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庭と鉄柵と空と翼と
薔薇の花が咲き乱れるような
そんな豪奢なものじゃない
少なすぎない頻度で手入れをしているから
雑草はちらほらと生えている程度の庭
塗装の施された鉄柵
萎れた桜を手向けよう
錆びた血液の匂いが染みついた
この初夏の風を背負って
――本でも読もうか
どちらにせよやることなんてない
近くにあったはずの未来を
自ら遠ざけてまで手に入れたこの庭を
存分に踏みしめながら
光が咲き誇る
庭の隅におれは立っている
読みかけの本を開きもせずに
その背中の翼を動かすことさえできないまま
空を飛びたいとは思わない
眺めることが好きなだけだった




