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同性愛表現強め

 

 クレゾントは告げる。




 ただただ、楽をしたいが為にガッサーがついた嘘。

 それは本当の生まれ変わりであるブルーノを、迫害する為の剣となった。

 意識的にダメージを抑えているが、長年の悪意はブルーノの魂を弱らせ、クレゾントの力となった。




 長期に渡る封印と、同胞への仕打ち。

 それに対する負の感情が隙間から溢れ出し、邪神(イオ達)を呼び寄せた。ティガルが言う通り、封印の綻びによってできた芸当だという。


「つまりは、人間達の自業自得だな」

「そ、そ、そうなんな」


 まさに、ティガル含む悪魔達の狙い通り。欲深い人間が長年の習性を都合よく使った結果だ。大人しく受け止めればいい。

 しかし、それ程までに力があるとしたら、封印を破れるのではないか。わざわざ邪神を呼び寄せた理由がわからない。


「アタシらを呼ばなくても、普通に出れそうじゃないか?」

「それはそう。ち、力任せなら、出られる。で、で、でも、それだと、()()()()()んだよ」

「クダケル?」


 頭を捻るジャピタに、クレゾントは首を縦に振る。イオは少し考え、納得のいく答えがすぐに見つかった。


 要は固有魔法の名前通り、魂そのものがクレゾントにとっての鉄の牢獄だ。

 錠を開けた扉か破壊して開けた穴からしか出られない。破壊を選んだ場合、魂そのものも砕け散る。



 それは今の持ち主である、ブルーノの死を表す。



 この世界では転生があるようだが、魂が破片となってしまっては無理だろう。

 つまりはイチロー・タナカの魂は消滅するしかない。ブルーノも同じだ。

 その結論に至ったイオは驚いた。想像していた魔王像は、封印などした人間に容赦などしないと思ったからだ。


「意外だな。聞いてた話だと、そういう所を気にしないと思っていたが」

「あ、あー……うん。僕も、ぶ、ブルーノじゃなかったら……」

「うん?」


 妙に歯切れが悪い。ブルーノが陥れられている現状だからこそ、破壊のチャンスがある状態だ。

 矛盾した事を述べるクレゾントは、頬を赤らめて指をモジモジとさせている。

 何か変だが、下手に問わずに聞きに徹する。やがて、意を決したクレゾントが、頬に手を当てて呟いた。





「………………ずっと観てて、その、えっと……ほ、ほ、ほ……惚れたんだよ」

「……え」

「だか、だから! ブルーノ、欲しくなっちゃったんだよ! 魂ぶっ壊したくない!」

「エエエエ!?」


 思わぬ展開に開いた口が塞がらない。唖然とするイオ達の前で、クレゾントは締りのない顔で話を続ける。




「も、もう、可愛いしカッコイイしで魅力しかないブルーノだけどやっぱり一番は周りが阿呆で陥れられてんのに人間の為って頑張ってる所がいい! い、い、今までの生まれ変わりはあのクソデブみたいな奴しかいなかったんだけど、ブルーノは比べんのも烏滸がましい位にキラキラ輝いてて何もかもが霞むレベル! り、凛としてて綺麗! スキ!

 そんなのに周りの人間がここぞとばかりに汚すの、はぁー胸糞悪。スキでスキでダイスキで堪らんわ早くこっから出て安心させて結婚して子供いっぱい作りたい悪魔と人間ならどっちでもイけるけど僕の子供産んで欲しいそれよりも先に周りの阿呆共に地獄見せんと」




 一度、口にした事で歯止めが効かないようだ。吃音の癖はどこにいったのか、流暢に話すクレゾントに背筋が凍る。



 これ程の狂おしい愛情を、向けられているブルーノは気づいていない。否、気づける訳が無い。



 辛うじて自分を認識している相手に向ける愛としては重すぎる。それを指摘する者がいない空間も、より感情の激しさに拍車を掛けているようだ。

 少し話した後、クレゾントは思いついた様に後ろから何かを取り出した。それをイオに差し出しながら、満面の笑みで言う。


「く、口だけだと、魅力伝えきんないから、これ読んで!」

「コレ、ナニ?」

「ブルーノの観察日記!」


 正直、読みたくない。そもそも、封印されている状態で観察日記とは自由すぎる。

 イオはそう考えたが、クレゾントは是非とばかりに差し出したままだ。クレゾントとジャピタは何処と無く似ている気がして、邪険にできない。


 恐る恐る冊子を取り、数頁だけ捲って閉じた。案の定、重い愛情と幸せな妄想がありったけ詰め込まれていた。

 これは完全に付き纏い、ストーカーとも呼ばれる行為で間違いない。相手が知らない分、タチが悪い。


「ミセル、ダイジョウブ?」

「そそ、そっちはセーブして書いたから、見せんの平気!」

「これで?」

「ブルーノは腐った掃き溜めの地界に奇跡的に生まれた光り輝く宝石だ! ぼ、僕の語彙力で表しきんないよ!」

「ワカル!」

「嘘だろジャピタ!?」


 手と尾を取り合うクレゾントとジャピタ。似た者同士、感性も似ているようだ。イオには分からない。

 ただ、このままでは話が進まない。二人の距離を取らせてから、改めてクレゾントに向き合う。


「話をまとめるぞ? 人間達の所為でブルーノは弱っていて、同時に封印も弱まっている。アンタはここから出ようと思えば出れるが、それはブルーノの死と引き換え。ブルーノに惚れに惚れてるアンタは殺したくないから、ここに残っている。ここまでは合ってるか?」

「あ、うん」

「ブルーノを死なせず、ここから出る。そして、ブルーノを虐げた人間達を駆除する。その為だけにアタシらを呼び寄せたのか?」

「そそ、それはちょっと違う」

「違う? なら、どういうつもりで邪神(アタシら)を?」


 そもそもの話。時空間にいたイオ達を呼び寄せるには、かなりの負の感情と強大な力がなければできない。

 しかし、目の前のクレゾントは掴みどころのなく、負の感情の有無などが分からないのだ。

 常に飄々としている。ティガルが話していた通りだ。機敏が読み取りづらい。


男だとヘタレ恋愛重が好きで、女だと腹黒恋愛激重が好きです

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