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ダンジョン魔王に転生したけどMPが低すぎてダンジョンを守れる気がしません  作者: シャルねる


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第十話 逃亡

 ここで鑑定眼の事をエルザに話そうかと思うもやめる。

 今この場には騎士、兵士、そして騎士団長がいるのだ。

 イノリとしては迂闊に自分の情報は言えなかった。


「エルザ様、帰りましょう。侯爵様にもきちんとエルザ様のお気持ちをお話になられればきっと......」


 イノリは何も言わない。

 というか下手なことが言えなかった。


「そ、れは......」


 エルザはもう既に話していたのだ。

 ただ侯爵、エルザの父親は結婚こそがエルザの幸せだと考えていた。

 そして相手の方もエルザとの婚約話には乗り気でずっと前からエルザの知らないところで決められていたらしい。


「イノリさん......」


 エルザが縋るような声でそう呼ぶがイノリはエルザの方を見れない。

 そんなイノリこ様子を見てエルザは自分は邪魔者だったんだと思ってしまう。

 本島はエルザの顔の落書きを見たら笑ってしまうからなのだが......。


「さぁ、エルザ様行きましょう。それとお前にも来てもらうぞ」


 イノリの方を見ながらそう言ってくる。


「ま、待ってください......イノリさんは私を助けてくれたんです......そして私が無理矢理一緒にいただけなんです」


 エルザは自分で言っていて悲しくなったのか俯き目には涙を貯めている。


「だったら尚更来てもらおう」

「......」


 イノリは何も答えない。


「イノリさんにはこれ以上迷惑をかけられません」

「しかし、エルザ様の恩人であるならば尚更連れて行かない訳には......」


 イノリは自分が行っても大丈夫なのかを考えていた。


(俺が魔王だと分かる何かがある可能性も否定は出来ないんだよな......こんなことならエルザに聞いておけばよかったか)


 今更ながらに後悔していたがそれはもう遅い。


「行きますよ、ただその前にエルザの顔をどうにかさせてください」

「う、うむ、そうだな」


 ガイア・ギシューテもそれに関しては同意見だったようで直ぐに手配をする。

 エルザは理解していなかったようだが。

 そしてイノリはスーにこっそりとここを守るように言っておく。

 スーが戦力になるかは分からなかったがいないよりはマシだろうと考えながら。

 やがてエルザの顔の落書きを落としたのか歩き出した。

 当然帰りも最善の注意を払っているので一夜は地獄の森で明かすことになるのだが。


(はぁ、エルザはなんか勘違いしてるが、エルザと話すタイミングがないな......)


 イノリはそんなことを考えていた。

 そして野営の準備が始まる。

 そんな中でも当然エルザの護衛ははずれなかった。


「話すチャンスがあるとしたら夜か......」


 そう思い他の奴らが寝静まるまで待つのだった。


「そろそろか?」


 そう言いながらこっそり辺りを見回すが見張りは当然居た。

 ただ見張りといえど森の中の暗闇を自由に見れる訳では無いので大丈夫だとイノリは判断しエルザのいる場所へ向かう。

 そしてイノリは音がするボールを創造しエルザのいる場所の護衛をしている者たちに聞こえるような場所にボールを投げる。

 護衛は二人いたので一つだともう一人が残ってしまうのでボールは二つ創造していた。

 消費MPは合計40。

 そしていなくなった隙を狙いエルザの元へ行くとエルザは眠っていた。

 また落書き......はせずにエルザを起こす。


「えっ? イノリさーー」


 大声を出されると流石にバレるので咄嗟に口を塞ぐ。

 イノリはどう話せばいいか分からなかったがやがて口を開く。


「まぁ、俺としてはエルザが居ないとMPを回復出来ないから困るんだよ......」

「それは......私に行って欲しくないという意味でしょうか?」

「......まぁ、そうなる。エルザが行きたいなら話は別だがな......」

「いいんですか? 私は......自分の事を隠していたんですよ」


 エルザは恐る恐るそんなことを言ってくるが......。


「あー、それな、正直に言うと知ってたんだよな」

「え?」

「俺、鑑定眼のスキル持ってるからさ」

「ええぇぇぇ!」


 そんなエルザの声を聞きつけて何人かがやってきたが上手くイノリは気配を消し隠れることでやり過ごす。

 エルザも少し寝ぼけていただけですといい誤魔化す。


「行ったか......いきなり大声出すなよ」

「む、無茶を言わないでください。ま、まさか私の正体を知っていたなんて......」


 エルザにとっては驚きだろう。

 自分を貴族と気がついた上でダンジョンに置いてくれていたのだから。

 エルザはなんで自分をダンジョンに置いてくれたのかを聞くがかえってくる返事は一つだ。


「脅されたから」

「わ、私は別に脅してなどいません」

「......まぁ、この際どうでもいいとして、どうしたいんだ?」


 イノリにとってはそれが一番重要である。


「どう、とは?」

「単純にエルザがどうしたいかだ」

「......私は、イノリさんとダンジョンにいたいです」

「じゃあ来るか?」

「け、けど、もうダンジョンの場所は見つかってしまっています。私がイノリさんと一緒に行ったら確実にまたガイア達は来ます」

「まぁ、大丈夫だろ。エルザは父親と話しておかなくていいのか?」

「......あの人は私の話を聞いてくれませんから」

「そうか......じゃあ逃げるか?」

「い、いいんですか? 本当に......私がイノリさんの正体をバラしてしまう事を恐れているのなら私は何があってもイノリさんの事は話しません。だから無理をしているのなら......」


 震える声でそう言ってくるエルザ。


「別に無理はしてない。最初にも言ったがエルザがいないとMPを回復できないだろ」

「イノリさんは馬鹿ですね」

「は?」

「だってそうでしょう? どう考えても私を連れていく方がデメリットが大きいはずですよ」

「......一度贅沢をするともう戻れないって言うだろ」


 そしてイノリはエルザに最終確認をする。


「逃げるって事でいいんだな?」

「はい」


 イノリは話し合った方がいいのかも? と一瞬思うもエルザがエルザの父親は私の話を聞かないと言うので仕方ないかと思いエルザを脇に抱え走る。

 当然見張りやエルザの護衛をしていた者に見つかったがイノリの走りには追いつけない。

 辺りが暗いことも関係しているだろう。

 エルザはいきなりのことで言葉を失っていた。

 イノリは一応ということで見張りに見えるようにダンジョンとは違う方向へ走る。

 そしてだいぶ遠回りしながらイノリ達はダンジョンに帰ってきたのだった。

 そしてエルザにも少しは余裕が出来たのかイノリに対して気になっていたことを聞く。


「そう言えばガイアに向かって私の顔をどうにかさせて欲しいと言っていましたよね? あれ、どういう意味ですか?」


 そう聞いてくるのだった。

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