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4

 

 修行(実験)対象者の動揺や考えなどを機械音声が知る由もなく、淡々と内容を伝えた。



『ダイヤル錠の解除を行ってください。既に四文字中、一つあるいは二つは固定されております。残りを当ててください。数字を合わせて錠を引き上げる行為を一回とカウントします。

 十回以内に開けてください。十回外しますと、それが引き金となって拘束者に落雷魔法が発動します。スタートから二時間経過しても同じです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それでは、スタート』


 あっという間に、修行という名の実験が開始された。逃れられない運命に、何人もの啜り泣く声が聞こえてくる。


 それもそうだ。見たところ、ダイヤル錠の数字は0から9。

 100通りの組み合わせの中から、正解の一つを十回以内に当てなければならない。制限時間を超えても失敗となる為、自力で10%を当てるしかない。

 自分の命を強制的に賭けさせられているのに、分が悪すぎる。

 為す術なく、嘆くしかできないだろう。10-07は改めてダイヤル錠を手に取り、それに気づいて目を見開いた。




 固定されているダイヤルがない。()()()()()()()()()()()()()()()()




 反射的に舌打ちしようとして、なんとか押し留めた。視線を動かし、水槽の外にいるサングラスを見つける。

 遠くだからはっきりと映らないが、ニヤニヤと不敵に笑っている雰囲気を出している。

 10-07は溜め息をこぼした。妨害工作する程に、自分を嫌っているようだ。そして、サングラスも()()()()()()()を知らないらしい。



 アナウンスが言っていた、血液と気の流れを感じる。

 そこを意識すると、身体中を巡る不思議な力を感じ取れるのだ。


 恐らく、()()


 転移魔法の際、宝玉から漂う魔力に似ているからだ。

 最初の直感修行を運良く乗り越えた後、暇さえあれば愚直にアナウンスの指示に従った。それしか、縋るものが無かった。

 しばらく続け、ある日ふと気づいたこの力は、直感修行の答えを示してくれる。

 魔力を指先と目に集中させる。ダイヤル錠に流れていく自分の魔力を眺めていると、四つの数字へ集まっていった。


 4、9、8、9。

 何となく、良くない並びだと口をへの字に曲げる。本能で嫌な予感は忌避するもの。

 今回の修行は、失敗者が多そうだ。


 数回ほどわざと失敗し、正しい並びにして錠を上げた。

 軽い金属音と共に鉄輪が外れ、自由の身となった10-07は上へと泳ぐ。

 わざわざ、嗚咽や断末魔が飛び交う場所にいたくない。

 水上に顔を出すと、顎や耳から雫が垂れる。命の危機が終わったと、やっと実感した。


「ちょっ! なんで()()()生きてんの!? やっぱり不正じゃない!」

「アレ? まさか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 水槽の縁に設置された板に乗ろうとした所、05-19が噛み付いてきた。

 丁度いいと軽く揺さぶってやれば、口ごもって黙っている。その反応が自白に近いというのに、周りはこちらへ敵意を向けている。

 05-19のカリスマ性は、賞賛に値するものだ。


「あと、いの一番に成功したアンタにとやかく言われたくないな」

「どういう意味よ!? っざけんじゃないわよ!」


 事実を口にしただけで、05-19は過剰に食いかかってきた。甲高い罵倒も敵意も無視し、10-07は水中を見下ろす。


 今、水中にいる内の半数が失敗者のようだ。長い髪は逆立ち、力をなくした身体が水に合わせて揺れている。

 鉄球が重石となって、その場に留まっていた。

 焼け焦げた皮膚が痛々しく、時たま上を向く顔は苦痛の形相で固まっている。

 焼けて白く濁った眼球が、成功者を虚ろに眺めた。



 まるで、こちらを呪い祟ろうとしているみたいだ。



 実際、そう考えていただろう。10-07が同じ立場ならそうしていた。初回でこれなら、尚更だ。

 濁った瞳をした10-68に少しだけ同情を示し、10-07は顔を上げて端の方に座り終わりを待った。


デスゲーム感出したかった。

わりかし好きです、デスゲーム系

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