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第九話 イノリが悪い

 そして今日もスーに起こされることはなくイノリは目を覚ます。


「......腹減ったな」


 そう呟き横を見るとエルザは珍しいことにまだ眠っていた。

 そしてイノリはマーカーペンを創造しエルザの顔に落書きをする。


「ふー、なかなかじゃないか?」


 そしてそんなエルザの顔を眺めているとやがて笑いが込み上げてくる。

 そうして笑っていると当然エルザも目が覚めてくる。


「......ん? イノリ、さん?」


 エルザは何がそんなに面白いのかとイノリに聞き首を傾げる。

 今のエルザの顔で首を傾げられ、また笑い出すイノリ。


「イノリさん? ほんとにどうしたんですか?」

「ぷっ、くふ、いや、なんでもない」


 エルザは不思議そうにするものの昨日の夜は何も食べていなかったことを思い出し朝食はまだですか? と言う。

 イノリは笑いを堪えながら朝食を、うな重を創造する。

 スープの類も創造しようかとも思ったがエルザの顔を見てやめる。

 あの顔を見たら吹き出してしまいそうだからだ。


「やっぱり鰻は美味いなぁ」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「団長、何かいい匂いしませんか?」


 一人がそんなことを言う。

 すると他の騎士ら兵士も匂いを感じとったらしくざわざわししだす。

 そんな匂いを騎士団長のガイア・ギシューテも感じとってはいた。


(こんな森の中、地獄の森の奥深くでこの匂いはありえない......罠か? それとも高度な幻覚か......)


 実際はただイノリ達が朝食としてうな重を食べているだけなのだが。

 それを想像しろと言うのは難しい話だろう。


「団長、どうしますか?」


 ガイア・ギシューテは少し迷うがやがて匂いの方向へ行くことにする。

 今は少しでも手がかりがあればと。

 そして匂いの方向へ歩くこと約30分、男の笑い声が聞こえてくる。

 30分もかかってしまったのは細心の注意を払っていたためだ。


「何だ?」

「男の笑い声......ですね」

「こんな所で、か」


 そんな男の笑い声に続き女の......よく知ったエルザの声が聞こえてくる。

 そんな声を聞いた瞬間騎士や兵士が何かを言おうとするもガイア・ギシューテはそれを止めて、慎重に進むように言う。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 そこではまだエルザはイノリの笑っている理由が理解出来ていなかった。

 ただ、一つだけ分かっていることがある。

 イノリが自分を見て笑っているのだと気がついたのだ。


「イノリさん! どうしてそんなに笑っているのですか!?」

「くっ、ふっふふ、いや、なん、でもない」

「嘘です! どう考えても私を見て笑っているじゃないですか」


 イノリはそろそろ限界だと思い手鏡をアイテムボックスから取り出そうとするがその瞬間後ろの方から声が聞こえてきた。


「エルザ様!」


 そう言って洞窟、ダンジョンに入ってきた何人かの騎士と兵士、そしてその場を仕切っているガイア・ギシューテ。

 ただ、そんな者たちはエルザの顔を見て唖然とする。

 一方のエルザは顔を青くしていた。

 その顔を見たイノリは流石に今笑うのはまずいと思ったので俯く。

 そして騎士や兵士も笑いを堪えているようだ。

 流石にガイア・ギシューテは笑う素振りを見せないが。


「え、エルザ様、その見た目は?」

「......みた、め?」


 エルザは訳が分かっていなかった。

 自分を追ってきたと思われる者たちが来たと思ったら突然そんなことを聞いてくるのだから。

 エルザがイノリの方を見る。

 するとその視線をガイア・ギシューテが追いようやくそこでイノリの存在に気がつく。


「貴様は?」


 ガイア・ギシューテは腰の剣に手を持っていきそう尋ねる。

 イノリもこれは笑っている場合ではないと理解しエルザの方を見ないようにしながらどう答えるか考える。

 考えながらイノリは鑑定眼でガイア・ギシューテのステータスを覗く。


 レベル:93

 名:ガイア・ギシューテ

 種族:人間

 クラス:騎士団長


 今度はイノリが唖然とした。

 93レベル、イノリにはその強さが想像もつかなかった。

 いくら人間と魔王とはいえこれだけレベル差があればイノリも不味いのではないかと思った。

 イノリはいつでもアイテムボックスからオーガギガの持っていた大剣を取り出せるようにしながら答える。


「俺はただの人間ですよ」

「ただの人間がこんな所にいる訳がないだろう」

「エルザはただの人間じゃないと?」

「エルザ様だ、敬称をつけろ」


 イノリはどうするか迷う。

 そんな時エルザがイノリに声をかける。


「ご、めんな、さい......今まで騙していて......わたし、はカエンズ侯爵家の一人娘......私は知らない人との結婚が嫌で逃げ出したんです......」

「エルザ様、侯爵様はエルザ様のことを思って......」


 イノリはエルザの言葉にどう反応したらいいのか分からなかった。

 元々鑑定眼で知っていたのだから......だからこそいつかは面倒なことになると思っていたのだから。

 こんなに早いとは少し予想外だったが。

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