エピローグ
短めです
「あーあ……」
「イオー?」
時空間を泳ぐイオは、突如自身を襲った感覚に思わず尾を止めた。前を泳いでいたジャピタが、不自然に思って振り返る。
細い糸が引っ張られ、限界を超えて千切れた。その感覚に、予想通りだと頭を搔く。
「ドウシター?」
「何回か前のゴブリン共、全員が約束破ったみたいだ。宝玉送りになったよ」
「アーア」
イオの説明に、ジャピタが納得する。凡そ一年位だ。ゴブリンにしてはもった方だろう。
復讐者の望みは、真実を人間達に教えて汚名を晴らす事と、復讐対象者を自分達の孕袋にする事。
それを叶える為の計画を考え、ゴブリンキングに叩き込む。
その間、イオには一抹の不安がずっと付きまとっていた。
ゴブリンに限らず、知能が低い魔物が取引相手の場合、イオとジャピタを崇拝する傾向がある。そして、自分達が邪神の加護があると勘違いするのだ。
邪神という存在が目前にいるのだから、崇拝は仕方ない。だが、その対象が自分についているという過信は困るのだ。
邪神の加護を得たと勘違いした者は、至る所で邪神を名を持ち出す。それを聞いた者達がまた他人に話し、イオ達の存在が広がっていく。
一つの世界で存在を知る者が増えれば増える程、イオ達はその世界に囚われる。
そうすると他世界に渡りにくくなり、最終的にはその世界の邪神と位置づけられる。
様々な世界を回れる、今の生活をイオは楽しんでいた。
ジャピタは最初から旅をしており、一つに留まるという選択肢は元から無い。
だからイオは復讐者に、自分との関わりの他言を禁じているのだ。
それが守れるなら問題ない。だが、ゴブリンという種には不安があった。
何度か取引した事があるが、物の見事に裏切られた。本能に忠実な分、約束事がすっぽ抜けるらしい。
そういう時、イオは予防線を張る。約束破りには死の制裁を。
今回、ゴブリンたち取引の代償として物ではなく、宝玉の設置を求めた。
あれは尊厳を奪われ、出産を繰り返すピクシー達の嘆きを集め、こちらに送る転送装置だ。
同時に、約束を違えたゴブリンを閉じ込める檻でもある。
深海をイメージした、出口のない水獄だ。今頃、約束を違えたゴブリン達の溺死体が揺らいでいるだろう。
一度の約束破りでやり過ぎだと、向こうは思っているかもしれない。
だが、こちらは神だ。神との約束事は厳守、破れば報いを受ける。
それは、どの世界においても共通事項だ。
ましてや、対面して交わした代物だ。守れなかった罰は重くなるに決まっている。
そこには、情も何も無い。
「アタシはちゃんと忠告してるけどな。何で守れないのだろな」
「シラナイ。キョウミナイ」
「それもそうだな」
今更、興味を持ったところで仕方ない。ピクシーの嘆きを受けている間、たまに思い出す程度だろう。
さっさと気持ちを切り替え、次の世界へ進み直した。
勢いに乗り過ぎて、一線を超えてしまった。
以上で3話目完結です!
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