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人影を追う
道路を挟んだ反対側に人影がある。
午前零時を過ぎているのに。
訝しく思いその人影を注視する。
その人影はわたしの十歩ほど先を歩いて行った。
途切れ途切れに車両がわたしとその人影の間を駆ける。
何度車両が通ってもその人影は変わらずに十歩先を歩いている。
しばらくしてその人影が止まった。
どうやら自動販売機で飲み物を買うようだ。
ペットボトルが落ちた鈍い音がこちらまで聞こえてくる。
飲み物を買い終えた人影は再び歩き始めた。
やがてわたしの家の前に来た。
それ以上あの人影を追う理由も無いのでわたしは帰宅した。
それから気づいた。
なぜわたしはあの人影を追い抜かさなかったのだろうか。
理由なんて分からなかった。




