第二十二話 キャビアとトリュフ
イノリは目を覚ましてしまう。
「眠......寝よ」
「あ、寝ないでください」
「確かに睡眠が必要な体かと聞かれたら微妙だが、よくそんな平気な顔でそんな酷いことが言えるな」
「何も酷くありませんよ! 何時間寝てたと思ってるんですか。私も昨日は悪かったと思い起こさなかったんですから」
「何時間寝てたの?」
「18時間ぐらいですね」
イノリはまぁ妥当だろ。としか思わなかったが口には出さない。面倒くさそうだから。
イノリは辺りを見回し、フェルとスーが居ないことに気がつく。
「フェルとスーは?」
「イノリさんがなかなか起きないので外の魔物を食べてくると言ってスーを連れて行きましたよ」
「フェルはともかくスーって食べなくても平気だろ」
一瞬スーの事が心配になるがフェルがいるのなら多分大丈夫だと思うことにした。(そう思わないと心配だし)
イノリはやっぱりもう一度寝ようと思い眠ろうとしたところでぐ〜と音が聞こえたので音の方向を見るとエルザが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。
イノリはそう言えばエルザは何も食べれてないんだったなと思ったが恥ずかしそうにしているので気づかなかった振りをして眠りにつこうとするがエルザになにか食べ物を出してくださいと催促されてしまった。
(チッ、ここで恥ずかしがって誤魔化してくれたらそのまま寝れたのに)
何を創造しようかと悩むがイノリは今食欲より睡眠欲が勝っているのでイノリ分を用意する必要が無い。だったらとイノリはある実験をしてみようと思い、思いつく限りの豪華なものを創造してみようと、キャビア、そしてトリュフを創造したのだがMPが120も持っていかれてしまった。キャビアとトリュフだけでお腹が膨れるはずがないとはイノリも思うがエルザには我慢してもらおうと思った。エルザがいるのでMPはすぐに回復出来るのだが早く寝たい。今のイノリの頭にはそれしか無かった。18時間も寝たのだからどれだけ寝るんだよと思うかもしれないが案外それぐらい寝た時の方が眠たかったりする。
「どぞ、後で感想よろしく」
おやすみと言っておこうか迷ったイノリだが言えばまたどれだけ寝るんですか! とか言われそうなのでやめた。
「ちょ、ちょっとイノリさん! なんですかこれ」
イノリは早く寝たいので無視することも考えたが無意味だと判断し質問に答える。
「高級食材だ」
それだけを答えイノリの意識は闇の中へ行くはずだったのだが邪魔が入る。もちろんエルザだ。
「高級食材だ。じゃありませんよ、そうだとしても全然お腹が脹れませんよ!」
イノリは思った。人(?)が寝ようとしてるのにこんな大声を出すなんてなんてやつだと。
「貴族の令嬢だろ、そんながっつくなよ。はしたないぞ」
「た、確かに私は貴族ですがだからこそ飢えなんて感じたことないんですよ! あとがっついてませんから、これは少なすぎます。そもそもこれだけで食べるものなんですか?」
「知らん」
「はい?」
「だから知らないって、言っただろ? 高級食材だって、俺に食べる機会なんてないよ。あと食べたことないから多分味とかも俺の想像した味になっちゃってると思う。だから言ってみれば見た目だけの偽物だな」
イノリはただの一般人だったのだ。キャビアやトリュフの味など知ってるはずがなかった。親戚に貰うという可能性はあるのかもしれないが生憎とそんなことは無かった。エルザに感想よろしくと言ったのももしかしたらイノリが想像した味と違い本物のキャビアとトリュフの味になっているかもと思ったからだ。ちなみにだがイノリはわかりやすいようにとキャビアはハンバーグ。トリュフは餃子の味を想像しながら創造した。
後イノリの予想ではMPがこんなに減ったのもあべこべなことをしたからだと思っている。
それをエルザに説明したところ......
「な、なら最初からハンバーグと餃子と言うものを創造してくださいよ!」
「いつかは試そうと思ってたんだよ。それで今が絶好の機会だと思ったんだ」
「後、感想と言われても私ハンバーグと餃子食べたことないのでせめて私の食べたことのある食べ物の味で創造してください」
「......確かに」
イノリとしては残念なことにすっかり眠気がなくなってしまったのでエルザにMPを回復してもらい普通の料理を創造した。
そしてエルザに食べさせようとしていたキャビアもどきはイノリが食べることになった。エルザが知っている食べ物の味にしておけば......と後悔しながら創造したスプーンでキャビアを口に運ぶ。
イノリの感想は、正直に言って吐きそうだった。キャビアの食感にハンバーグの味が合わなすぎる。きもっ、だった。
イノリは顔を青ざめながらエルザにこれ美味しいよとキャビアをエルザの前へ運ぶ。
「イノリさんの今の顔を見て食べようとは思いませんよ」
笑顔でそう言われてしまった。イノリはこれが日頃の行いか......と思いながら実験なのでとトリュフも口に運ぶ。
「......エルザ、これ美味しいよ」
「だからそんな顔で言われましても説得力ありませんよ」
イノリは後悔した。実験とか気にせずにエルザに食べさせれば良かったと。そしてイノリは思い出した。フェルの存在を、そして、今この場にいない存在になら食べさせることが出来るだろうと。
「くふ、くふふふふふふふふ」
イノリは笑いが堪えられずに溢れてしまう。
そんなイノリの様子をエルザは料理を食べながら冷めた目で見つめるのだった。




