エピローグ
遅れましたすみません!
動力室から元の城内へ転移してもらい、城の外に出た時には日が暮れていた。
人通りが少なくなったパーク内。飾られたイルミネーションが色とりどりに光を放ち、昼間の活性な様子から幻想的な様子へと変化している。
どこまでも来場者を飽きさせない演出だ。
ここにはもう用事はなく、また偽装したイオとジャピタは真っ直ぐに出口を目指す。
目当ての食事はし損ねたが、代わりが手に入ってよかった。それに、珍しい果実も入手し、終わってみれば結果は満足寄りである。
物は試しとロクーラに伝えれば、あっさりとシゲキトロンの果実、果実水、おまけに苗木までくれたのだ。
この世界では有名すぎる為、商売人が栽培することが当たり前らしい。収納魔法に入れた収穫に、自然と口角が上がる。
端から見れば不審だろうが、ここは皆を笑顔にするイルティパークだ。不意に笑い出しても可笑しいとは思われない。
「イオ、ヒカリ、キレー」
「配置や色もこだわっているようだな。人工物でここまで魅せるとは、流石としか言えないよ」
「マタ、キタイ。ココ、ズット、アル」
「そうだな……アンタの腹が持つならいいよ」
「ヤッタ!」
「その前に、この世界の座標を忘れそうだな」
「ウグッ」
痛い所を突かれて呻くジャピタ。軽く笑いながら、イオもその案には前向きだ。このパークは息抜きに丁度いいだろう。
ロクーラは常に改善を繰り返しているらしいから、何回来てもジャピタは楽しめる。
イオはシゲキトロンの果実水を飲む。完璧だ。
何せ、このパークに閉園の二文字は永久に訪れない。
総支配人は何度か代替わりしているらしいが、全てが見かけを変えたロクーラだろう。
ロクーラの願いは最初から一貫しており、イルティの夢である『世界中の人々は笑顔でいる事』だ。
イルティが自分を陥れた団員達を憎まなかった様に、この願いの人々に例外は存在しない。
即ち、動力源として苦痛の日々を送る団員達も含まれている。団員達が心の底から笑顔にならなければ、夢が叶っていないと同義だ。
どれほどの苦痛が与えられているかは分からないが、心から笑うなど出来ないだろう。それは事実上、このパークが永遠の存在である事を意味する。
外から来た人々を楽しませる娯楽であり、罪人を苦しませる地獄でもある。イオ達が手を貸した時と同等レベルの復讐に、感嘆しか出ない。
「イオ」
「何だ?」
「マタ、クル。ボウシ」
「買わない」
「ウー!」
出口付近の店で、またピエロ帽子が欲しくなったらしい。買ったところで、収納魔法の肥やしにもならない。
諦めきれないのか、名残惜しそうなジャピタの手を抓る。
「イタッ」
「買わないからな。それよりも、次に餌に期待した方がいいぞ」
「エサ! ワカッタ!」
おやつだけでは足りない。次に食せるだろう餌に、ジャピタの気分が元に戻る。
そのまま、ピエロスタッフに見送られながら、イオとジャピタはイルティパークから外へ出ていった。
人の夢は儚いもの
これにて、愛嬌ピエロは幕下ろしです(誤字修正しました)
短編を上げたいのとリアル事情より、二週間ほど空けてから次を上げます