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神の考察。世界を操る黒幕は。

オレとオレ。


 ──10番街、神の居城、最奥、星の中枢。


「おはようございます。よく眠れましたか」


 睡眠から目覚めたオレを従者のサラが迎える。


「ああ、おはよう。すごぶるいい気分だよ」


 オレの返答を聞いたサラは心地の良い微笑みを見せた。

 

「サラ。先日の一件について話そうか。エニグマが本気で一国を潰そうと考えて攻め込んだとしよう。その結果、国民のほぼ全てが生き延びる、なんてことは有り得るかい?」


 先日の一件とはスカーレット王国での出来事である。

 オレがクリアによって召喚され、8番(神代永斗)を打ち破り、素零が放った終の螺旋から宇宙の消滅を防いだ事件。

 サラはオレから一連の流れについて説明を受けていた。


「断言できますが、あり得ないことです。

 小一時間もあれば逃げ出した国民含めて皆殺しにできます」


 オレに問われたサラは端的に答える。


「では何故、8番は国を焼いたが国民は逃したと思う?」


「……わかりません。

 考えられるのは奴隷として使役するつもりだった、もしくは自己顕示欲の強い8番が己の力を誇示したかったから、でしょうか」


「なるほど分かりやすい。お手本のような解答だね。

 でもオレの意見は少し違う。そもそも今回の一件は8番の意思ではない。8番自身、気がつかない形で利用されたから……かな」


「それがどうして国民を逃すことに繋がるのですか?」


「それは本来の目的がブレてしまうから。

 8番への憎悪が高まりすぎると、効果が薄まる。

 つまり絶妙なサジ加減で感情を支配(コントロール)されたんだよ。緊張の高まった段階で国民の無事を知らせ、緩和させることで8番への憎しみを希釈したんだ」


 冷徹な視線を受けたサラの表情が強張る。


「本来の目的……ですか」


「ああ。1番への敵意さ。オレは完全に敵の術中に嵌った。

 黒幕の目的は素零が(ツイ)の螺旋を発動させ、宇宙を消滅させるよう誘導し、見事、オレが1番を憎むまでに追い込んだのさ」

 

「なるほど、……確かに辻褄は合っています……よね。

 となると異世界に召喚された所から全てが敵の思惑?

 素零が死絶の洞窟に入ることまで全て!?

 しかし、根拠はある……のですか?」


 サラは思考が追いついていないのか遠慮がちに言う。


「8番は何故、零の螺旋を使えたのか。

 8番は何故、零の螺旋に耐えたのか。

 8番は誰と繋がっていたのか。

 それに、()()()()()()()、か。ふふ、よく言ったものだな。

 その答えはキミにも分かるよね」


「レオナルド・オムニ・エンド……」


 サラが搾り出すようにしてレオナルドの名前を出すと、オレは口元に手を当てながらクツクツと笑い出す。


「御名答。彼は口癖のように言っていた。

 ()()が完全に覚醒すれば1番を軽く倒せると。

 実にうまくやったものだよ。

 5番(アレスティラ)の力を継承させ、()()()覚醒を早め、モノのついでとばかりに1番に対する不信感を抱かせた。

 面白くなってきたね! 最高に楽しい展開だよ!」


「……それで、どういたしますか。

 逆説王(パラドクス)にレオナルドの対処を命じますか」


「それについては、──おっと、いけない。そろそろ時間だ。

 サラ、後の事を頼む。オレはキミを誰よりも信じているよ」

 

 ◇ ◇ ◇ ◇


「貴方は6番(素零)を甘やかしすぎです!」


 10番街に帰還したオレは従者であるサラからお説教を受けていた。


「本気で世界のことを考えるなら、素零を処理するべきです。いつ爆発するかわからない爆弾を抱えて暮らすようなモノなのですよ? 終の螺旋が宇宙を消し去るのは5番(アレスティラ)の言葉通り事実でしょう。不要なリスクは排除するべきです。違いますか?」


 サラの剣幕にオレはたじろぐ。

 真剣なお説教は愛情の裏返しだろう。


「いや、まぁ、そうだとはオレも思うけど。

 なんとなく、素零を消したらいけない気がするんだよ。

 それよりさ、オレ、多少は時間を操れるようになったんだ。

 過去に戻って、17番を助けようと思うんだけど」


「ダメです。歴史の改竄は重罪ですよ。

 一体どうしてそんな事を言うのですか。

 今回のように宇宙の危機でもない限り、無闇に時間操作を使用することは無しにしましょう。いいですね?」

 

「わかった、けど……。サラは17番が死んでからさ、なんというか、無機質というか、冷たい印象を受けるようになった。

 初めて会ったとき、キミは優しくて天真爛漫で、見てるとなんだかこっちまで楽しくなってくるような可愛らしい女の子だったよな。またあの時の笑顔を見せてほしいから」


「………………えっ!? あっ、……はい?」


 サラは戸惑っているのか視線を宙に泳がせる。


「どうかした?」


「あの、オレさんが私のことをそんな風に……」


 俯いてしまったサラの顔をオレが覗き込もうとすると、サラは視線を逸らそうと懸命に首を左右に振る。


「ダメよ、従者が主人に対して個人的な感情を持つのは……。

 笑顔? は、別にいいのかな……どうしよう。わかんないよ」


「えーと、サラ? そういえば前に言ってた大会についてはどうなってるのかな」


「あっ! ハイ! 運営委員会を作り順調に進んでいます!

 それと、戦闘を好まない住民のために目安箱も設置しておきましたので! お時間のあるときにそちらの方も解決していただけると助かります。えっと、あの……オレさん。おかえりなさい」

 

 言いながらサラはとびきりの笑顔を見せた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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