不発
「フェルー、待ってたぞ〜」
イノリは口角が上がるのを我慢しながら、帰ってきたフェルに向かってそう言う。
スーはもう奥に引っ込んで寝ている。(?)
「イノリ……怪しい」
「な、何を言ってるんだフェル君。僕はこの美味しい食べ物をフェル君に食べてもらいたかったんだよ」
「……怪しい」
「まぁまぁ、食べてみれば分かるって」
「エルザ、イノリの行ってること、ほんと?」
一度イノリに騙されているフェルは慎重にエルザに確認する。
「私は食べてないので分かりませんね」
(ふはははは、エルザは既に買収済みなのだよ! 美味しいとは言ってくれなかったが、まぁいいだろう)
「ほら、フェルの為に特別に創造したやつなんだよ。フェルが食べないなら仕方ないか……俺が食べよう。勿体ないしな、こんな美味しいもの食べないで残すなんて」
「あ、あ、や、やっぱり食べる!」
イノリは内心で微笑みながらフェルに最悪の食感で不味いキャビアを渡す。そして、大きめのスプーンも渡す。
「ほら、これでいっぱいすくって食べてくれ。一気に食べると美味しいんだよ」
「うん。分かった!」
そしてフェルはさっきまで疑っていたことをまんまと忘れ、イノリの言うことを素直に信じ、大きめのスプーン一杯に乗せたキャビアを口に入れる。
「美味しい!」
「は?」
「イノリ! これ美味しい!」
そう言ってそのキャビアをパクパクと食べるフェル。
(え? 嘘だろ……あんな食感の気持ち悪いものをよく食べれるな……あ、エルザもなんか驚いてる……そりゃそうだよな、俺が食べた時、すっごい苦々しい表情になってたと思うし)
「エルザも食べる?」
「え、あ、えっと……でしたら一口、だけ」
「うん」
フェルはエルザに向かいキャビアを乗せたスプーンを突き出す。エルザは恐る恐るといった感じで口に入れる。
「お、美味しいです」
「もう、あげないよ」
「イ、イノリさん!? な、なんであんなに美味しいんですか!?」
エルザがイノリに近づき小声でフェルに聞こえないようにそう言う。
(いやいや、俺も知らん。なんで? こんなはずじゃなかったんだが)
「さ、最初に言っただろ? 美味しいって、エルザが俺を信じないからだ」
「だ、だってイノリさんの顔がとても美味しいものを食べているような感じじゃなかったじゃないですか」
「そういう演技だよ。エルザが俺のことを信じてくれるかを試したんだ」
「……適当に言ってるだけじゃないですよね?」
「そ、そんな訳ないだろ!?」
「……そうですか?」
「あぁ」
イノリは奥に行き、スーと眠ることにした。
(もう知らん。味音痴共め! 今度は絶対失敗しないし)
「スー、お前だけだよ、俺の癒しは」
ぷるぷるしてるスーの横に寝転び、明日は何しようかと考えながら眠りにつくイノリだった。




