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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

超ハイスペックな妹に泣かされる姉の話

作者: 大貞ハル
掲載日:2021/04/05

「なぜって、私は妹のことが嫌いだからよ」


学園の卒業記念パーティーで婚約者である王太子アリスティド・シュナルに身に覚えのない妹への嫌がらせを断罪されて思わず言ってしまった。いつもそうだ。私はどうしてこうなのだろうか。


王太子とその取り巻き、宰相の息子ジャン・ラシーヌと騎士団長の息子クレール・ヴェルレーが勝ち誇った顔でこちらを見ている。その後ろの妹は苦虫を噛みつぶしたような顔でこちらを睨んでいる。


「嫌いと言うか、妬んでいると言った方が良いかしら」


一つ下の妹ヴェロニク・ユペールは母親似で可愛らしい容姿に明るく穏やかな性格で誰からも愛され、頭も良く器用で何をしても一度で姉である私アナベラ・ユペールを超えていく。目つきが悪くいつも不機嫌に見える私の周りにはあまり人が寄り付かず、皆妹の周りに集まる。それは友人や使用人だけでなく両親すらそうだった。


と、ついつい、ネチネチと愚痴っていると、ふと先日第二王子に言われた言葉が脳裏を過ぎった。


『そんな誰からも愛される人気者が最愛の姉から嫌われると言うのは、どう言う気持ちなんだろうねぇ』


血の気が引いていくのが自分で分かる。だが今更吐いた唾は戻せない。

気力を振り絞って崩れ落ちそうな膝に力を込める。

会場全体がざわついている。アレでも貴族か、王太子の婚約者が、などと言っているのが聞こえてくる。


「私はずっと貴方の事を憎んで生きてきたのよ」


嘘だ。

妹は()()()()好かれる淑女なのだ。


ヴェロニクがゆっくりと息を吐く。ため息をつきそうになって誤魔化しているのだろう。


「知っています」


たった一言が死刑宣告のように突き刺さる。


遠い。


手を伸ばせば届く距離にいると言うのに…。


上手く立ち回れれば、私にもあの笑顔が向けられたのだろうか。


気がついた時には両親も使用人も教師も皆妹の周りに居た。

一つしか違わないのだから同年代の子供も皆妹の方に行く。

仕方ない。間違いなく妹は優秀で優しく愛らしいのだ。


「貴方はいつもそう」


いつも笑顔を振りまいて可愛らしい声で話す妹の顔が怒りに歪み、聞いたこともない低い声が漏れた。

息が詰まる。妹をここまで怒らせているのが自分だと言う事実が辛かった。


「いつもそうやって、1人で憎まれ役を買って出て私を守ろうとする」

「な、何を言っているのよ、私は貴方が嫌いだから…」

「お姉さまから見たら私なんて頼りなくて信頼できないかも知れないけれども、私ももうそんなに病気もしなくなったし、お茶会くらい1人で出れるようになったし、友達だって出来たわ」


そう言いながらゆっくりと歩み寄ってくるから後ずさってしまう。


「だから、もう1人で泣かないで、お姉さま…」

「何を、言っているの…」


妹の差し出したハンカチが顔に触れて初めて泣いていたことに気がついた。


「ごめんなさい、私、私…」

妹に抱き寄せられて泣き崩れた。


「大丈夫です。ちゃんと分かってますから。お姉さまがいつも私のことをフォローしてくれていた事、お姉さまが頑張ってくれていた事で色々なノウハウが蓄積されて私の教育が上手く行った事、それに本当は寂しがりやで泣き虫な事…」


左手で背中をさすりながら右手で髪を撫でる。


「おい、どう言う事なんだ」


王太子が詰め寄ろうとするが片手で制止され尻込みする。


「何度も言ったではありませんか。姉をいじめる貴方達を私は決して許しません」

「なんだその口の聞き方は…」

「父を通して王妃さまに約束してもらっています。もしもこのまま放置して姉に危害が加わるようなことが有れば、婚約は破棄し王太子は廃適して貰うと。つまり貴方は今後平民になります。公爵家の私に話しかける資格はありません」

「な、なんだと…」


そんな馬鹿なことはあり得ないと騒ぐ王太子を冷めた目で見つめながら近寄ってくる男が1人。

第二王子ヴァレリアン・シュナルだ。


「なんだか面倒なことになったようだね」


爽やかな笑顔で話しかけてくるが妹の表情は険しい。


「貴方がした事を私が知らないとでも思っているのでしょうか?」

「な、なんの事かな?」

「そこの男と違って私はキッチリ監視をして状況を把握しています。残念ながら物的証拠は()()()()()()有りませんが、貴方をお姉さまの側には近寄らせません」

「…」


あまりの迫力に言葉を失うヴァレリアン。

普段のひたすら可愛らしいヴェロニクからは想像もできないほど、冷たい空気が伝わってくる。


妹の胸に抱かれながら見上げると優しい笑顔を向けてくれた。

「大丈夫です。お姉さまは私が守りますわ」


本来ならアナベラの肩より少し高いくらいの小さな妹が騎士の如く頼もしい。




その後、姉妹は揃って領地へと帰った。


本来ならもう一年残しているはずの妹は予め一緒に卒業出来る様に手を打っていた。もともと途中で通えなくなることは珍しくないし、女子の場合は結婚相手を見つけるために学園に通っている、などと言うケースも少なくないため、箔を付けるために一応卒業資格だけ確保する、と言うこともしやすいシステムになっているのだ。


すっかり甘えん坊になった姉は妹に可愛がられて過ごした。


王太子はヴェロニクの宣言通り廃適され、王太子を止められなかった宰相の息子も同じく廃適され追放された。騎士団長の息子は国境近くに配属され鍛え直されることになったと言う。


第一王子を追い落としアナベラを手に入れようと暗躍していた第二王子も継承権を剥奪されたらしい。



王都は大混乱らしいが領地に引き篭もった姉妹には特に影響はなかったと言う。

問題があるとすればお互いのガードが硬すぎて婚期を逃しそうなことぐらいだろうか。



なんかこんなのばかり書いている今日この頃ですが、この話はかなり前に他所で書いていたネタを現代日本からファンタジー系にシフトして書き直した感じです。元ネタはどこかに公開したかすら覚えてねーですけど


似た様な話を書きすぎて、どれが発表済みか分からなくなってきたでござるよ。にんにん


これ、姉妹百合とかになるんですかね。分かんねーです(

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