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もう一度あの島へ
遥かに広い一面の海
その西の最果てに
ひとつの島があるらしい
そこには人がいないし
もちろん文明もない
いつかの時代の姿を
そっくりそのまま残している
誰もいないその島の
陽光が差し込む地底湖で
ひとりの少女がいるらしい
ずっとずっと昔に
初めてその島を訪れた少年を
いつまでも待っているという
古今東西どこにでもありがちな
そんなお話だけれど
それが真実だと知っている少年が
ひとりだけここにいる
もう二度とそこに行けないと知っていて
それでも約束をした
だってあまりにもその瞳が
寂しげに揺れていたから
申し訳ないなと今でも思っている
その償いはもうできないだろうけど
もう一度あの島へ
彼女のいたあの島へ
行ってみよう――。




