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黒の双眸
黒い。
深い。
奥行きを忘れてしまうほどに砥がれた刃のように。
かつては僕の持ち物で、いまは何処かの誰かが持っている。
潔癖なのか、余分なものを嫌って様々な人のところへ移動する。
脚があるわけじゃない。
だから勿論、腕もない。
純粋な抽出物が素材になっている。
色々と絶え間なく渦巻く、感情や衝動の中から選ばれる。
諦め、哀しみ、痛み、苦しみ、怒り、憎しみ、etc.
それらは途中で消滅し、残るはひとつの結末のみ。
〈未来を望む強い意志〉
それだけを圧縮して生成したもの。
それこそが、あの黒の双眸だ。




