エピローグ.ジャピタ視点
ジャピタ視点でエピローグ
パチッと、ジャピタは目を開けた。
知らない岩の部屋だ。海の中みたいで、少ししょっぱい水が天井まである。
ジャピタはお気に入りの寝具の上にいた。久しぶりに眠ったようだけど、その前に何があったかは覚えていない。
それよりも、イオは何処だろう。
首を動かして、すぐに見つかる。広い部屋で、小さくなって眠っている。
もっとのびのびとしていいのに、イオはしない。
慣れないからと、イオは笑って言う。でも、いつもは胸を張っていて自信満々なイオが、丸くなっている姿は悲しくなる。
ドロドロの泥の中で、一つだけ咲いた大きな花。初めてイオと会った時に、そう思った。
いつも独りで、お腹が空いていた。
いろいろな所へ行って、美味しそうな負の感情が欲しいから力をあげて、むしろお腹が減って疲れたから眠る。ずっとこの繰り返し。
自分はジャシンという存在だけど、よくわからない。
ただ、ちょっと力をあげただけで皆壊れる。
ジャシンだからかもと思うけど、だからといってどう変えればいいか知らない。
いつも通りに起きたら、変な建物にいて驚いた。でも、負の感情がいっぱいだから特に気にしなかった。
その中で、凄くキラキラしている負の感情を見つけた。ジャピタのご飯は、量に限らずドロドロしている。だから、キラキラは初めて。
真っ先にそこへ行って、持ち主に会った。
他の人魚は疲れきってドロドロだったけど、その人魚は見た目も綺麗でびっくり。
少し話すと、頭がよくてしっかりと感情を抑えているとわかった。
いつもは皆、怒ったり泣いたりして顔をコロコロ変えている。
それに、力の交換を断られた。それも初めて。
イオレイナだと呼んだら笑顔になった。心がポカポカする、綺麗な笑顔。
ジャピタと、渾名をつけてくれた。嬉しくて嬉しくて、ニコニコが止まらない。
ずっと一緒にいたい。初めてそう思った。
そもそも、生き物が気になる事が今までになかった。
何となくだけど、イオとジャピタは一緒にいるべき。持っている力が、そう言っている気がする。
仲間にするやり方も、考えたら出てきた。
でも、イオはしないって断った。どう話せばいいか思いつかなかったから、記憶を伝える事にした。
本当なら、伝える記憶の量によって、相手は壊れてしまう。
けれど、イオなら大丈夫だと自信があった。その通りになって、ますますイオと一緒にいたい気持ちが増える。
時間が経てばきっと、受け入れてくれる。そんな気がして、イオの傍に居続けた。
イオはたまに部屋の外に出る。
魔法で隠れて着いて行ったら、酷い事をされていた。沢山の人魚が死んで、イオがいつ死ぬか分からない。イオはクリアしているけど、イオの分だけ何でか難しくなっている。
目の前からイオがいなくなる。とても怖い。身体が震えた。
それから、イオを虐める奴らの証拠を、隠れて映像を残し始めた。毎日同じ事をして、イオを殺そうと言う。酷い悪人だ。
どのくらい集めればいいか分からなかったけど、イオが危ない時に全部の証拠を流したら助かったみたい。良かった。
それと、イオの新しい部分を見つけた。誰かが転落する様子が楽しいらしい。イオの満面の笑顔に、ジャピタも釣られて笑顔になった。
楽しむイオはとても輝いていて、眩しいくらいだった。
あまり覚えていないけど、ジャピタの食事とイオが好む展開。違う時もあるけど、同じ時もあった気がする。
だとすれば、自分と一緒にいればイオも楽しく過ごせる。
やっぱり、イオの傍にずっといたい。傍にいてほしい。他はいらない。
自分だけが、傍にいたい。
その願いは叶った。
イオは、ジャピタと一緒にいると決めてくれた。
あの喜びは、いつまでも忘れない。
ケンゾクという者になったイオも、綺麗だった。
ジャピタの力だとヒシヒシ伝わってきて、自分と同じジャシンになったとわかる。これで、イオは自分の傍に永遠にいる。
大満足だ。
賢いイオ。
優しいイオ。
綺麗なイオ。
自分にだけ心を開いているイオ。
イオが傍にいてから、力の取引がスムーズになった。眠る必要がなくなった。毎日が面白くて、楽しくなった。
もう二度と、イオと出会う前に戻れない。
戻る気もない。
イオを手放す気など全然ない。
絶対、絶対、イオから離れる事も離す事もしない。
寝具から降りて、イオの傍に行く。イオがしてくれるみたいに、尾で頭を撫でた。サラサラの髪が気持ちいい。
「イオ〜。ズット、ズット、イッショ」
最初に会った時から、その想いだけは変わらない。イオはジャピタを子供扱いするから、何度言っても真面目にとってくれないのは不満だ。
返事はなくて、すーすーと寝息が小さく聞こえてくる。イオも疲れたみたいだ。ジャピタは寝具に戻り、目を瞑る。
あと、何十年くらい眠ったら、すっきりと起きるだろう。
そうしたらまた、イオと世界を渡る。
どんな世界でも、イオと一緒なら楽園だと、ワクワクしながらまた眠りについた。
それは独占欲だと、教える者はいない
これにて五話完結でございます。
一回お休みして、来週六話目スタートです。
アクセス数増えてニマニマする日々です。
いいねもブクマも感想も全部お待ちしております!!!