていたのが気に食わなかったのかサラがオレの耳元で叫んだ。


「いえ、仕方ないことです。誰もアレスティラの美貌には抗えませんから。悔しいですが、女として私は完璧に負けていますね」


「そんなことないって。サラも綺麗だ。嘘じゃない」


「情けは無用です! 

 それにしても気になりますね」


「ああ。偽物が言っていたことだろ?

 半分は事実と言ってたな。一体どの事なんだ」


「私の予想ではパラドクスが美唯子であること。

 そして貴方が私の気持ちを受け入れてくれることでしょうか」


「多分、そうだと思う。

 時を支配しているアレスティラが負けを認めたのは事実だ」


「……だとしたら、何者かが貴方の好意をアレスティラから私の方へと向けさせとも考えられますね?」


「そんなことはない。少なくともオレは自分の意思でサラの気持ちを受け入れたつもりだ」


 オレの言葉を聞いて顔を赤くしたサラが、静かに歩み寄りオレの胸に抱きつく。


「それが本当なら、嬉しいです……けど?」


「……時折サラは破壊力のある一撃を出すよな」


「それはつまり、私に魅力を感じてくれているのですか?」


「そうでなければ、選ばない。

 いや、正確にはサラが紫苑を一緒に育てると言ってくれた時点である程度は心を決めていた。多分、あの子もサラを母親のように思っている。オレ達にとっても、紫苑にとってもこれが最善だ」


「オレさん……あの、私……」


「もうっ! いい加減にしてよっ! 隙あらばいちゃつこうとするな!」


 突如、二人だけの空気を打ち破るようにして怒声が響いた。


「クラリス」


 白いドレスを着たクラリスがオレとサラをジト目で見ている。


「そりゃあ僕だって? 君達のことは祝福するよ。

 実際お似合いだし、意思疎通完璧で完全に夫婦みたいだしさ。

 でもやりすぎだよね? 城の中でもコッソリ手を繋いで歩いているのバレバレだから! やりにくいったらないよ!」


「ああ、わかったよ。これからはもう少し──」


 神妙な面持ちでオレがクラリスに謝罪しようとすると、サラは強い口調で遮る。


「謝る必要はありません。クラリス、貴女は子供なのでまだわからないでしょうね。愛する人のそばにいると自然とこうなります」


「クッ……何その余裕……。負けた気持ちになる高みからの言葉。

 どうせ僕はまだ15の子供だよ。でもまだ終わってない!」


「貴女は何を言っているのですか?」


「アレスティラの言う通りさ、勝負はまだついてない!

 僕だって、僕だってオレのこと好きだし!」


「よく言ったよクラリス。私も……同感」


 クラリスの背後からヌッとメアが現れ、静かに呟く。


「シオンもオレ、すきー! だいすきー」

「オイラも神様のこと好きだミョー!」


 パタパタと紫苑とミーミョンが現れ声高らかに叫んだ。


「紫苑……。毛玉……」


 サラはミーミョンを睨んでいる。


「俺も神様の親友だ!」


 何の脈絡もなく唐突にレッドが現れた。


レッド(あなた)は完全に関係ないでしょう」


 サラは冷静にツッコミを入れた。


「つまり皆んなオレが好き」

「いつまでも正妻ぶっていられると思うなよ!」

「独り占めはよくない」

「オレー! サラー! 好きー!」

「ミョー!」


 全員が一致団結してサラを倒そうとしている。


「あー、もう、わかりました。近所迷惑です。散りなさい!」


 サラが一喝すると、騒いでいた面々は蜘蛛の子を散らすようにして去っていった。


「サラ、おつかれ」


 掛ける言葉が見つからず、オレはサラを労った。


()()オレさんは人気者で困ります」


「まぁ、いいんじゃないか。楽しいし」


「ちっともよくないです。私はもっと貴方と……」


「何?」


「貴方と仲良くしたい……のに。──えっ!?」

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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