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最強は誰だ。神様の特別試練、再び。

新章開始です。


「とりあえず、10番街の現状から聞こうか」


 玉座に腰掛けたオレが聞くとサラは一礼して話し始める。

 

「今なお各地で紛争や諍いが続いております。

 メア様を含めて数名が対処にあたっていますが、改善の兆しは見えておりません。いかがなさいましょうか」


 地球消滅事件から数日、休息を取ったオレは神としての職務に従事していた。

 何から手をつけるべきか躊躇するほどに問題は山積みであった。

 素零は18番(氷駕)を連れて消息不明となり、美唯子はどさくさに紛れて4番に拉致された。

 二人ともオレにとって友とも呼べる存在であるだけに、放置しておくわけには行かなかい。

 しかし神として自らの惑星を蔑ろにすることもできない。

 何かしらの手を講じる必要があるとオレは考えていた。

 

逆説王(パラドクス)を呼んでくれ」

 

()()()()()()()()

 お言葉ですが、あの者は本当に信用できるのでしょうか。

 地球で素零に殺されたと私は認識していましたが、何故平然とこの場に現れることができるのか、理解に苦しみます」


 サラの疑問は当然であった。

 地球が暗黒物質(ダークマター)の攻撃を受けて消滅すると聞いた直後に疾風の如く現れた二人組、逆説王(パラドクス)道化師(アルルカン)

 1番を騙し、素零を騙し、オレ自身すら欺いた狂気の二人。

 それぞれに奇特な能力を持ち、並の能力者や存在なら太刀打ちできないほどの力を有している。

 現に、この世で究極の力を持つエニグマ相手にも力が通用したのを見るに、最強という言葉を冠するに値するだろう。

 サラはオレがパラドクスに利用されているのかもしれないと危惧しているのであろう。だが逆にオレは二人を信頼していた。


「素零、というか世界はパラドクスが死んだと思い込んだだけ。

 簡単に死ぬような奴等ではないよ。変えの効かない唯一無二で最強の能力者、人類の希望の一つかな。

 それに二人は信用できる。サラも一度会ったことある人物だ」


 オレの説明を聞いたサラは最初は腑に落ちない顔をしていたが、すぐに向日葵のような明るい笑顔を見せる。


「そうでしたか。疑って申し訳ありませんでした。

 私のような者が出過ぎた真似をいたしました。反省します」


 自身を卑下するような発言をするのを見て、オレはサラの手を引き手元に手繰り寄せる。

 華奢な身体を抱き留め、美しく整った顔を真っ直ぐ見つめる。


「そういうなよ。キミはオレを心配してくれたんだろ?

 サラにはいつも助けられている。オレが神として今までやってこれたのも全部キミのおかげだから。

 もっと胸を張って、これからもオレに意見してくれ。

 頼りにしているよ」


 オレが耳元で囁くとサラは頬を赤らめながら小さく返答する。

 

「ハイ……あの、お戯れを、、恥ずかしい、ですから……」


 口ではそう言っているが、サラは拒否の反応を示していない。

 むしろのオレの胸板に顔を寄せ、安堵の表情を浮かべる。


「あのぉ! あたしがずっと見てるんですけど!?」


「フぇッ! ヒャい! ごめんなさい、ごめんなさい!!」


 パラドクスの声を聞いた途端にサラは飛び上がり、何度も平謝りをしている。何の理由で謝っているかは不明だった。

 その様子を楽しげに見つめながら、フードを被った小柄な少女が玉座に向かって歩いてくる。

 顔を隠すようにしているが、口元がニヤついているのが見て取れる。


「やっ! 元気してた? 調子はどうよ」


 パラドクスが明るい口調でオレに尋ねる。


「疲れも取れたし快調だ。地球の件では世話になった、礼を言うよ。ありがとう。しかし見事だったな。世界の全てを欺いた」


「アッはは! あれくらいチョロいってさ!

 エニグマだろうが新人類だろうが、全てあたしが倒してやんよ」

 

 カラカラと笑いながらパラドクスは言い切った。

 サラは平静を取り戻したのか、静かに話を聞いている。


「ああ、そうだな。実はその件で話がある。

 オレは1番を倒すために味方を集めて組織を作ろうと思う。

 世界に害をなすというなら、新人類やその他の勢力も排除する」


「異議なーし! 好きにやればいいさ。普通に協力するし。

 やっぱ1番とか必要ないわ。実質世界を牛耳って好き勝手やってんだよね。素零を作ったり、異世界の秩序も乱しまくりだし。

 あたしはもちろん大幹部なわけだよね? 最強なんだしさ」


 パラドクスは忌憚のない意見を述べる。

 

「そうだな。パラドクスの能力は無敵だ。

 味方でいてくれる限り、オレはキミを大切に扱うよ」


 オレが言うとパラドクスはフードを揺らしながら楽しそうに笑う。


「それと10番街の内紛の件についても考えがある。

 前回の神様の大会だっけ? あれの続きをやろう。

 オレもレオナルドのせいで強制終了させられて消化不良だ。

 優勝者が数年間、10番街を統治する。

 当然、オレも参加する。パラドクスはどうする」


「うわ()っつ! マジ上がるじゃん! 出る出る、出るよ。そっかぁ、アンタと出会った大会だったっけね。

 時が経つのは早いわ。絶対優勝してやんよ」


 パラドクスは空に向かって拳を繰り出している。

 やる気満々の様子だ。


「よし、じゃあ決定だ。

 サラ、大会の規則(ルール)とか調整とかを頼めるかな」


「お任せください。それが私の使命ですから。

 お二人も参加されるなら、特殊な規定が必要ですね。

 強さにバラつきがなく、平等な力で戦えるように考えます」


 オレが初めて10番街に辿り着いた時に参加した特別試練。

 知恵と力と能力を駆使して戦う武闘大会の開催が決定した。

 

「──ん? なんだこれ」


 突如、玉座に腰掛けていたオレの身体が光輝を放つ。

 星の中枢に爆発を想起させるような光と爆音が広がる。


「それは、召喚の光? ──ダメだよ、すぐに逃げて!」


 声を大にしてパラドクスが叫んだ。

 

「パラドクスと共にすぐに助けに行きます。

 三日、いえ、一日だけ待っていてください!」


 サラも必死になって叫ぶが、オレの耳には届いていない。

 オレの肉体は閃光に飲まれて姿を消した。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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