第十二話 意味が分かりません!
「話し合いは終わったか?」
フェンリルがそんなことを聞いてくる。
(やっぱり聞こえてたか)
イノリは予想していたのでそこまで驚いてはいない。
そしてエルザはフェンリルの言葉が分からないのでイノリが翻訳する。
エルザは鑑定眼でフェンリルのレベルを覗いた訳ではないのでイノリの翻訳を聞いて驚いていた。顔には出さないようにしているみたいだがフェンリルは気づいているだろう。
※ここからのエルザとフェンリルの会話はイノリが全て翻訳している。
「......私たちはこの先に行きたいのですがあなたは何故私たちの前に現れたのですか?」
「ふむ、獲物を見つけ、殺しに来たとは思わぬのか?」
「それならもうとっくに私たちは死んでいると思うので」
エルザはこのフェンリルのレベルを見たわけではないがイノリが自分たちは死ぬと言っていたことから少なくともイノリではかなわない相手だと予想する。
「否定はせぬ、それに我とて不味いものをわざわざ好んで食べはせぬ」
「人間は美味しくないのですか?」
「少なくとも我にとってはな」
イノリは今の会話から自分が人間だと思われていると予想する。
イノリはダンジョンコアを抱えているがフェンリルは幸運なことにダンジョンを見たことがないのだろう。
そしてフェンリルがスーを見ても何も思わないのだからそもそも魔王と言うものを知らないのかもしれないなと思うイノリ。
エルザに魔物を従えているせいで魔王とバレたことを思い出していたイノリだが、すぐに今はそれどころでは無いと思い直しエルザとフェンリルの翻訳に徹する。
「でしたら何故私たちの前に?」
「この辺におる魔物が人間を美味だと感じてしまえば当然人間がいる場所へ向かうだろう。そうなればこの森に人間が大勢入ってくるかもしれぬ」
「......あなた程の強さがあれば人間に負けるとは思えませんが」
「我とて負けるつもりは無い。しかし人間が大勢入ってくることになれば他の魔物が人間を襲うだろう。その魔物が退治されてしまえば我の食料が減ってしまうであろう」
「人間が死体を全て運べるとは思えませんが」
エルザは遠回しに人間が残したものを食べては? と言う。
「我にそんな見苦しい真似をしろと?」
「い、いえ」
(人間の為を思って言ってるとは思わなかったがただ自分が食いしん坊なだけかい! しかもプライドも高いと来た)
「まぁよい、それで? 貴様らはこの先へ行きたいと申しておったが何をしに行きたいのだ?」
「人に追われていまして」
「それで森の奥に逃げ込もうと?」
「はい」
「追っ手がいるのなら尚更通す訳には行かなぬな」
「いえ、追っ手はいますがここへは来ません」
「なぜそう言いきれる?」
そしてエルザは人間にとっての地獄の森の常識を伝える。
「ならばよい、さっさと行くがよい」
「よ、よろしいのですか?」
「ここらの魔物は我より弱い、そこの者がおれば餌にはならぬであろう」
イノリを見ながらそんなことを言ってくるフェンリル。
ただ、フェンリルという圧倒的な力をもっているやつにそんなことを言われても信用出来なかったが。
フェンリルから見て弱くてもイノリからしたら強い可能性は大いにある。
しかしそんなことを考えても仕方ないのでフェンリルから許しが出たということで奥に進む......前にイノリはステーキを創造する。
何故こんな訳の分からないことをしているのかって? 好奇心には勝てないからだよ!
「取ってこい!」
そう言いイノリの力で思い切りステーキを投げる。
すると凄まじいスピードでフェンリルがステーキを追いかける。
取ってこいと言ったがおもちゃではなく食べ物なので持って帰って来るはずないなと思い今度こそ奥に進む......前にエルザに声をかけられる。
「な、なにをやってるんですか!? 馬鹿なのですか!?」
当然だろう、普通に考えれば怒らせば殺される相手にこんな馬鹿なことをすればこう言いたくもなるだろう。
「いや、ちょっとどうなるか気になったんだよ」
「意味がわかりません!」
「んー、骨とかの方がよかったか?」
「そんなことを言っているのではありません!」
「まぁまぁ大丈夫......かな?」
「貴方がやったことでしょう!? なに急に心配になってるんですか! 心配するぐらいならしないでください!」
「......悪い」
エルザの言っていることは正に正論である。
イノリはこのままではこんな森の場所で何時間も説教をされそうだったので何とか話をずらし森の奥に向かう。
フェンリルが戻ってくるのが怖かったとかでは断じて違う。
(某空手家が見てたら死ぬわあいつって言われるだろうな)




