入った瞬間即死亡。死絶の洞窟攻略開始。
オレと素零は地図を頼りに死絶の洞窟までやってきていた。
気候も穏やかで風光明媚な田舎町。
その一角にわかりやすいほどわかりやすく、その洞窟は存在していた。
洞窟の周囲には物々しい雰囲気が漂い、警告看板や不気味なお札、鳥居や魔除けの類であろう石の彫像が並んでいる。
洞窟の入り口には侵入を防ぐため鉄の門扉に木の板や鉄板が何重にも打ち付けられており、それに加えて魔力による結界までもが張られている。
「とりあえず、入れないから、ぶち壊すねー!」
素零は鉄の門扉を結界ごと零の螺旋で吹き飛ばした。
爆風が巻き起こり、木材の破片や鉄の欠片が舞い踊る。
「この時を待っていたぜ!」
「やっぱ待ってて良かったね!」
「これで伝説の秘宝はいただきだぜ!」
洞窟の影から三人組の冒険者がオレ達の前に飛び出してくる。
「キミ達もクエストを攻略しに来たの?
でもなんだかヤバそうな雰囲気だけど大丈夫〜?」
素零が軽い口調で悪戯っぽく尋ねる。
「おうよ! 俺達は天下一のトレジャーハンター!」
「結界さえなんとかなれば攻略なんて楽勝だしー!」
「悪いが攻略は早いもの順だ! お先に失礼するよ!」
三人組の冒険者はすぐさま洞窟の中へと駆け込んで行く。
その数秒後。
「「「ギャー!!!」」」
耳を劈くような男女の絶叫が洞窟内から響き渡る。
「やっぱりね、何かあると思った!」
素零はニヤニヤしながら洞窟の中へと進んでいく。
オレもその後を追うと入り口からすぐの場所に三人の冒険者が倒れていた。
三人共、苦悶の表情を浮かべて既に絶命している。
「なんだ、これ。洞窟に入っただけで死んだのか?
争った形跡もないし、魔物の気配も感じない」
オレが辺りを見回していると、不意に生暖かい風が吹き抜けていく。
『我が秘宝を狙う愚か者どもよ。愚行の報いを死を持って受けよ』
洞窟内に身の毛もよだつような悍ましい声が響く。
直後、赤と青の光が明滅する。
「なんだ、やっぱりなんともないや! このまま進んじゃうよー」
光を受けても素零は平然としている。
しかしオレは片膝を突いて顔を伏せていた。
「え? オレ、大丈夫? どうしたのさ」
「……わからない。息が苦しい。何かがおかしい」
「そうか、キミはまだ半分人間なんだっけ……。
耐性を超えた魔力なのかな、困ったな、どうしよう……」
苦悶の表情を浮かべるオレの背中を素零が懸命にさすりながら言う。
「ほら見なよ! 言わんこっちゃない!」
どこからか聞き覚えのある声が響いた。
見ると洞窟の入り口に金髪の勇者が立っている。
勇者は風のように走りオレと素零の側までやってくる。
「僕のリーダースキルは神聖耐性、即死耐性+++、全体強化の三点セットだ。どうだい? 役に立つだろう?」
「なんでもいいからオレを助けてあげて! 勇者なんだろ?」
素零が叫ぶとクラストスはウィンクをしながらオレと素零の体に触れる。
すると見る間にオレの表情に血の気が戻る。
「息が……できる。助かったよ。アンタ、本当はすごいんだな」
「当然だろう? 僕は深淵の魔神、神殺しの剣、断罪の執行……」
「そういうのはいいから! でも、とりあえずはありがとう」
勇者の口上を遮り、素零がお礼を言うと、クラストスは優しく微笑む。
「さて、パーティも結成したことだし、ここからが本番だ。
攻略不可能と言われた死絶のダンジョン、見事に突破して見せましょうか!」
クラストスが叫ぶのを聞いて、オレと素零は静かに頷いた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。