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穴の目
部屋に空いたひとつの穴から
みんながこちらを覗いている
色々な視線があった
単純明快なものから
言語化できない複雑極まったものまで
琴線を撫でる感覚
飛沫を上げる悲鳴
窓をすり抜ける風
消えた電球の残骸
ドアが壊れ始める――
その穴を塞ぐことにした
けれどそんな大きさのものは無かった
試しに布切れを詰めてみたが
向こう側に引っ張られてしまった
壁紙を張って塞いでみたが
向こう側から破かれてしまった
セメントで固めてみたが
次の日には砕かれて元に戻っていた
このままじゃ埒が明かない
だから、右手にペンを握りしめて
思いっきり穴の向こうの目へと振り下ろした――。




