第三話 スライム
「んー、よく寝た」
イノリは起きて直ぐに昨日創造しておいたおにぎりを取り出しステータスを覗き込む。
「よし、MPは回復してるな」
MPの回復を確認したところで今日は何を創造しようかと考える。
「んー、仲間欲しいな」
イノリが思いついたのは魔物を創造することだった。
しかしイノリのMPでは魔物が創造出来るかが不安だったので取り敢えず前世でプレイしていたゲームの弱キャラの代名詞のスライムを創造することにした。
「どうせならダンジョンコアの知識で魔物の創造にかかるMPを教えてくれればいいのにな......」
そうは思うもののどうしようもない事なのでスライムを頭の中に思い浮かべる。
そうすると目の前に半透明の青いぷるぷるしたスライムが創造された。
イノリはステータスを確認する。
「MP消費90......最弱と言われているスライムで90......いや、まだスライムを鑑定していないじゃないか」
希望的観測だと言うのはイノリも理解していたが今はそれに縋りたかった。
そしてイノリは鑑定眼を使う。
レベル:1
名:無し
種族:スライム
クラス:無し
HP:5/5
MP:6/6
魔力:2
筋力:1
耐久:3
俊敏:2
固有スキル:無し
スキル:無し
スライムのステータスを覗いたイノリは内心ホッ、とするのだった。
いくらなんでもスライムよりMPが低いわけはないだろうと思ってはいたが、もし万が一と考えてしまっていた。
「よかったぁ......ん? いや、よくなくね? 俺はこの最弱スライムを創造するのにMPを90も消費したんだよな? だったら魔物、スライムしか創造出来なくないか?」
そこでイノリはゴブリンなら出来るんじゃないか? と思ったが流石にゴブリンはちょっと......と思ってしまったのでやめておくことにした。
スライムと大して変わらないだろうということも創造しない理由としてあったが。
そう考えているとスライムがぷるぷるしながらイノリの足に寄ってきた。
「かわいい......」
そう呟く。
まぁ、最初から期待していたわけではなかったからと思い、スライムの名前を考える。
「んー、スライムのスー、お前の名前はスーだ」
鑑定眼でステータスを確認したところ名前がスーになってるのが確認できた。
相変わらずぷるぷるしているスーをつついたりしてしばらくの間イノリはスーと遊ぶのだった。
「ふー、随分遊んだな」
そう呟き少し洞窟の出口を見ると暗くなり始めてるのが分かった。
ステータスを確認するイノリ。
「お、残りMPが53まで回復してるな」
もう一匹スライムを創造しよう......とは微塵も考えずに何かの定食を創造したらどうなるのかと思いハンバーグ定食を創造してみることにした。
そしてイノリの目の前にはご飯にスープハンバーグにレタスといったイノリが頭に思い浮かべた通りのハンバーグ定食が並んでいた。
「やっぱ美味いなぁ......」
消費MPは30、オムライスと同じだった。
他のものがついてくるからイノリはオムライスより消費が大きいと思っていたのだが同じなら同じでラッキーと思うことにした。
「後23か.....使い切ってから眠りたいよな」
イノリは前世のゲームでも時間で回復するものは消費しておきたいタイプだった。
「あと少し待って卵でも創造するか?」
そう呟くも調味料を創造することにした。
調味料なら小さいしMP20ぐらいで創造出来るのではないか? と思ったからだ。
そしてイノリは早速醤油を創造した。
「よし! 消費MP20、予想どうりだ」
そうしてイノリが喜んでいるとスーも横でぷるぷるしだして喜んでいるように見えた。
イノリは醤油をアイテムボックスにしまい、スーに夜は任せたぞと一言いいベッドに横になる。
そして一分もしないうちに眠りにつくのだった。
「んー、あー」
目が覚めベッドで思いきり伸びをするイノリ。
そして昨日はハンバーグ定食を創造したので今日はハンバーグだけを創造して消費MPを確認しようとしたところでスーの上に眠っている服はボロボロ、身長は160cm程の長い金色の髪の女の子に目がいく。
「......は?」
イノリには何がおこっているのか分からなかった。
そもそもスーは一応ダンジョンを守るために創造されているというのに何故侵入者と一緒に眠っているのかも分からなかった。
ただイノリの中で一つの仮説が生まれた。
(まさか今もスーは実は抵抗しているがステータスが低すぎて全く無意味......なんてことはないよな?)
ない......ともいいきれないので取り敢えずスーの上に眠っている女の子のステータスを覗く。
レベル:8
名:エルザ・カエンズ
種族:人間
クラス:貴族
HP:327/536
MP:539/943
魔力:360
筋力:56
耐久:80
俊敏:139
固有スキル:無し
スキル:交渉Lv3
「貴族かよ......ん? MP上限943!?」
その声でスーの上で眠っている女の子......エルザ・カエンズは少しづつ覚醒する。
そして最初にスーが目に入りその後にイノリが目に入る。
「あ、あなたは?」
そんなことを聞いてくるが今のイノリには聞こえない。
それぐらいショックが大きかった。
そんなイノリにエルザ・カエンズは怯えたような警戒の視線を向け続けるのだった。