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7.オリーブ視点あり

視点混合してます、注意

 



「ヘレナ……ヘレナ…………!」




 全て思い出した。再び、憎悪が心を占める。


 あの四人を殺したい。

 心からそう思うオリーブの耳に、()()()()()()





 ハッとして顔を上げると、薄い水のヴェールがオリーブの周りを覆うように半円を描いている。


「なかなか、いい感じに仕上がってるな」


 背後から声をかけられ、振り返る。そこには、ここまで着いてきてくれたイオとジャピタが立っていた。


 だが、角が生え眼は反転し、尾の一部から鎖が流れ出ている。何よりも醸し出す雰囲気が違う。





 今ならわかる。

 イオとジャピタは、自分の願いを叶えに来てくれたのだ。




 自然と、イオの前に跪いて頭を垂れた。それを見て、イオが小さく微笑む。






「改めまして。アタシは邪神。邪神イオレイナ。アンタの復讐心に呼ばれて参上した」






 クスクスと笑う様に、オリーブも小さく口角が上がっていた。









 記憶を取り戻したオリーブを、ギルド長は心配していた。だが、他の仕事との兼ね合いを武器に言いくるめ、ギルド長は帰っている。


 つまり、この場にいるのはイオとジャピタ、オリーブだけだ。


 水の結界は邪神の力も加わっている為、並大抵の事では破れず中の音も絶対に漏れない。

 その中で、オリーブの口から復讐に至る経緯を聞いているところだ。



 愛する女と結ばれる直前で離れ離れにされ、何度言っても改めない仲間のアプローチ。

 離脱する事も許されず、最後に愛する女を惨たらしく殺された。



 思い返す事も苦痛なようで、握りしめた拳から血が滲んでいる。その様も、イオを悦に浸らせる。


 復讐を望む者は、二通りいる。

 積年の怨みを募らせた者と、一瞬で爆発的に怨みを抱えた者。オリーブは後者のようだ。


「なるほど? アンタの望みは、『勇者パーティー』四人の殺害だな?」

「はい……! 惨めに、苦しんで、死んでほしい……! その為なら、私は全て捨ててもいいです!」

「その熱意は結構。なら、取引しよう」


 イオの言葉に、オリーブは首を傾げる。恐る恐るといった様子で、口を挟んだ。


「お言葉ですが……行商時にたまたま見た古書に、邪神様の事が書かれていました…………そこには、望んだ者に莫大な力を授けて下僕とするとありましたが……?」

「あー、昔はな? いろいろとあったけど、一番は力加減を知らなかった事だ。上限を超えて力を注いでしまった結果、ソイツらは化け物となって暴れてしまう。それこそ、持っていた分と与えた分を全て力に変えてな。手っ取り早いけど、デメリットも存在する。力を与えたこっちも、百年単位で休眠が必要になる。だから、今の効率いい方にしたのさ」

「そうすると……私の復讐に必要な力と、それに見合う対価を交換するということですか」

「正解」


 返答を聞き、思考を巡らせるオリーブ。

 一からじっくり説明するのも面倒だから、頭の回転が早くてありがたい限りだ。


「対価が何かは決まっているのですか?」

「基本的には、望んだ者が持ってる物。才能、身体的特徴、寿命から種族まで様々だな。それ以外だと、復讐心が移った遺品とか」

「後者は長い年月が必要でしょうから、私は私自身から渡す事になりますね」

「察しがよくて助かる。でも、アンタは何でもいいって言いそうだから、逆に聞くな? ()()()()()()()()()()


 真っ直ぐに目を見つめ、含み笑いで問いかける。オリーブは無言で自分の手を見下ろし、深く考え始めた。




 暫くして、オリーブが答えを返す。




「…………音楽と、ヘレナと過ごしていただろう分の時間。許されるのなら、その二つは残していたいです」

「それくらい、許すに決まってるだろ? 謙虚……いや、欲がなくなったのか。あと、こうしたいって復讐のリクエストはあるか?」

「それはあります。できる限り苦しんでほしいです。楽な死は望みません。それと……できるなら、神官達への怨みも晴らしたいです。死までは望んでいませんが」


 オリーブの本心に、イオはふんふんと頷きながら頭を巡らせる。




 様々な要素を組み合わせて、いくつかパターンを考えてから、オリーブに一つ一つ伝える。



 その反応を見て修正していき、双方共に納得する最適な復讐方法を作り上げるのだ。

 歓喜でほの暗い笑みを浮かべるオリーブに、イオは最終宣告する。


「授ける力と対価、方法。全て決まったな。わかっているとは思うが、念の為に言っとく。アタシ達の事は一生、誰にも話すな」

「わかっております」

「なら、最後の行程だ。邪神の名を呼びな」

「名前を?」

「そう。神にとって、名前は個を判別し力を使う為の重要なもの。アンタの純粋な怨みに伴い、その名が浮かんでいる筈だ」


 笑みを浮かべて問いかければ、オリーブは一瞬目を見開いた。

 そして、微笑みながら位置を正す。

 





 イオの真正面から斜めに。


 恭しく頭を下げる先には、イオの腕に巻き付くジャピタがいる。




「お願いします。邪神、ジャンス:ピール:カブター様」






 愛称ではない、真実の名前。

 それを聞き届けた邪神達は、取引完了と笑みを深めた。






やっとざまぁターンに入ります。

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