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予期せぬ結末。素零敗北。


 世界の起点。

 かつてスカーレット王国はそう呼称されていた。

 その昔、世界を牛耳り破滅へと導こうとしていた悪魔を天からの使いであるスカーレット一世、(アカ)の王が身命を賭して封印したことにより、人類は解放され歴史が始まったと言い伝えられている。


 この世界においての最大戦力とも称されるほどの軍事力を備え、建国以来、幾千の刻を超えてもその堅牢な守りを破る勢力は存在しなかった。

 人類の平和と繁栄の象徴としてスカーレット王国は長きに渡り崇められていたが、その栄光は最早、見る影もない。

 

「クリアから聞いた印象と随分違うねぇ」


 焼き払われ、廃墟となった王都を見回し素零が呟く。

 クリアは道中、祖国の歴史を雄弁に語っていたが、無惨に変わり果てた王都の惨状を目にして嗚咽し、涙している。


「……素零、生存者はいないようだ。8番のもとへ行こう」


「はいは〜い!」

 

 素零はオレとクリアを連れて再び転移する。

 闇を抜けると三人は玉座の間へと辿りついた。

 シンと静まり返った城内には鼻をツンとつく死臭が漂い、激しい戦闘が繰り広げられた痕跡が至る所に残っている。

 

 真紅の絨毯が続く先、絢爛豪華な椅子にふてぶてしく腰掛けているのは、神代永斗を名乗りクリアの王国に災いをもたらした8番その人である。


「よう。俺様の王国にようこそ、同胞の諸君」


 レオナルドが着ていたものと同じ軍服を身に纏い、革のジャケットを羽織っている銀髪の男性は、鋭い眼光でオレ達を見据える。


「何故だ、なぜこんなことができるんだ。

 オレ達に抵抗もでなきない相手を一方的に虐殺して何が楽しい」

 

 オレが問いかけると8番は薄ら笑いを浮かべる。


「お前は新入りの10番だな。どこかで見たような気もするが、気のせいか。お前も一度やってみたらわかるさ。

 ピーチクパーチク喚くしかできない猿共を人知を超えた力で蹂躙する。爽快だぜぇ?

 なぁ、教えてくれよ、人間が平和のためにと魔物を狩り殺してる行為と俺様がしたことの違いはなんだ?

 家畜は殺してよくて人類だけ特別な理由は?

 ん? ほら、言ってみろよ。偉そうに大義名分を並べて、正義の味方を気取って俺様の首を取りに来たのかしらんが、いい迷惑だ」

 

 8番は吐き捨てるように言う。


「罪もない人々を惨殺しておいて、いけしゃあしゃあと……。

 許せない、絶対に許さないっ!」


 仇敵を前にクリアは唇を噛み締め拳を震わせている。


「ヤッホー! クソ雑魚8番、殺しに来たよー!

 人間相手に強さを誇示してお山の大将気取ってるドクズのザーコ! 存在してる価値もない三下ゴミ野朗、死ねよ」


 オレが返答を出す前に素零が一歩踏み出した。


「6番か。相変わらずムカつくクソガキが……。

 俺を殺す? 冗談キツいぜ。本気で仲間を殺すつもりかよ」


「うるさいなー。お前なんか仲間じゃないし、不愉快なんだよ」


 素零が零の螺旋を発動するために右腕に光を収束させる。

 それを見た途端に8番はわかりやすく狼狽してみせる。


「お、おい、その光、知ってるぞ、1番が作った技だよな。

 やめろ、やめてくれ、何でもする、改心するよ、やめてくれ」


「お前の声は耳障りだ。黙って死ねよ、ばーか!」


 素零の右腕から零の螺旋が発射され、8番の肉体を光が覆う。


「ウギャアァァァ! 死ぬー! 死んじまうよー! ──なーんてな……」


「──えっ!?」


 光の螺旋に体を貫かれたというのに8番は平然としている。

 次の瞬間には姿を消し、一瞬で素零の間近まで転移すると、素零の頭部を左手で鷲掴みにして持ち上げる。


「ガキが、いつまでも、調子に乗ってんじゃねーぞ、オラァ!」

 

 身動きできない素零を8番はサンドバッグのように殴打する。


「時代は常に動いてんだよ、俺達は生命の頂点だぞクソガ!

 いつまでもテメェに脅えてるだけのワケねーよなぁ!

 零の螺旋だけのクソガキがコラ、剥いて殺すぞカス野朗」


 8番の拳が素零を痛めつける。

 オレが救出のために飛び出すと、8番は素零の身体を振り回し、全力で壁に叩きつけた。


「テメェにやられた連中の恨み辛みを晴らしてやるぜ。

 ──この俺様の零の螺旋【捌式(ハチシキ)】でなぁ!!」


 壁に衝突し地面に倒れ込み、動かなくなった素零に向けて8番は構え、右腕を突き出す。その腕にドス黒い光が収束していく。

 見紛うことなく零の螺旋の発射体勢であった。


「ハッハ! いい気分だぜ! これからは俺様の天下だなぁ!」

 

             斬


 剣線一閃。

 零の螺旋を放とうとしていた8番の右腕は切り落とされた。

 閃光を纏う右腕が床を跳ね回り、解き放たれた光の螺旋が天井をぶち破り空の彼方に消えていく。


「ゴッッ──ガァア! 腕が、俺様の腕があああぁっ!!!」


「調子に乗ってんのはテメーだろうがよ。

 エニグマを殺せるのは零の螺旋だけじゃねぇ。

 ここにも一人いるんだよ。

 いい気になってんじゃねーぞ、下郎……」


 刀を肩に担ぎ、不敵な笑みを浮かべているのは國裂信長であった。

 契約者(素零)の窮地に闇の中から飛び出してきた信長は8番を蹴り飛ばし、倒れた先に斬撃を飛ばす。


「クッソがぁ、痛え、痛えよおおお!!!

 時代錯誤の侍風情が、ブチ殺してやる……」


「おい、宇宙野朗。コイツは俺が斬り捨てる。

 素零を連れてとっとと消えな」


「オレに指図するな信長。

 素零の仇はオレが討つ。邪魔をするならお前も消すぞ」


「ハッ! しばらく見ないうちに血気盛んになったな。

 素零をやられてキレたか、オモシレェ、共闘といくかよ」


「オレ一人で十分だ。コイツ(8番)は俺が必ず倒す」


 憤怒の形相で喚き散らす8番を見据え、オレは静かに拳を構えた。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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