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8

アクションパート

 


 とある活火山。

 中腹に位置する横穴から中に入れば、灼熱のマグマ溜りと掘られずにいる希少な原石があちこちに見られる。近づく者がいないからだ。



 その最奥に広がる空間は、泉のように大きなマグマ溜まりが煮えたぎっている。



 そのマグマ溜まりを、大小様々な魔物が囲んでいた。

 いずれもS級に分類される魔物達は、縄張り争いなどする様子もなく、マグマ溜まりをじっと眺めている。







 ボコりと、一際大きな泡が合図だった。







 どんどん増えていく泡がマグマの温度上昇を告げ、空間全体の温度さえも上げていく。

 元より熱に耐性がある魔物達も、息苦しそうにしながらも目を逸らさない。






 やがて、マグマ溜まりから何かが飛び出した。






 マグマ溜まりから何処までも伸びていく細長い体。固い光沢を持つ鎧甲、その下で全身に流れるマグマ。

 長い体を節ごとにくねらせてその場に鎮座するは、灼熱の百足。

 その名の通りに無数の脚についた爪や、強靭な顎についた牙は黒曜石のように黒く鋭いとわかる。

 百足が眼下の魔物達に目を通せば、恭しい態度でその場に佇んでいる。



 最初から、降伏と忠実の証を示していた。

 本能で、自分達を支配する物だ分かっているのだ。




 それらを見た百足は、声を張り上げた。

 早速、命令を下すのだろう。





「もういいか」





 盗み見ていたイオは、力のセーブを止めた。途端、百足が支配していた空気がイオの持つ邪神の力に上書きされる。

 急な変化に配下の魔物達は戸惑い、百足は気丈にもイオの方を睨みつけた。

 人など射殺せる眼力にも億さず、イオは優雅に宙を泳ぐ。百足の目線に自分の体を合わせ、ゆっくりと言葉を伝えた。


「産まれたばかりで悪いけど、アンタには死んでもらう。ま、タイミングが悪かったと諦めな」


 言いながら、尾に繋がる鎖一本を手に取り引く。

 鎖が垂れ下がっているのは、人間で言う所の右太腿、膝裏、左脛、足首の四本。



 この鎖にも意味はある。邪神の力で作り上げた物は、それ以外の物質を汚染する。故に、自身の身体に収めておくしかない。

 鎖は、武器を取り出す引き手だ。今回は一番得意な獲物。


 右太腿の鎖を最後まで引き抜き終え、柄を掴み構え直す。




 透き通るような蒼色に金色で水草が元だろう柄が描かれた、イオの身の丈を優に超える三叉槍だ。




 矛先を向け口角を上げる。わかりやすい挑発だが、百足の目に闘志が宿ったようだ。


 頂点として産まれ落ちたプライドが、簡単に排除されそうな今を許せないらしい。


 耳を劈く奇声と共に、百足の牙や爪がイオに迫る。

 予備動作もなく、目に見えぬ程に速い。だが、イオにとっては遅い動作だ。


 百足よりも速く宙を泳ぎ、その後を百足の頭部が追う。挑発のしたかいがあったらしく、自分の体をどんどん伸ばしてイオを捕らえにかかる。

 くるりと脳内で描いたイメージ通りに泳げば、百足の体は輪となった後に結びついた。

 早さも仇となり、きつく結ばれた体はそう簡単に溶けそうも無い。




 そして、その暇を待つイオではない。




「じゃあな」


 勢いづけて穿つ槍は百足の額をかち割り進み、結び目近くまで貫通した。その状態で、魔力を槍に注ぎ込む。



 矛先から、魔力に合わせた水が流れ出た。



 大きな悲鳴と共に体を動かして逃れようとする。だが、槍は抜けずどんどん新しい水が生成される。

 水は体内のマグマと合わさり、至る所から煙が上がった。



 その様を呆然と眺める魔物達。

 暫くして、百足の足元を浸すマグマが急速に冷えていく。同時に百足の動きも鈍くなり、マグマが冷えきった途端に力を失って巨体が倒れた。




 長である百足の完全敗北。




 恐慌状態の魔物達が、我先にと通路に向かって移動していく。

 呆れ顔でそれを眺めながら、最初に隠れていた岩の辺りに声をかけた。


「もういいぞ」

「オツカレー!」


 岩陰からジャピタが出てきて、声をかける。その後ろでは、オリーブが茫然と死体を眺めていた。


「魔王級がこんなにも簡単に……」

「邪神に勝てるわけないだろ。あと、単純に相性の問題だ」


 オリーブの呟きに淡々と返す。




 あの百足は足元のマグマがある限り、首を落とそうが心臓を貫こうが脅威の回復を見せただろう。


 その為、マグマ溜まりの排除が最優先となる。


 まともに呼吸も出来ない場所での長期戦。その上、もう少し経てば配下の統率が取れて邪魔をしてきたはずだ。

 そうなると、通常の人間には苦戦を強いられるのは必須。

 オリーブ達のパーティーに情報を渡す為、それなりの実力者が斥候となって犠牲の山となっていただろう。


「魔王級はこれで終わりだ。あとはしっかりやりな、オリーブ」

「はい、邪神様」


 オリーブは復讐に支配された目で、イオとジャピタに頭を下げる。先に渡していたナイフを取り出し、百足に近づいていく。



 魔王級の体には、漆黒の核があるらしい。オーブと呼ばれるそれが、討伐の証として国に献上される。



 勇者パーティーと持て囃された女達が、知らぬ所で大義名分を失う。なかなかの皮肉だ。


「献上して、呼び出されて……何日かかるかな? 楽しみだ」

「タノシミー!」


 開催される復讐劇の幕開けに、期待が止まらないイオとジャピタだった。


魔王級<<<<邪神。

溶岩や湖が本体の無限再生って浪漫ありますよね。


次回、何も知らない勇者視点になります。

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