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磨りガラス
透明でありながら
無色には程遠い。
――扉。
押し開けるとそこには
風が吹いている。
黒い風だ。
夜闇を纏って
ひゅう、ひゅうと吹く。
扉を閉じて
向こう側を見つめる。
蛍光灯の暖色。
羽音。
風邪の足跡。
笑い声。
生活感の乱舞。
ふと、気付いた。
磨りガラス越しに見える
黒い人影。
顔がなかった。
黒い帽子を被っているようだ。
手を伸ばしているそのひとは
困っているようだった。
中に入りたいのかもしれない。
こちらに来たいのかもしれない。
誰か分からない人物を
磨りガラスの内側に招いてはいけない。
本能が告げる。
――しっかりと鍵を閉めて
磨りガラスを砕いた。




